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二章11:ギルド緊急招集

平成28年 9月28日 前の世界の記憶の箇所に修正を加えました。

 

 コーンスターチの街中は騒然としていた。

沢山の人が荷物を抱えて逃げ惑っていた。

 殆どの人はそうだけど、俺の先を走っているエールやスー、

そして明らかに武装をしている人たちは、人波に逆らって街の中心へ走っている。


 俺もなんとか人波をかき分けて、エールの背中を追い、街の中心にある

神殿のような建物の前へ来ていた。


 神殿は大獣神と会った時にみたものとそっくりだった。

そこにエールや、スー、そしてギルド集会場でみた同じ戦闘職の人たちが、

たくさん集まっている。

 集まったみんなは何が起こったのか、

どうして緊急招集がかかったのかなど、口々に噂し合っている。


「みなさーん! 静粛にしてくださーいッ!」


 聞き覚えのある声が聞こえて、

俺を含めた全員が話すのを止めて神殿の方をみる。

 神殿の真正面にある階段を上り終えたところには、

軽そうな部分鎧と二本の双剣を腰に差した女の人がいた。

 武装をしているけど、明らかに集会場で俺を

”人間として励ました”受付の女の人だった。


「これよりモルトより招集内容が発表されます! どうかそのままご静粛に!」


 その隣にいた同じく背中に大きなハンマーを背負って武装をした、

集会場の”案内係”のお姉さんがそういう。


 すると、神殿の奥より、黄色いラインがたくさん走った神々しい雰囲気の装いの、

しかもこれまた見たことのあるお爺さんが姿を現した。


――あれって、面接官のお爺さん!?


『ちなみにモルトとは、ビァルでそれぞれの国を収める執政官の役職名となる。少年風に云えば、総理大臣といったところだな』

「マジっすか!? 俺、総理大臣に面接を受けたんっすか!?」

『まぁ、そういうことになる。各ギルドは、その国の重鎮たちが直接運営しているからな。さぁ、話が始まるぞ。静粛にするのだ』


 ブレスさんに言われて口を閉じた俺は面接官のお爺さんを改め、

コーンスターチのモルトへ注目する。

 モルトのお爺さんは懐から巻物を取り出し、広げた。


「先頃、トーノ砦より連絡があり、コーンスターチへエヌ帝国の剣魔獣軍団が接近しているとの報が入った! これよりコーンスターチは国土防衛のために臨戦態勢へ移行。全戦闘職は速やかに壁外にて帝国勢力の殲滅に従事すること! これはモルト発令の国令である! 尚、報酬は基本金として25万ビアを支給し、以後は魔獣の討伐数を持って追加支給とする!」


 モルトのお爺さんがそう言うと、

神殿の前にいる戦闘職の皆さんは一気に沸き立った。


『25万ビアとはこの世界での平均月収の1.5倍だ。これを基礎としてインセンティブともなれば、稼ごうと思えばかなりの額を稼ぐことができるだろうな。だが、誤解してはならんぞ。彼は金が目的で戦うのではない。国土を帝国から守るための使命感に燃えているのだからな』

「大丈夫ですよ。なんとなくその、みなさんの熱意伝わってますから」


 周りを見渡してみれば戦闘職の誰もが目を輝かせて、

心を燃え上がらせているように感じる。


「雷鳴の獣神ブライトケイロンの加護をッ!」


 モルトがそう叫ぶと、


「「「「ブライトケイロンの加護をッ!!!」」」」


 戦闘職のみんなは揃って、そう叫ぶ。

そう言われてエールは少し恥ずかしそうに俯いていたけど、


「ブ、ブライトケイロンの加護をぉーッ!」


 とりあえず空気を読んで同じように叫んでいた。


俺の周りにいるみんなは揃ってブライトケイロンを称えて、

士気を高まらせている。


 それは少し前のところにいるエールも、スーもだった。


――みんな一生懸命戦おうとしている。だけど俺は……


 今ひとつ、心に火が灯る感覚がなかった。

一人だけ置いてけぼりを食らっているような、

仲間はずれにされているような感覚。

多分、俺はこの世界に来てまだ殆ど時間が経ってないから、

愛着ってのが無いんだと思った。


 寂しいけど、でも良くあったようなことだと感じた。


 周りのみんなは燃え上がっていたけど、俺は一人で冷めてる感覚。

 波に自分が乗り遅れてるような気がしてならない。

 乗りたいのに乗れない。どうした良いかわからない。

 そうして悩んで、動かなくて、結局取り残される。

 だから寂しさをを感じて、どうしようもなくて、最終的には自分の殻に引きこもる。

 そうすると余計に人との距離が遠くなって、更に孤独になる。

 本当な仲間に加わりたいくせに、でも自分に自信が無くて、その輪に入り込めない。


「マス、ター?」


 気が付くと、スーが心配そうに見上げていた。

黒い円な瞳と、本当に俺のことを心配してくれているような顔の表情。


――そうだよ、今の俺はスーがいるじゃないか。


 エクステイマーっていう不思議な力で、絶対に裏切らず、絶対に離れない、

スーっていう、存在が今の俺の隣にはある。


――ビアルに愛着はない。だったらスーを守るために戦えばいいじゃないか


 スーを守るためだけに戦えばいいじゃないか。

それ以外何も要らないじゃないか。

それで良いじゃないか。


『……』

「ブレスさん?」

『いや、何でもない』

「マス、ター?」


 さっきよりももっとスーは心配そうな顔をしたから、頭を撫でた。


「ごめん、何でもないよ」

「本当、?」

「うん。心配ありがとね」


 俺が笑うとスーは笑顔を返してきてくれた。


――この笑顔のためにまずは戦おう。


そう思った。


「おいコラ、チート! ぼけっとしてないでさっさと行くぞ! ★2のおめぇだってちゃんと戦わなきゃならねぇんだからな!」


 向こうからエールが呼んでいる。


「行こう、スー!」

「はい、!」


 俺とスーはエールと共に神殿を足早に後にするのだった。


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