表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/109

二章6:初めての登録と残念とエターナルガトー 【後編】


 突然利き手の右腕の甲が光輝いた。

浮かび上がるように一角獣の角の様な紋章が手の甲に刻まれる。

そしてその光の中に、文字が見えた。




 【登録者】:チート

 【クラス評価】:★★☆☆☆(詳細はここをタッチ)

 【職業】:動物飼育係ビーストキーパー

 【スキル】:エターナルガトー




「これ、マジ?」


 脇から俺の評価を見ていたエールが驚いたように目を見開いていた。


「マス、ター……」


 スーもまた少し肩を落としている。


「えっ?なんか変?」


 そう聞くとエールが同じように紋章を翳した。




 【登録者】:エール

 【クラス評価】:★★★★★(詳細はここをタッチ)

 【職業】:ソードマスター

 【スキル】:ブライトサンダークラッシュ/ファイナルサンダースラッシュ/ 電磁装着・解除



 スーもまた同じようにして、



 【登録者】:スー

 【クラス評価】:★★★★☆(詳細はここをタッチ)

 【職業】:摩法士

 【スキル】:ナイトオブファイヤー




『ちなみにクラス評価とは心・技・体の三要素を総合的に評価して、各個人に与えられる客観的な評価の指標なのだ』


 なんかこれだけでどうしてエールとスーががっかりしているか分かる。

★の数がきっと能力の評価何だろう。


「もしかして俺のステータスって凄く残念?」


 エールは大きく頷いて、スーはオロオロしていた。


 俺がっくし。


――登録でも残念な人って印象なのに、これじゃ名実ともに残念な人じゃないか!


「だけど、マス、ターのスキル、わたし、知らな、い!」


 スーは必死な様子でそう云った。


「そういやそうだな。エターナルガトー? なんだそりゃ?」


 どうもエールも知らないスキルみたいだ。

その言葉にちょっと元気が出た。


『ガトー! 良い名前ではないか! まるでソロ○ンの悪夢みたいではないか!』

「ブレスさん、それって……」

『勿論、スキル発動前にはこう言ってくれるだろうな! ソロ○ンよ! 私は帰ってきた! っと!』

「あの、ブレスさん、それわかる人にしか分かんないっすよ……」

「マス、ター! みせて!エターナ、ル、ガトー!」


 スーが真剣な眼差しを送ってくれていた。

 すっごく期待してくれてるみたい。

一生懸命俺を励まそうとしてくれているスーの気持ちは無碍むげにしたくない。


「ブレスさん、スキルの発動ってどうすれば?」

『紋章が浮かんだ腕をかざして、意識を集中させるのだ。イメージで言えば指先に全ての血流を送る雰囲気だな』

「ふむふむ」

『そして力いっぱい元気よくスキル名を叫ぶのだぞ』

「わかりました!」


 評価は残念だったけど、

エターナルガトーは獣神の化身のエールでさえ知らないもの。


―――もしかすると俺ってステータスは残念だけど、スキルが貴重な特化系だったり!?


 期待を込めて、俺は紋章が浮かんだ右腕を翳した。


 意識を集中。

俺の体に流れている血液を指先に集めるイメージで……

すると指先に仄かな暖かさを感じた。

 自然と鼓動が緩やかに高まって、不思議な力の収束を指先に感じる。

そしてその時が来た!


「エターナルガトーッ!」


 あんまりにも元気が良すぎて集会場にいた結構沢山の人が俺へ振り返った。

ちょっと恥ずかしかったけど、でも貴重なスキルの発現の瞬間!

もしかすると俺は明日から、ギルドで引っ張りだこな人気者に!?


 指先から発生した眩しい光がスーへ向かってゆく。

スーは自然と手を差し出して、俺の指先から放たれた光を受け取る。


「えっ……?」


 輝きが履けて、スーの掌に乗っかっているものを見て、思わず俺は

阿呆みたいな声を上げてしまった。


 何故か、どうしてかスーの手の上には綺麗な色をした幾つかの小さな玉が

乗っかっていた。


「にゅー?」


 スーはその中から紫の玉を手に取って、

犬みたいに眺めたり、鼻に近づけて匂いを嗅いだりしている。

そしてスーは舌をちょこっと出して、紫の玉を舐めた。


「お、おい、スー! そんな得体のしれないものいきなり舐めちゃ……」


 エールがそう云った瞬間、


「にゅふー! あまー、いッ!」


 スーは嬉しそうに笑って、紫の玉を口の中へ放り込んだ。


「にゅふ、にゅふ、んまぁ~、い……エーちゃん、も!」

「いや、あたしは良いよ」

「エーちゃん、も!」


 妙に食い下がるスーに気圧されて、

エールも黄色い玉を1つ摘まんで口の中に放り込む。

すると、


「おっ……これ、結構いけるな。このすっぱさと匂いってレボンか?」

「わたし、の、ブダウ味!」

「じゃあこの赤いのはイチゴンかな?」

「わたしは、リゴンだと思、う!」

「なるほど! それもあるな! スー、凄いな!流石だな!」


 何故か女子二人は俺が出した玉のことで盛り上がっていた。


『ガトー……ガトー…………そういうことか!』


 今度はブレスさんが大きな声を上げた。


『少年! ガトーとは、君の世界で言うところのフランス語で「お菓子」を意味する言葉だ! エターナルガトーとはつまり無限菓子精製のスキルだ!』


――いや、説明されなくても分かってます。

スーの手の上に飴玉みたいのが乗っかってた瞬間からなんとなくわかってました。


「微妙な★2つ評価に、菓子精製スキル、住所不定の一文無し……なんで俺、こんなに微妙なんだ……」


 思わずがっくし、肩を落としてしまった。

 だけど、おかしい。

お菓子じゃなくて、おかしいことに気が付く。


「あのブレスさん、俺のスキルって確かエスクテイマーじゃないんですか?」


『その件だがな、適性検査の際にそこは秘匿させてもらった。何せ、あれは大獣神から与えられた強力な力だからな。あれを世に晒せば、少年の人気は殺到してしまうだろう。少年の使命はあくまでエクステイマーの治癒能力を使って、獣神の力の源である獣神晶を治して、エヌ帝国の野望を阻止することだ。しかし人気者になってしまえば、獣神を探す旅どころではなくなってしまうと思い、そうさせてもらったのだ』


「まぁ、それはなんとなく分かりますけど、じゃあなんでスキルが菓子精製なんですか?」

『それは知らん! 君の評価と平均値から割り出されて付与されたのがこのスキルなのだからな。いわば、エターナルガトーは少年自身と言っても過言ではないぞ。HAHAHAHA!』

「はぁ~……もう嫌」


――チートって名前に完全に敗北してるよな、俺って。


「しっかし、これではっきりしたけど、やっぱ納得いかねぇよな。なんでこんな微妙な奴にスーは従ってるんだ?」


 エールはスーにそう聞いているけど、

言葉の内容は俺のガラスのハートにダイレクトアタック。


 すると、スーは美味しい飴を舐めている幸せそうな顔から、真剣モードへ。

スーはパタパタとがっくし肩を落としていると俺に近づいてくると、


「エーちゃん知ら、ない! マス、ターはほんと、は、凄い方、ってこと!」


 そう強く言ってスーは、何故か俺の胴へ思いっきり抱きついてきた。


「ねっ? マス、ターは、ほんとは、凄い!」

「いや、そんなことなないよ、スー。俺はダメだよ、微妙だよ……」

「大丈、夫! それでも、わたしは、マス、ターのもの!」


 スーは妙に真剣な顔でそう云っている。

 なんかスーのそんな真剣な目を見ていると、こんな俺でもこうやって慕ってくれる

スーの存在が物凄くありがたく感じるのだった。


「ありがとう、スー。マジ、嬉しい!」

「にゅふー! にゅふふ~! マス、ター、凄い!」


 思わずスーの頭を撫でると、彼女は嬉しそうに笑って、頬を擦りつけて来るのだった。


しかし突然、真正面から物凄い殺気を感じた。


「てめぇ……微妙な癖に、スーといちゃつきやがって……」


エールは鬼のような形相で俺のことを睨んでいた。


「いや、これは……」

「スー! そんな微妙な奴からさっさと離れろ! 微妙が移るぜ!」

「やっ!」


 スーの強い拒否をした。

なんかエールからブチンと何かが切れるような音がしたような気がした。

エールは背中のバスターソードの柄に手を懸けて、


「ひっ!」


 思わず突き付けられた巨大な刀身の切っ先にビビった。


「チート! てめぇに明日三番勝負を挑ませてもらう! 開始は明日の明朝! 街の東のはずれにある草原!そ こでスーを懸けて勝負してもらうからな!」

「しょ、勝負!?」

「絶対に微妙なお前に勝ってやるからな! スーを取り戻してみるからな!」

「いや、だから!」

「バーカバーカ、チートのバーカ! 逃げんじゃねぇぞ! この怪人微妙男!」


 エールはそう一方的に言い放って、かなり興奮した様子で集会場を出てゆくのだった。


――なんかすごく面倒な展開になってきた。あんまり長くコーンスターチにいるべきじゃない。


「ブレスさん、ちょっと面倒なことになったんで、さっさとエールの獣神晶を治して次の場所へ行きましょうよ」

『ふむ……確かにそうした方が良いのだがな、ちょっと今は無理そうだ』

「何でですか?」

『獣神の力の源は獣神晶とそして咆哮こえなのだよ。獣神晶を治して、本来の力を取り戻させるにはその……舌に触れる必要があるのだ』

「えっ!?」


 舌に触れるってまさか……ちょっと心当たり――主に大獣神――があって、

それと怒ったエールが結びついて、背筋がゾクッと震える。


『娘たちの清純を君のような微妙な少年に奪わせるのは心外だが、大獣神が選んだのだから仕方がない。少年、君は君の舌をエールと絡ませて彼女の獣神晶を治すのだ!といっても、今のエールの様子ではそんなことをしたら……』

「バスターソードで真っ二つか、舌を噛み切られますね……」

『だがやるしかない! 少年よ! 明日、何が何でもエールに勝って、少年のすばらしさを見せつけてやるのだ! GO Fight!』


――言うは易し、やるは難し……


「マジかよ……」


 ただのキスなら、どさくさに紛れてできそうだけど、

舌をさりげなく絡めるだなんてそんな高等技術俺にはありません。


本当に俺なんかにエヌ帝国からビアルを守り抜くことなんてできるんだろうか?


甚だ疑問に思う俺だった。


「マス、ター?」


スーの時みたいに触れるだけって訳にはいかないのかな……?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ