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ゆっくりで申し訳ないですが、慣れるまではこのペースで上げて行く予定です。
彩香に部屋を追い出された。理由は簡単、彩香が体を拭くからだ。ま、僕が体を拭いている間には彩香が外に居たので何もおかしいことは無い。皮袋に入っていた寝巻きのような薄着に着替えて、外に居た彩香と交代したのだ。そのときに
「覗かないでよ?」
「覗かないよ?」
「あ、慶吾の分も洗濯しておくからね?」
と、非常に簡潔なやりとりをしたところで扉が閉ざされた。簡単に言うと、『覗いたら洗濯はしないからね?』というところだろう。覗く趣味も無いし、何より洗濯をしてくれるというのは有り難い事なので、覗かないことを決意する。そうして部屋の前に居ると、グイール君が話しかけてきた。
「慶吾さん、ちょうど良かった。食事の用意が少し遅れそうなので連絡に来たのですが…あの、なぜ扉の前に立っているのですか?」
不思議そうに見ているグイール君。そういうことには疎いのかもしれない。
「ああ、中で彩香がね。」
「あっ! 失礼。そうでしたか。」
少し恥ずかしそうな顔をしながら頬を掻くグイール君を見て、そういう年頃なのかなーと思う。疎いわけではなく、興味があるからこそ僕たちの事を恋人と観ていたのだろう。恋人であれば多少見られてもいいという考えが彼には有り、そして男女が1部屋にとなれば確定だろう、この様に考えていたのかもしれない。そういえば村長のグルジさんには、そういう関係では無いことは感じ取られていたのだろう。借りるのは1部屋だと言った時に本当に良いのか?と聞かれていたし。ま、気にしてもいないし、今はグイール君と話をして少しでも時間を潰したい。
「そういえば食事が遅れるとの事でしたが、代金は部屋代と別ですか?」
「いえ、銅貨2枚の中に含まれていますよ。朝食の分も含まれていますので、ご心配なく。」
「そうですか。こちらに来てから初めて村に立ち寄ったのですが、故郷と勝手が違うのでいろいろと分からないことが多くて…」
「そうでしたか。お二人は何所から来られたのですか?黒の髪はこの王国では珍しいのですが…南の方の国ですか?」
「場所まではちょっと…わからないんです。何しろ連れてこられただけなので。そ
して途中で別れてしまったところから適当に歩いて来ただけなので…。この村に来
れたのは幸運でした。」
そのような話をしつつ、できるだけ情報を集めていた。こちらの事もいろいろ伝えたが嘘は言ってない。本当の事を話したとも言えないが…言っても駄目だろうという思いからできるだけ僕たちが怪しまれない程度の事しか言わなかった。
結構な時間話していたのか、後ろの扉が開き彩香が出てきた。
「慶吾ー、洗濯も終わったからもう入ってもいいよー…なにか話してたの?」
「え?ああ、食事の用意が少し遅れるって話だったんだけど、いろいろ聞きたいこととかあったからついでに聞いてたんだよ。」
「そうなの?あ、グイール君。たらいと洗濯板ありがとう。これ何所においておけばよかったかしら?」
「ああ、えっと、こちらで預かります。また必要な時に言ってもらえれば持っていきますんで。では、食事の用意ができましたら呼びにきます。」
「はい、よろしくお願いしますね。」
たらいと洗濯板を持って歩いていくグイール君を見つつ部屋に入って、先程グイール君から聞いた事を彩香にも伝える事にした。




