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「よし!せいこ――ぐぼあぁぁ!!!?!?」
ビザールバットを1体地面に落とすことに成功したせいで、前方から来ていた他のビザールバットの体当たりを、まともに受けてしまった。2,30センチくらいありそうな物体が腹や太ももに当たるのは凄く痛い。
直ぐに木霊の生命力活性の魔力を使用して、痛みを和らげ体勢を整える。盾を構え、もう一度シルフの魔力を手に集める事に神経を集中させる。
地面に落ちたビザールバットが羽をバタつかせて暴れているが、一向に空に上がっていく気配は無い。
何の事は無い。シルフの風除けの魔力を、羽を中心に纏わりつかせただけだ。風や空気を利用して飛んでいるのだから、それを無意味にするシルフの魔力を纏わりつかせたら飛べなくなるのは当然の事だ。
…問題はすばやく纏わりつかせる事が出来るのかと言うことと、効果時間がどれほどあるのかわからないという事なのだ。30分くらいは効果時間が持続してもらいたいところだが、はてさて…。
そんな訳で体当たりが来る度にシルフの魔力を放ち、体当たりを盾で防御しつつ何とかこちら側の戦線を維持している。シルフの魔力は大体3回に1回ほど当たればいいところだった。始めのように防御のことを忘れて当てにいけば、ほぼ当てられるとは思うが、もうあんな痛い思いはこりごりである。それに、アルマの方のケアもしなければならないから、毎回毎回シルフの魔力を放つわけにはいかないのである。
20~30秒に1回の割合で突撃してくるビザールバットの群れを、アルマと一緒に受け流し、彩香とアレックが助けに来てくれるまで耐えるという選択をしてから、もう何度目になるのか数えてもいないビザールバットの突撃をやり過ごす。もう既に10分ぐらい戦っているような気がするが、一体どれくらいの時間が経ったのだろうか? 早く助けに来て欲しいが、向こうのビザールバットの規模もわからないし、文句を言える立場には無いため、その考えを飲み込む。
近くの地面には、ビザールバットが8体ほど転がっている。なんのかんの言いつつ、頭数を減らせるのは大きな事で、多少は楽になっているとは思うのだが、此方にも疲れの色が見えている事から減ったように感じない。…もしかして増えているなんて事は無いよね?
「木霊の魔力のおかげで何とか体勢を整えることができてるって感じだよな…。無かったら腕がもう使い物にならない様になってそうだよ…。」
そう言葉にしながらアルマに木霊の魔力を放つ。疲れては来ているが、まだまだ時間稼ぎ程度ならば上等だ。きっと助けが来る。そう信じてもう一踏ん張り頑張ろう。
戦い始めてから30分くらい経ったと思う。ビザールバットも既に地面に10数体転がっている。しかし楽になったかと言われれば、なったと言え無い状況である。…やっぱり増えているんじゃなかろうか? 結構な数のビザールバットを落としたと思うが、盾に当たるビザールバットの数は変わっていないように思う。
「アルマ! まだ頑張れるか?」
「大丈夫! まだ、大丈夫!」
と、言ってはいるが、流石に足がふらついているのをみると厳しいかなーと思うわけで…僕も言えた状況では無いわけだけど。
「二人とも、遅くなったわ。休んでていいとは言わないから、盾を構えて! 早く終わらせて休憩しましょう。」
背中から声がして、確認すると彩香とアレックが来ていた。休ませてくれはしないか…と少しため息をつきたい所を我慢し、前に集中する。後ろから自分たちの上を矢が通って行くのを確認した。
(…撃たれないよな?)
そう考えて少し姿勢を下げて盾を構える。矢が闇に消えていくのを見ていると、アレックが撃ったものだろうなと思うと同時に、何か地面に落ちる音がした。
(本当に見えてるんだな…真っ暗なのに…)
次々に闇に吸い込まれる矢を見ながら、迫ってくるビザールバットの群れを迎え撃つ為に気合を入れた。




