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向かうと言ってもアルマと一緒に10歩ほどそっちに進んだだけなんだけど、本当に真っ暗で何も見えない。何メートル先が見えているのかさえもよくわかっていない。ただ辛うじて、自分の足元の地面を認識できる位には目の方が暗闇に慣れてくれている。
「アルマ、手前までビザールバットが飛んで来たら合図を頼むぞ。」
「わかった。」
基本的に獲物を発見するまで真直ぐ飛ぶビザールバットが、後どのくらいで此処に着くのかと言うのは感覚ではわかっても、伝えるとなると難しくなってくる。なので、手前に着てから合図を貰う方が今から来るとわかっていいんじゃないかと言う判断だったが、合図があったって見えないんだからどうしようも無いんだけどさ…。
まだ時間は少しありそうだ。その内に自分にビザールバットを倒せる方法は無いかと考える。自分が今までどんな事をして此処まで来ていたかを考える。考えた結果、精霊魔術を使う以外でやったことと言えば、物を運ぶ事ばかりであった。
「これが初めての前衛って感じだし、本当何にも出来無いのか…?」
頼みの精霊魔術も、攻撃魔術は使えない。…いや、使えないわけじゃないが…風圧で吹き飛ばすような攻撃は出来るには出来る。が、魔力を手に集めるのに凄まじく時間が掛かるのだ。今回の場合、使えないのと同じなのだけど…。
あとは、風除けの矢を作った。その延長で、歩くときの空気の抵抗を無くした。シルフについてはこれだけ。木霊にしても、足の疲れ等、体のマッサージをしたようなものしか使っていない。
以上が現在いままで使った事のある精霊魔術だ。…悲しくなりそうなほどの無能っぷりである。今まで使ったものが4種類という少なさであるという事がわかってしまった。その内、移動に関するものがその少ない種類の半分を占め、後は使えない攻撃魔術と、もう既に役割を終えた風除けの矢の作成である。やっぱり詰んでないか?
「来る!」
いろいろと考えていたところにアルマからビザールバットが来た事を知らされた。さあ来いよ蝙蝠共! 死なない程度に頑張ってやるさ!
姿勢を低くし、盾を構えてビザールバットが来るのを待った。できれば盾で叩きつけてやろうと野心を持ちながら。
バサバサと羽の音が聞こえはじめた。そのすぐ後に、4,5メートル先でビザールバットの姿を見ることが出来た。盾を構えて防御に徹する。3回ほど盾に衝撃がはしる。それと同時に10匹以上のビザールバットが横を通り過ぎて行った。
…多すぎないか? ざっと15ほどいた気はする。隣のアルマにも何匹か当たっていたみたいだし、20ほどいたのではないか?
盾に当たった感覚から、それほどの重さを感じなかった。これなら盾で叩きつけて数を減らす事も出来るだろうが、盾を防御から攻撃に使ってガードが甘くなるのを避けたいって言うのが実際のところ。盾以外で攻撃できるものが無い以上――いや、ナイフはあるんだけれども――防御しているしか無いのだろうか。
「(せめて動きを止められたらいいんだけど、そんな――)」
1つ、動きを止めることが出来る方法を思いついた。成功するかはわからないが、やってみたいと思う。成功すれば一気に防御が楽になるし、何よりも戦闘で役に立てそうだと言うところに嬉しさを感じている。でも今はそれよりも、
「アルマ! ビザールバットは!?」
「帰ってきてる!」
彩香やアレックの方に流れなかったのはよかった。でなければ僕らが1方向をまかされた意味が無い。あとは、思いついた方法を使用してビザールバットを無力化できるかが鍵だ。
「少しでも数を減らすことが出来れば…いや、やらなきゃな。」
盾を構えてアルマの向いている方向を確認する。目を凝らし、見逃さないように集中する。そして、2回目の突撃が来た。タイミングを誤らないで出来るかどうかはわからないが、1匹でも成功すれば御の字だ。精霊の、シルフの魔力を取り出してビザールバットに向けてその魔力を放つ。そして――1匹のビザールバットが地面に落ちた。




