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木陰にて、可哀想な扱いを受けていた僕だが、それももうされずに済んでいる。と言うのも、その人型がシルフだと言う事なのだが、そのシルフたちに「あっちの委員長にも見えるようにはできないのか?」と尋ねたところ、
「できるよー、魔力使うから長くは無理だけどー。」
と返ってきたため、早速視える様にしてもらった。視界に入ったシルフをみて驚いた様子をみせたのも束の間、
「なにこれー! かわいい~」
と、シルフに抱きついた委員長なのであった。
昼飯を食べながらシルフたちに話を聞いていた。何でも精霊を視る事ができるということは、精霊使いになる必須条件らしい。精霊使いは契約した精霊を呼び出したり、能力の一部を行使できるようになるとのこと。ただ、契約していないと普通の人となんら変わりも無い。
「じゃあ、強い精霊と契約できればそれだけ大きい力が使えるようになるのかー。」
他人の力を借りて強くなれるのなら楽でいいんじゃないかなーと考えたのだが、世の中そんなに甘くないもので、契約や力を借りる際に魔力を対価として使わなければならないとの事だ。それも強くなればなるほど対価の魔力も多くなる。一番強いと言われている精霊神なんかと契約しようとすると、人間ではどうあがいても無理だそうだ。神様だもの、当然だろう。
「しかしそうか、契約しないと何もできないのか……」
一番の問題はそこだ。いくら視えても契約できなければ何も無いのと一緒だからだ。契約してくれと会いに行かなければ、運よく会うなんてことは殆ど無いだろう。
「どうやって契約するかなー。何所に精霊が居るかもわからないし……」
そう呟いたとたん、隣から大きなため息が聞こえた。そちらを視ると残念なものを見る目をした委員長がこちらを見ていた。
「……ここに精霊が居る事を忘れてない?」
「……あっ」
いたな精霊。しかもすぐ傍に。シルフのことは忘れていなかったが、シルフが精霊である事を忘れていた。
「私たちと契約するのー?」
「楽しい事が無いと嫌だよ?」
乗り気なのはうれしい事だがそんなあっさり決めてもいい事なのだろうか、テストやなんかあるものだとばかり思ってたが、違うのだろうか。
「そんなに簡単に決めてもいいのか? てっきり試練的なものがあるのかと思ってたんだけど……」
そんなことを聞くと、シルフたちが首を傾げて何で?って感じになっている。
「魔力くれるなら誰でもいいよねー。試験なんて面倒だしー。」
「そうそう! 視える人間って少ないし、貴重よね。」
あ、誰でもいいんですかそうですか。それならささっと契約してしまおうか。
「……契約ってどうやればいいの?」
初めてだもの、仕方ないよね? 格好はつかないけどさ!
「手の平こっち向けて、腕を突き出して!」
言われた通りにする。その手の平にシルフたちも手を合わせる。
「それで、お互いの魔力を流し込むのー」
魔力を流し込むと言われても、どうすればいいのか。とりあえず、魔力出ろーと念じてみようか。駄目なら言ってくれるだろう。
10秒ほど魔力を出している(気になっている)と、ふと胸の辺りが暖かくなってきていた。とても不思議な感覚だ、心臓をやさしく包まれているような感じがする。
「(ま、そんなことされたことは無いんだけど、なんとも言えない感覚なんだよなー)」
そんなことを思っていると、「終わったのー」とシルフたちが手を離した。
「これで契約完了ね!」
「これからもよろしくー」
よくわからないけど、ちゃんと終わったらしい。
「ああ、これからよろしくな。」
こうして、僕は精霊使いとしての道を歩み始めるのだった。――その後、なんでやり遂げましたって顔してるのよ? と委員長に出鼻を挫かれて、また町を探すために歩き始めた。




