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風呂から出て一言、やはり風呂は素晴らしい。かけ湯をし、体を洗い、湯船に入る。「あ”ぁ”ぁぁーーー」とついつい口から出てしまった。ゆっくり堪能して部屋に帰ってきたが、彩香はまだ帰ってきていなかった。
しばらくして彩香が戻ってきた。大変御満悦といった顔をしている。
そしてコボルトの名前を決めないとと言う事で考えた。と言う事で雄の方をアレック、雌の方をアルマという名前を付けた。正直なところ適当である。
そんな事はどうでもいいとして、やって来ました”依頼所”通称”冒険者の酒場””冒険者ギルド”ともいう。とりあえず仕事をして金を稼がないとすぐ金が無くなってしまう。特に風呂付の宿の値段が高いせいで凄い勢いで減っていく事が予想されている。少なくとも4人で1日銅貨60枚は稼がないと宿代ですら赤字である。
僕たちは依頼所のドアを開けて進んだ。
椅子と机が多くあり、奥にはカウンター、入り口すぐ右に2階に続く階段がある。1階は酒場になっているのか、じゃあ受付は2回かな? そう思って階段を昇ろうとした時、
「なんだー? 見ない顔だなー? オーガ男とドワーフ女かよ。でこぼこカップルかぁ? ぎゃはははは。」
「手下のコボルトも連れてるとか、何所のオーガだよ。」
「オーガが女連れてるなんてもったいねぇぞ。ほらこっちに寄越せよ。」
「ドワーフ女は出るとこ出てていい感じじゃないかおぃ。もちっと背が大きけりゃ――」
酔っ払い共が好き勝手言っていたが、地雷を踏み抜いてしまった。身長の話は厳禁なのだ。酔っ払い共の机や足元に合計7本の矢が突き刺さる。ギリギリ当たらないところに瞬時に7本、ちょっと撃つのが速過ぎませんかね!? 酔っ払い共も何事かと驚いているが、彩香が放った矢である事が判ったのか目を逸らして何も言わなくなっていた。問題がなくなったので2階に行き、冒険者として働くために仕事の確認をしに向かった。
2階には酒場のものよりも小さめのカウンターと大きな掲示板、休憩用の椅子が何席か置いてあった。1階と比べるとこじんまりとしていて人も疎らだ。とりあえず受け付けの人に仕事を貰うにはどうすればいいのか聞かなければ。
「こんにちは。この施設の利用は初めてですか? 初めてでしたらまずは冒険者として登録をしていただく事になっています。」
受付のお姉さんにそんな事を言われて、「あ、登録必要なんだ…」と思いつつ、話しを進める。
「登録の方をお願いします。」
「あ、場所はここでいいのでしょうか?」
「はい、冒険者登録はこちらでよろしいですよ。冒険者になる方にはこちらの羊皮紙に書かれている項目に答えていただくことになっています。後ろのお付の方も冒険者として登録されるのですか?」
コボルトも冒険者登録できるのか…しておいてメリットとかはあるのかどうか、よくわからんな。結局素直に聞くだけなのだが、
「コボルトも登録すると何かいい事でもあるんですか?」
「基本的に冒険者登録をしていない方を依頼に連れて行く事は禁止されております。ですので、お付の方を荷物持ちとして連れて行く場合でも、冒険者登録をしていただくこととなっております。また、簡単なお遣い程度でしたらコボルトだけでも依頼は受けられますので、登録しておいて損は無いと思いますよ。ただし、登録には銅貨5枚ほどいただきますので、そのあたりはご了承ください。」
「荷物持ちか…どうする?」
「どうもこうも無いわよ。登録させてなるべく稼がせるのよ。」
「…じゃあ4人分お願いします。」
そういって銅貨20枚を渡す。そして銅貨の数を数え終わると、羊皮紙を4枚渡された。
「それではそちらに記入をお願いします。」
そう言うと受付のお姉さんは後ろの扉を開けて入っていった。
羊皮紙を確認して驚いた事がある。文字が読めるのだ。流石は異世界、日本語で書かれているように読めるが、実際は違うのだろう。文字を見て文字が違うんじゃないかということに思い至らなかったことに、少し失敗したと思いつつも、読めるからいいかと思い直し記入していく。何て事は無い、名前や年齢等書くだけなのだ。項目としては、名前・種属・年齢・スキル・特記事項の5つだけ。こんな簡単でいいのだろうかというほどに簡潔だった。ただ、スキルって何だよとか特記事項って何書けばいいんだよとか思ったが、受付のお姉さんが帰ってきてからでいいかと思い開けておく事にした。予断だが、コボルトたちの年齢は11歳だった。
名前を書いて少し待った頃、受付のお姉さんが何かを持って帰ってきた。
「お待たせしました。素談見の鏡をお持ちしました。スキルはこちらで確認可能となっております。この鏡を覗いてもらえば自分のスキルが何なのか教えてくれる魔道具となっております。」
魔道具、なんともファンタジーな響きだ。魔法は無いのに魔術はあるし、魔道具もあるのか…ちょっと意味がわからなくなってきた。早速覗いて見た。すると鏡に映った自分に何か書いてある。
「植物鑑定3、精霊適正9」
2つのスキルを持っている事が判明した。効果も名前を見れば程よくわかるものだ、しかし、隣の数字はレベルだろうか? 上限がわからないと、どうなのかもよくわからない。
「どうですか? 見えましたか?」
受付のお姉さんが尋ねてくる。
「見えました。植物鑑定と精霊適正がありました。…しかしこの横の数字はなんですか?」
「横の数字はスキルのレベルです。数字が大きいほどより大きな能力を持っているという事が判っています。」
「そうですか。では一番大きな数字は何になるんですか?」
「現在わかっている一番大きな数字は12と言われております。しかし、まだまだ上があるのではないかと噂はされておりまして…。最大でとなると判らないというのが現状です。ですがおおよそレベル3でスキル保持者では一般的、5で上級者、7で達人級、10以上は才能以外ではどうにもならないという評価をされております。」
何だろう、僕の精霊適正は一般人の限界のラインまできているのか…。しかし、精霊使いは結局のところ精霊と契約できるかどうかが鍵な訳で、レベルでどうのこうのなる訳じゃないのが実情だろう。
そしてそんな事を話しているうちに彩香の方も終わったようだ。聞けば「弓適正7、と未知推測5」というスキル構成。未知推測ってなんだろうか。
「未知推測はこれから起こりうる事柄や自分の知らない知識を、今ある情報だけで答えを導き出すスキルね。頭のいい人間には必要ないかもしれないけど、普通の人間には有り難いスキルね。このスキルのおかげで、弓を引けば矢の飛ぶ位置がわかるし、何より相手の動きも予測してくれるから命中率が跳ね上がるのよ。」
そう説明した彩香。何で効果を詳しく知っているのかと尋ねたら、
「何言ってるの? 鏡を使ったでしょう?」
と返された。実はあの鏡スキルの効果も見れたらしく、それで確認したとの事。僕の時は、わかりやすいスキルだからとすぐ目を離したのが駄目だったらしい。詳しく見たいものをじっと見ていると、詳しい説明も表示されるとのことだ。いいんだけどね、別に…。
コボルトのアレックとアルマにも鏡を見て何が書いてあったか羊皮紙に書いて貰った。まずアレック
「夜目、嗅覚強化5、弓適正2」
武器関連のスキルがあるのか…通常戦力としては僕よりも優秀じゃないか。彩香と被っているけど…。次アルマ
「夜目、嗅覚強化4、遠視2、超感覚2」
斥候向きなのかなと思うようなスキルだった。しかし、夜目と嗅覚強化はコボルトの種属スキルなのだろう。他のコボルトも総じて持っているんだろうな、犬っぽいし。
そして特記事項なのだが、別段書く必要が無いらしい。犯罪暦などがあればギルド側が書き込む事があるそうだ。なので空欄で出しておく。スキルもレベルは書かなくてもいい ―上がってしまうと書いてないのと一緒だからだそうだ― との事なので書かないでおく。そして書き終わった後、すぐに依頼を受けることが出来るかと思えばそうではなかった。
「では、こちらで本日付で冒険者になられた方々に、いろいろと説明させていただきますね。」
こうしてまさかの座学に突入するのだった。




