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ゴブリンを倒したところで昔の私は書くのをやめたのですが、今の私は続きを書いて行きますよー
次の日の朝、昨日の夜決めた通りに僕と彩香は村を出発する事に決めた。
ゴブリンの襲撃という一大事件に巻き込まれた結果、10日以上この村に滞在していた。それだけ滞在していても僕たちの財布からはお金は出ていっていない。最初の日に払った銅貨も今回の襲撃防衛の参加で相殺されて返ってきた。本当は満額防衛関連の報酬を払うと言われたのだが、授業料だと言って受け取らなかった僕らとの落としどころがそこだったのだ。
それでも納得してくれる気配が無かったので、グイール君を町までの道案内として連れて行くことと、その道中の保存食10日分を貰って納得して貰った。
グイール君もそろそろ町の騎士学校に帰る為に村を出る予定だったみたいで、昨日の夜に伝えてもすぐに出る事は可能だった。
「じゃあ親父、行ってくるよ。また休みには帰ってくる。」
「ああ、しっかりやれよ。だが無茶はするなよ? 怪我や病気になったら何にもならんからな。」
そんな感じの簡単な挨拶を済まし、こっちに合流してくる。
「お待たせしました。」
「いや、待ってないよ。もういいのか?」
「ええ、いつもこんな感じですから。」
「それじゃ早く出発しましょう。早く町に行ってみたいわ。」
「そうだな。じゃ、グイール君よろしく。」
「任せてください。」
というわけで、短くて7日間の旅が今よりスタートするのだった。
っと言ったが、旅と言っても道を歩いて行き、夜になる前にテントを張る、それだけなのだ。途中他の村へ行くための分かれ道や、林や山に続く道があるだけで魔物なんかは殆んど出ないそうだ。人の住む村や町に魔物が行かない為に、ソダ村のような元騎士たちが住んでいる村が外周にあるのだから。それでも幾らか魔物が入り込むので油断はならないそうだが。
ちなみに木霊の名前は”ウドン”に決まった。
そう言うわけでもう4日目の夜だ。歩いて寝ての繰り返しで飽きてきている…と言うわけではない。訳のわからない花があったり、不思議な動物がいたり、凄く楽しい。地球にいた様な動物もいるが半分くらいは見たことも無いのだ。二度見どころではなく、じっくり観察するように見ている。それは彩香も同じで、二人して動物園を回っている子供のような感じだ。
しかし、僕だって遊んでいるだけじゃない。ちゃんと精霊魔法の練習もしているのだ。例えば、今僕はシルフ能力である風操作の魔力を体全体に纏っている。そうする事により空気抵抗を気にしないで歩けるのだ。地味かもしれないが、長距離を歩くとなると空気抵抗が有るのと無いのと疲労の溜まり方が全然違うのだ。
さらに木霊の能力である生命力活性化の魔力を、休憩やキャンプ中に足の筋肉に使っている。グイール君曰く、回復魔術には3種類あるそうで、再生系と復元系、状態回復とのことだ。簡単に説明すると
再生系・・・自己修復能力を上昇させ体を回復させるもの。状態異常も一部回復させることが出来る。体の欠損や致命傷クラスは回復できない。
復元系・・・魔力を用いて肉体を作り出し回復させる。状態異常は回復できない。
状態回復系・・・体の異常を取り除く。体の傷や死者の蘇生なんかは無理。
こんな感じ。
木霊の能力は再生系の回復なのだが、筋肉疲労には効果があったようだ。おかげで筋肉痛に悩まされなくて済む。・・・もっとも、今使っている精霊の力は操の力を使うものであり、集の力をあまり使うものではないのがミソである。集を強くしたいのにあまり使ってないのはどうなのだろうね。
そういうわけで、いろいろ試しながら過ごしていたわけである。
村を出てから8日目の朝、僕たちは今タルレムの町の門の前にいる。タルレムの町は周囲を壁が囲っていてその中に居住区がある町だ。畑は壁の外にあり、僕たちが通ってきた道の両側にはとても多くの畑が広がっている。
そもそも道中に殆んど何も無かったのだ。あったのは、コボルト2匹と遭遇した位か。7日目の昼にコボルトを発見して、弓で威嚇した後に縄で締め上げて引っ張ってきたのだ。グイール君曰く、コボルトは人の町にも幾らかいて、労働力として使われているとの事だ。人の言葉を理解できる種であるコボルトは何かと便利なのだそうだ。
しかも良い飼い主には絶対の忠誠を誓うとの事で、餌付けしようと考えた彩香だったが、その瞬間にコボルトが腹を向けて寝転がる。ああ、お前たちは正しい。無理に抵抗したところで無駄だろうさ。どっちにしたってもふもふされる事を拒否することなどできはしない、彩香の目がそう訴えているからな。
本当は7日目の夜に着くはずだったのだが、そんな事をしていた性で8日目の朝になったのだ。7日目の夜は酷かった。コボルト2匹を幸せそうにもふもふしながら寝ている彩香を背に夜の番をして居たのだが、悲しそうな泣き声が背中から一晩中聞こえていた。
8日目の朝に一晩に1匹まで令を彩香に出したほどだ。しぶしぶ了承した事をコボルトに伝えたら凄い勢いで平伏された。傍から見たらどう見てもマッチポンプだと思うのだけど…。それに2日に1回は抱き枕にされる事は決定している。…ま、その内慣れるだろう。ちなみにオス1匹、メス1匹だ。
門の前では入門手続きをしている列が見える。人数も少ないし、割と早く回ってきそうだ。
「早く済みそうだな。」
「そうですね。ところでお二人はこの町に仕事を探しに来たということでよかったですか?」
「そうね。お金は少しは有るとはいえ、何もしなければすぐに底をつくわよ? それにお風呂に入りたいからお金は多めに必要だわ。」
それぞれ心配事や、やりたい事を話しているうちに順番が回ってきた。
「次の奴等ー。お疲れさん、何所から来たんだ?」
ずいぶんフランクな門番だな、この世界だと普通なのだろうか…。
「ソダ村から来ました。私は騎士学校の休みがそろそろ終わりなので戻ってきました。この2人はそのとき村に来ていたお客さんで、この町で仕事を見つけたいそうです。」
「ソダ村とはまた遠いところから来たもんだな。それにしても仕事かー。最近は冒険者になるくらいしか仕事が無かった気がするが…ま、頑張りな。冒険者になるんだったら、この道沿いの”盾の前に剣が2本”の看板が目印だ。」
「「ありがとうございます」」
「いいっていいって、お? 通って良いそうだ。コボルトもしっかり躾けられている様でいいんじゃないか? 次の奴ー。」
ずっと軽い調子のまま検問が終わった。楽だからいいんだが、ザルな気がするんだけどこれでいいのだろうか。




