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夜の4刻――


村の林側の出入り口は盾壁によって狭められている。そしてわざと開けられた2つの場所には騎士が5名ずつ、盾壁の並べられた両端に騎士が2名ずつ、そして家の屋根や物見櫓の上に弓兵が20名、合計34名で防衛に当たる。後方には衛生兵3名とその補佐をする住民が数名、後は松明の火の番をしている者や伝令を伝える者、物資を運搬するもの等小さい子供とその子供の面倒を見る者以外のすべての住民が加わっている。そこに弓兵として彩香が、物資の運搬係として僕が参戦する。いったいどうなる事やら…



夜の静かな空気が揺れ大きな音がした。伝令の係によれば、どうやら林前の罠に掛かったようだ。単純な落下系や振り子系の罠だが、先走りのゴブリンが見えてこないことから、致命傷を与えることができたのではないかと考えられる、との事だ。今相手の数を減らせることができたと言う事は、この後の一斉攻撃に加わる戦力を削ぐことが出来たと言う事。どんどん頭数を減らしていって欲しいものである。


それから4度、5度と罠が作動した音がしたが、ゴブリンが林前の木々の間から見える事はなかった。



そして、夜の5刻頃――


多くの罠が作動する音が聞こえた。どうやらゴブリンの群れの本隊が来たようだ。しかし凄い数の罠を仕掛けたのか、結構な回数の音が聞こえてくる。彩香がどのような罠がいいかいろいろとレクチャーしていた様だが、なんでそんな事に詳しいのだろうか? 謎である。


罠の音が聞こえ始めて3分程度、木々の間からゴブリンの叫び声が大きくなってきた。そして、物見櫓から


「見えたぞ! 撃てー!」


弓兵への攻撃の合図が聞こえた。


「いいか! 逃げる敵は撃たなくていい! こちらに向かってくる奴等だけを狙い撃て! 盾壁に張り付かせるなよ?」


「「「おぉー!!」」」


気合の入った掛け声とともに矢が林の方に飛んでいく。こちらからは当たっているのかどうかは判らないが、1体でも多く倒せていればいいなと思うばかりだ。そう思っていると、騎士隊の方からも声が聞こえた。


「止めを刺すよりも防衛戦線の維持を心がけよ! 援軍が来る時間まであと3刻程だ。絶対に後ろに通すなよ、守りきるぞ!」


「「「おぉー!!」」」


当初の予定通り、援軍までの時間稼ぎを優先するようだ。援軍が来るのであれば、時間を稼ぐのが守り側のセオリーだろう。少なくとも僕の知っているゲームではそういう傾向が強い。だが数が3倍もいる敵相手に、罠と盾壁でどれだけ時間を稼げるだろうか…。




僕は今、櫓に補給用の矢を持って行っている。櫓の上はそれほど広くないため、定期的に矢を持っていかなければならない。何人かの組を作り、櫓や屋根の上に矢を運ぶ。そのたびに戦場を見ているのだが…なんというか思ったよりも楽勝ムードなのだ。その証拠に騎士の元まで辿り着いたゴブリンの数が両手で数えられる程度しかいなかったのだ。


理由は幾つかある。1つは罠だ。林前の落下系罠エリアでは時間を稼ぐことも出来ていたのだが、何よりも足並みを乱せたのは大きかった。そのため落下系罠エリアを抜けて来るゴブリン相手に常に複数の弓兵で対処できていたのだ。そして、それを掻い潜って進んだ先には穴系罠エリアがある。穴系罠エリアでは、味方のゴブリンが穴に落ちた事に驚き、足を止めた隙に射抜かれるということも多くあり、ここでも多くのゴブリンを負傷させる事に成功したのだ。

2つ目は風除けの矢だ。矢の棒部分に羽根の付いていない矢は真直ぐ飛ばすことが難しい、というより無理に近い。しかし、風除けの矢は真直ぐ飛ぶ。これだけで相手に当たる確立が跳ね上がり、予想より多くのゴブリンを負傷させ、逃げ帰らせることに成功したのだ。

3つ目は火だ。村から50mほどの木の生えていないエリアのところどころに松明を焚いて視界を確保していたのだが、ゴブリンは火が苦手のようだ。松明を避けるようにこちらに向かってきていたので、予測がしやすかったのだ。また、松明は罠の上には置くことが出来ないので必然的に罠の無いルートを通らないように誘導できてしまった…偶然だけどな!

最後に4つ目、これはもうなんというか、ゴブリンの頭が思っていた以上に悪い。恐らく彼らの命令は突撃と撤退しかないのではないかというほどに悪いように思う。ゴブリンリーダーはもしかしたらもう少し頭がいいのかもしれないが、その命令を普通のゴブリンでは実行できない。


以上の理由の性でこちらはまったくと言っていい程被害が無いのだ。ただ、弓兵の疲労が少し溜まってきた様に見えるが、想定の範囲内だと弓兵の隊長さんが言っていた。


対してゴブリン側の損害だが、確実に止めをさせたのは37体だ。そして負傷を負わせたのは50ほど、後は落下系罠でどれほど止めを刺せたかはわからないが、負傷していないゴブリンは殆んどいないのではないかと考えている。


しかし、ここからが本当の勝負である。今は50m地点で木の後ろや罠に使った岩や丸太の後ろに隠れて様子を見ている。おそらく簡単な矢傷を治しているのだろうとの事。そしてそれが終われば全員で突撃してくるだろう。多ければ80ほどのゴブリンが突撃してくるのだ、気を抜く事はできない。だが、時間稼ぎならこちらも上等である。現在既にソニア様が昇り、もう少しで朝の1刻だ。あと1刻でタルレムの町から援軍がやってくる。それまでなんとしてでも耐え切れば、こちらの勝利に大きく近づくのだ。


そんな事を思っていたときである。


「グルジ村長ー!」


その声と同時に援軍が到着した。



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