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彩香(委員長)さんメインの話
朝目が覚めると、知らない天井が見えた。梁が直接見える天井を見てすぐに、異世界に来た事を思いだし、
「夢じゃなかったのね…」
そう呟いて小さなため息をつく。夢であってくれたらと思う気持ちが出てきていた。横では昨日一緒に寝た(ベッドの真ん中は開いている)慶吾がいびきを掻いて寝ている。疲れているだろうし、このまま寝かせておいてあげよう。
「さて…このまま着替えてしまって、昨日の事を話してしまいましょ。それに―」
皮袋からタオルを取り出して体を拭いていき、替えの服(これも皮袋に入っていた)に着替えて寝巻きとタオルをベッドから見えない位置に置き部屋の外へ出た。そして昨日晩御飯を食べたところに行くと、すでに村長が座って水を飲んでいた。
「おはようございます、村長さん。」
「おや、昨晩は長旅でお疲れかと思いましたが、ずいぶん早いのですね。」
「ええ、おかげでぐっすりと眠らせてもらいました。それに着替えを彼に見られたくないので。」
「そうですか。しかし私にはそれ以外の理由もあるように思いますが?」
軽い挨拶を済まし、何か言う事があるのだろう? と催促して来た。
「それでは単刀直入に、昨日私たちがこの村に着く前にゴブリンと思われる群れを見ました。数は詳しくは確認していませんが凡そ10から20というところだと思います。そして、その群れはこの村のすぐ近くにある林に入っていきました。それから―」
おおよその方向や距離、その他気付いた事をいろいろと伝える。村長はなるほどと頷きながら話を聞いてくれている。
「―となります。私の判る範囲ではこれで以上です。」
「…なるほど。情報をありがとうございます、早速対策を講じたいと思います。」
特に慌てた様子も無く、冷静に対処に動こうとしている村長を見て、確信する。やっぱりこの村は―
「―魔物の襲撃を食い止めるための村、と考えた訳ですか。顔に出ておりましたよ?」
「そうですね。そうすると王国の退役騎士様方が多いと言うのも納得がいくというものです。」
「…グイールですか。あれももう少し利口になってくれればいいのですが、まだまだですね。おそらく、あなた方の事を探るために会話に挑んだのでしょうが、逆に探られているとは…。」
「話を戻させてもらいますが、ゴブリンの襲撃についてどのように撃退しようと考えていらっしゃるか聞いてもよろしいですか?」
私の本題に入る前に聞いておかなければならないことを聞く。これの予想が外れるとどうしようもないのだが…
「…いいでしょう。この村の林側に盾壁を配置し、ゴブリンの足止め及び進軍ルートを限定し、そこを剣士で撃破を狙います。また弓兵を家の屋根に配置し、盾壁に到達する前になるべく数を減らしてもらいます。最後に盾壁を迂回されたときの対策に軽戦士を幾らか後方に待機させておく予定だ。」
作戦を聞き、予想通り――弓兵を展開するようだ。そうであれば、
「村長さん、お願いがございます。」
「なにかね?」
「私たちを雇ってくれませんか?」
「君たちを雇うのは構わない、人手は多いほうがいい。しかし、報酬を用意できないのだよ、この村は最低限の蓄えを残してすべてを防衛のためにつぎ込んでいる。当然国からの補助もあるが、期待の出来る補助ではない。…それで君らは報酬に何を望むのだね?」
報酬について聞かれるのは予想外だった。要所となれば防衛のための金も国から出ていると考えたのだが、しかし物の相場をわからない私たちがどのくらいの金額がもらえるのかわかっていないのが1番の問題だ。しかし、当初からこちらがお願いしようと思っていたものを言うことにした。相場に見合うかわからないが、博打覚悟で聞いてみる。
「弓を1つと矢を少々。出来れば矢筒と籠手も貰いたいところではあります。」
要求物は言った。後はこれでどうなるかだが…
「2人分であるならば少し割安ではある。しかし、2つではなく1つなのか?」
「ええ、彼はおそらく弓を引いた経験も無いでしょうから。」
「それではこの村の防衛に弓兵1人と雑務兵1人として雇い入れましょう。報酬は貸した弓、壊れた場合は替えを用意しましょう。それと矢と矢筒と籠手ですね。」
「はい。よろしくお願いします。」
「こちらこそ。それでは防衛線の準備のために皆に伝えに行きます。紹介したいのと装備一式を渡したいので一緒に来て頂けますか?」
「ええ、わかりました。」
私は村長と村の中を歩いて回った。
ようやく機能やら何やらが少しずつわかってきました。結構な数の方に見られているのを知って驚きました。この場を借りてお礼を申し上げます。




