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「さて、精霊の力について教えてくれ。」


単刀直入に言う、でないと変な方向に脱線しそうだからだ。


「私たちシルフの力は、風操作。教えたはずなんだけど…」

「風を吹かせたり、風の影響を受けなくするんだよ!」


とのことだ。

風を操作するっていうと、竜巻なんかも起こせるのだろうか? 凄く強そうな感じがする。と言うか何時教えてもらったのかまったく覚えがありませんが? ま、細かなことは気にしない。知っている振りをしつつ、さらに質問していく。


「風操作はいいんだけど、何所まで出来るかってことを聞きたかったんだ。例えば、竜巻なんて起こせたりするのかなって。あと、風の影響を受けなくするってのはどういう使い道があるの?」


「竜巻は無理じゃないかな? 作れたとしてもそこまで大きなものは作れないと思うよ!」

「風の影響を受けなくするのは、風が強いと髪とか服とかバタバタするのを防ぐことができるのー」


などと帰ってきた。風の影響を防ぐのは何に使えるのか今のところ解らないが、何か使えそうなものを考えておこう。それにしても竜巻が無理となると、どのような攻撃が出来るのか? その辺りも聞いておきたい。


「じゃあ、なにか攻撃できるものを教えて欲しい。」


「風で空気を集めて、ドーンてするの!」

「人族にはー、精霊魔術っていうのがあって。精霊の力を利用した魔術系統があるのー」


前者は空気砲のようなもので、後者は精霊魔術なるもの。精霊魔術って前になにそれ? おいしいの? みたいな感じで無いって言われなかったっけ? あ、それは精霊魔法だったか。似てるんだから「魔法? 魔術じゃないの?」って言ってくれても良かったと思うんだけど…


「その精霊魔術は、精霊魔法とは違うんだね?」


「前も聞いたけどー精霊”まほう”ってなんなのー?」

「精霊魔術は精霊魔術よね?」


なんかこう、思った答えとは違いすぎて何を言っていいものか解らなくなってくる。少し唸っていた僕に割り込んで彩香が話しかけてくる。


「少しいい? さっきの会話を聞いていて思ったんだけど、この世界の言語と私たちの言語が違うんじゃないかしら? 言語が違うのに会話が出来ていたのは多分、勝手に翻訳されてお互いに話しているんだと思うの。――私たちの世界で考えると、日本人とアメリカ人が翻訳サイトを仲介して話をしている感覚に近いのではないかしら。つまり、音は似ていてもそれが相手には意味の無い音にしか聞こえていないんじゃないかしら。」


と、彩香の考えを聞き、じゃああれもかな? と言う事を思いだす。


「あの、ご飯の前の”いただきます”的なものも翻訳しきれなかった結果、良く解らない言葉が聞こえたってことなのかな?」


「多分そうだと思うわ。あれもおそらく「国王様、今日も恵みをありがとうございます」みたいな文章だと思うけど、回りくどく言った結果翻訳できなかったのでしょうね。」


なるほど、よく解っていないけれども異世界に来てしまったんだもの、こんな良く解らない事もあるさ。とりあえずわかった事は、言葉に関してはあまり問題ないということで、


「精霊魔法は存在しなくて、精霊魔術であると、そういうことで間違いないかな?」


「間違いないのー」

「間違いないよ!」


「じゃあ、精霊魔術を教えてくれ。」


これでようやく攻撃手段が出来る、そう思うと少しわくわくしてくる。魔法(魔術らしいが)は男のロマン! 使ってみたいと思わない男子はいないと断言できる。それが使える! と急く気持ちを抑えつつ、教えを乞う。


「…明日でいい?」

「眠いのー」


今度も使えるようにはならなかったかと思いつつ、明日には教えてもらえるという言質はとった。


「明日でいいよ、約束な。じゃ、また明日ね。」


「また明日なのー」

「明日ねー、ばいばーい!」


そういって、ちゃんと彩香にも挨拶をしてまた精霊界なるところへ戻っていったのだった。そのときに、「あっ」っと何かに気付いてしまったような声を彩香があげた。


「どうしたの?」


シルフたちに何か言い忘れた事があったのだろうか? 彩香がばつが悪そうに言ってきた。


「ゴブリンの群れが林の中に入って行った事、村長たちに言うの忘れてた。」


「あ」


忘れてた。でも今から言うのか? もう日が沈んでいい頃合な訳だけど…明日でもいいんじゃないかという心と、今からでも言うべきだという心が鬩ぎ会い、結果…


「明日の朝にちゃんと言おう。」


弱い方の心に負けて、眠りに就くのだった。



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