私と君と君と私
同じ顔に同じ声に同じ思考。
違うのは名前くらいかもしれない。
何もかもが噛み合うように出来ている私達は双子で、私は君で君は私状態だ。
クローンみたいなものだと思ってもらってもいい。
そんなそっくりな私達は当然一卵性であり、実の両親ですら見分けがつかない時がある。
そのことに関しては、今更過ぎてどうとも思わないし、アイデンティティなんてあってないようなものだ。
私が君で君が私なら、必要も無い。
「……なにこれ」
そんな私が手に入れたのは一枚の手紙。
寝坊をした片割れを置いて行き、普通に登校した私は首を捻り、片割れの靴箱を開けてみた。
中に手紙はない。
片割れが寝坊をするから、こんなものが入っていたんだ、と理不尽な怒りを覚えながらも、ぺらり、封筒をひっくり返す。
片割れを待って出れば良かったが、遅刻になるのも面倒だった。
双子だからって常に一緒なわけがない。
宛名も差出人の名前もない手紙。
私は溜息を吐き出して、その手紙を鞄の奥底へと突っ込んだ。
私宛なのか、君宛なのか、そもそも差出人は私と君の存在を把握して手紙を出したのか。
溜息は止まらない。
***
『今日の放課後、裏庭で待ってます』
そんなありきたりな一文が、可愛らしい色合いの便箋に並んでいた。
私は鞄を持ってそこに向かったが、まだ誰も来ていない。
何度目か分からない溜息を零しながら、校舎にもたれ掛かっていると足音が聞こえた。
顔を上げると見覚えのない男子生徒。
私のクラスの人じゃない。
なら、君のクラス?と小首を傾げた。
私か君かも分からないまま、彼を見つめていると、彼は私達の苗字を口にする。
あぁ、だめ、分からない。
私達に一目惚れしたと言う彼に、私は眉を寄せた。
きっと君も同じ顔をしているだろう。
じっと彼を見て「ねぇ」と声を掛ける。
桃色に染まる頬を見ても、何も感じない。
「それって」
「どっち?」
ひょこり、木の影から顔を出す君。
私でも君でも同じだけれど、目の前の彼は、私と君を見て目を白黒白黒。
ぱちくり瞬きをするのを見ながら、私達は同じ方向へ同じ角度で首を傾げる。
え、え、と言葉にもならない声を漏らし続ける彼は、私達を交互に見て口をもごもごと動かす。
目を細める私達。
この後に続く言葉を、私達は知っている。
「同じ顔だから、どっちでも」
恥じらいながら言う言葉じゃない。
アイデンティティも糞もない私達は、同じ存在であり半分ずつになっただけの存在。
二人で一人。
それでも、私達は――。
「どっちでもは」
「どっちも要らないんだよ」
顔を見合わせて笑う。
同じ存在でも、個としての名前を付けられた以上は選んでもらわないといけない時がある。
飛躍すれば結婚なんて、いくら同じ存在だって言っても重婚なんて認められないわけで。
私と君が笑う。
彼が目を見開く。
「見分けが付くようになってから、出直せよ」
同じ笑顔二つ。
同じ言葉二つ。
私は君で君は私。
私達は誰でしょう。