陽爆の街、陰気の巫女
初対面ではあったが、俺は幼い頃から遠巻きに羨望と嘲笑の的になるユイさんを見てきていたし、お母さんからユイさんに関わるあれこれを聞いてきた。
ユイさんもまた、みなしごでありながらそれを引き取り、手塩にかけて育ててくれたお母さんからの主観と偏見が多分に混じったであろう俺に関わるあれこれを、聞かされていたのかもしれない。
シンマネを全く使役しない俺と、シンマネに全てを込めるユイさん。
本当に型にはまったように、ピッタリと戦いはスムーズに進み。
俺たちは同じ母を持っていたようなものだったのだろう。
初めからオルレアンの英雄を斬ろうとはしなかった。
「カシラっ!単刀直入に聞きます!何故こんな事をするんですっ!私を討って、それからどうするつもりですか!盃を交わした以上家族だと、そう約束していたはずです!隠し事はしないと!」
「すっかり調子を取り戻せたようね。流石、コキュートスの氷は伊達じゃない。だけど、私が素直に答えると思ってる?」
「そりゃあ思っていないよ!お母さんはそう言う頑固さがある。でも俺は早く答える事を勧める!」
「カシラもオルレアンの湖に沈められたくないですよね」
……言うわね。
流石、私が仕込んだ子供達なだけある。
「もう……これで本当に……」
微かだが、何かを口に出しながら笑っていたように見えた。
手加減していたのは、勘付いてはいたが。
実際は手加減に手加減を重ねていたのだろう。
ジャンヌは封じていた他を寄せ付けない程圧倒的な眩いシンマネを更に解放し、俺たちは目を眩ませ、その一瞬で俺の持つ剣も、ユイさんが操る氷も全てを砕き、その場から消えた。
本当に光そのものになったようだと思った。
もう会えなかった、力が何一つ及ばなかった。
どこにもいなかった。
まるで光そのものになったように。
静かに心を燃やすシキは、胸中に秘めたる思いの一部をなぞらえた。
願うはジャンヌがいなくなった事でヒトとナイトメアの均衡が瓦解したオルレアンの再建、気高い意志を持った仲間達との暮らし。
争いの種を生み出し、ダンジョンを悲しみで満たすアゲハを討つ。
ヒトの身でありながら、ダンジョンでのみ生き事を宿命づけられた男は、理想を叶えんと力を蓄える。