陽爆の街、陰気の巫女
何で、私……こんな記憶を今更持ち出してるんだろう?
ジャンヌが変わってしまって、その息子であるシキ君が今は私を守っているこの状況で。
少し考えたらすぐに分かったよ。
オルレアンのみんなを守る事に疑問を持っているんだ。
それでもここまで来るのは……何度も来るのは……
「ユイ……さん!ジャンヌは本当に僕らをやるかもしれない……!まずは自分の身を守るんだ!」
「もういい!もういいんだよ!」
「なっ!」
「この街の人なんか、守る意味なんてないんだよ!だから私も……私も!」
全てを受け入れ、ただ折れてしまった目の前の何かを感じる事しかもう出来ないよ。
ジャンヌはすかさず膝を曲げ、その場に座り込んだユイに剣を振るう。
「ぐっ、う……うっ!」
腕を翳し、生身で受け止めた小さな体躯は、勇気に感謝した。
湧き出る勇気に感謝した。
「外野の俺が、貴方に何を言っても伝わる事はないけど、ユイさんが守っていたのは街の人じゃない……」
シキは言う。
「この力で自分の場所を守ってたんだよなァ……」
涙ぐむ声色と、震える背中が……私には最近までのジャンヌと重なって見えたよ。
「民を守る事と、自分を守る事を同時にしてたんだよなァ……?」
「お母さん……ごめんね、せめて俺がもう少し大人で、近い目線で話ができたら……こんな事にはならなかったかもしれないのになァ……お母さんが今やっていることの意味も、少しは理解できたかもしれないのになァ……」