陽爆の街、陰気の巫女2
「長老様、失礼致します」
「ジャンヌよ、巫女はどうしている、様子はどうだ?」
「ハッ、巫女の持つコキュートスの力は、先の太陽の暴走に伴い、次第に高まってきております」
「やはりな、この現象は天災ではない、太陽神の仕業に違いない」
神の仕業……?そんな事はどうでもいいわ。
具体的にどうするのかを考える方がよっぽど大事でしょう?
そもそもコキュートスなんて大層な名前を付ける必要もないし、シンマネの形質変化がたまたま一番上手い「あの子」が巫女なんて呼ばれているだけなのに。
みんなで、シンマネを使う訓練をして、協力して抑えればその方がいいのに……どうして私達だけでやる必要があるの?
心の中でジャンヌはそう思わざるを得ない。
この女性こそ、俺、シキのお母さん。
肉親ではないものの、早くに親を亡くした俺はこの人に引き取られた。
我々はヒトである。
何らかの原因で昔、ここに迷い込んだ人々が集い、渡り鳥のように至る街で生活をせざるを得なくなってしまい、ナイトメアがうろついている世界での日々の過酷さが一族にシンマネ使役の力を授けた。
その力を見込まれ、ここに住ませる代わりにその力で太陽の暴走を抑える事を条件付けられた。
この街でのみひっそりと営みを続けた、唯一のヒト達だ。
人々は「サト一族」と呼ばれ、日常的に特殊な才能を開花させたスペシャルな一族と、ナイトメアの民から崇め奉られている。
「コキュートスの力と、太陽神の力、両者の均衡が崩れた今、再びサト一族の力で太陽神の増した輝きを封印する必要がある。行ってくれるな?」
太陽がちょうど真上に差し掛かった位置でシンマネを使役する事で、封印をしているが、その位置は野良のナイトメアが襲いかかってきても不思議ではない。
「何名か、腕のあるナイトメア・アクセルを同行させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「すまないが、有事とはいえ、此方も手が足りなくてな。巫女と二人で行ってくれ、なあに、いざとなれば巫女の隠し持つ奥の手を解き放てば良いのだ」
「しかし……!私がいるとは言え、彼女はまだ幼い、戦闘に不向きです、野良ナイトメアの前で何かあったら……!」
「先程も言ったであろう、奥の手を使えばいいと。手筈通りに何時ものようにやればいいのだ。民を守る為には致し方ない、決して失敗は許されんぞ?」
「……仰せのままに」
「サト一族護衛隊長ジャンヌダルクよ。コキュートスの巫女の護衛と、太陽神の封印の任務を命ずる」