魂で出来た器にこそ、魂を11
自分のこの真紅の髪と衣裳は何の為にあっただろうか。
今日はシンマネを封じられたから、己の肉体で戦った。
戦っている私を見ていた人々はこう思ったはずだ。
ゆらめく紅の焔のようだ、と。
忘れていた私の想い。
私の姿は何の為にあった?
舞いだ。
かつての私にも、想いのこもった舞があった。
舞主として、色々な場所でみんなを沸かせたものだ。
しかし暗闇に煌めく灯のように、招かれざる者達を集めてしまったと思っている。
いや、私たちがいた世界にとってはナイトメア全てが灯のようなものなのだ。
なんで死に絶えてしまった……?
アゲハの記憶にある光景は最初のダンジョン邂逅にて燦が見ていた夢と同じものだった。
次々と倒れて行くナイトメア達。
取り残される自分の身体は冷たい。
ひたすらに生きようと足掻く者達の世界は、まさしく地獄そのものだった。
アゲハの心に残ったのはそんな地獄への恐怖とどうしようもなかった虚無の心。
「いいだろう」
燦の想いの丈を黙って聞いていたアゲハは、その言葉から何かを感じ取った様子で臨戦態勢を解いた。
想いの燦。
夢のシキ。
「また会おう、だが……ミハヤは返さないよ。そしてシキ、咎も、私に与える事は許さない」
「アンタは潰す。何があってもな」
冷徹な瞳を向けるシキとは対照的に。
「ミハヤは迎えに行くから、立ちはだかる者全てをなぎ倒してでも」
燦は気付いていた。
アゲハの眼の下のクマに。
自分が置かれている状況が大変で、苦労をしていることを。
そんな奴に負けるようなはずはないと。
倒れかけた燦の肩を支えるシキ、そしてその背後に続くのは不屈の闘志を胸に秘めた仲間達。
なんとか起き上がり、皆一様にアゲハを睨む。
気づけばアゲハの姿は見えなくなり、演奏もフェードアウトしていった。