魂で出来た器にこそ、魂を10
その間に手を組まれ、地に伏せさせられる燦に問いかけた。
「そんな事より私から聞きたい事がある」
「私には君がミハヤを追いかける、いや。これから追いかけようとしているように見える」
「……ああ」
「彼女が君のナイトメアなのは理解している、我々ナイトメア・ブレーキはアクセルと君らヒトを処理する事は理解しているか?」
「……知ってるさ……ぐっ!」
「なら失った仲間の事よりも自分の身を守ることに注力すればいい。はっきりと言おう。ミハヤを追うという事は我々ナイトメア・ブレーキが全て、総勢で彼女を守護するという事だ、私は彼女を全力で守る。敵だらけの巣窟に行きたいのか?」
首根っこを掴んで冷徹な態度を崩さないアゲハ。
燦はアゲハを心で見据えたまま穀然とした態度で答える。
「そこにあいつがいるなら……僕は行く」
「ふざけるな!!」
首を掴む手に力がより加わって行く。
「なら僕から記憶を消し去ってみればいい、殺してみればいい、僕の心をへし折ってみるのもいいかもな」
「なんだと……?」
「できるんだろう?シンマネでなんでも出来る君なら」
確かに出来る。
シンマネを使ってマインドコントロールする事や、記憶を弄ることは、容易い事だ。
「でも人間にはな、たった一つだけ、何かしら、絶対に変える事が出来ない物があるんだよ」
「変えられない物など……!」
「あるッ!揺るぎないモノが!それは想いだッ!」
「心を砕いて、記憶を書き換えても、ベースになる想いがある限り、必ず心は生まれ変わる。記憶は息を吐き返す。何があっても僕はミハヤを絶対にお前の手から救い出すッ!」
「なら……!」
なら殺してやる、そう言いかけた時。
「お前に僕は殺せないシキッ!!!」
「その通りッ!このシキ、そしてリベールには夢がある!!」
アゲハの発する気迫にも耐えて、アゲハに向けて刃を振るうシキ。
こいつも燦と同じく恐怖を乗り越えられるヒト……!
……はやいッ!
燦とやり合っていた時の二倍は早い。
飛び退いてシキの攻撃をかわすアゲハ。
燦の拘束が解けた瞬間に、彼はすぐアゲハの着地点へ走り出す。
まるで最初からアゲハへの恐怖を乗り越えてシキが助けに来てくれるのを信じていたかのように連携をとってみせた。
「うおおおおッ!!!」
刃はアゲハの頬を僅かに掠め、アゲハは驚きの表情を浮かべる。
「……腹わたの奥で鐘が打たれてるんだ」
「どんどん早くなるんだよ」
「それが僕の想いだ」
あいつといた時間は短いと思ったけど、関係はないな。