魂で出来た器にこそ、魂を4
「燦……!」
不安と焦燥に駆られていたその姿は、別れた前日と変わらずにいた。
それを横目にカクテルを飲みながら、席に腰掛け燦とシキの戦いを見るアゲハ。
アゲハのシンマネが強くミハヤを縛り付け、あの誰よりも力に優れた彼女を身動きとらせずにいた。
「君を攫った次の日に会えたんだよ、何をそんなに強張っているんだ」
「なんでこんなことを……するの」
「会いたいって言ってたからだよ、君を連れ出してからずっと言い続けてたものだから、根負けした」
ミハヤの胸の高鳴りはその表情と食い違っていた。
喜びか恐れか、瞬き一つせずに燦を見つめていた。
「彼が優勢だね、燦より」
「一見ただのシンマネを切らした二人の泥臭い争いに見えるが彼は剣の扱いというより、戦い自体慣れてるように見受けられるよ、ほら、どんどん傷を負っていく」
『あっぐぁああっ!!!がっ、はぁ……はぁ……』
燦の咆哮が桜吹雪最上階に木霊する。
「燦が……」
絶対に守りたかった対象が傷つけられていくのは、この世のどんな事よりもミハヤにとって許せなかった。
アクセルの使命に嫌気が指して故郷を飛び出した事より、力をくれた師匠であるアゲハに今こうしていいようにされている事より。
そして……故郷が既に復興の余地も残さぬ度合いで根こそぎ滅んでいて、もしかしたら自分がその場に居合わせていたら家族も友も故郷も守れたかもしれないという後悔より。
(私はもう、何も失うつもりはない)
決して膝を付かず敵に食らいつく度にボロボロになっていく彼の姿が、身体をアゲハとメンバーに調べ尽くされ、同じくシンマネも空になりボロボロになっていたミハヤの奥底から力を発揮させた。
(失ったら何故も叶わないから)
「うあああああああああーーーーッ!!!」
ミハヤの背後に縛り付けられていた手と、拘束された足の鎖が一瞬にして引きちぎられた。
強いアゲハのシンマネを力で打ち破った。
「お前……どこからこんな、力が……っ」
幼い頃からずっと彼女を見て育ててきた私にも見せない激情を……いつから……?
観客達を掻き分けて彼の元へ突っ走っていく。
途中、あまりの無礼さに肩を掴んでくるのもいたが、そんなものはお構いなかった。
「燦……燦……!さぁああああああん!!」
この声は……!
表に出ていた裏人格であるサンが一瞬にして表人格に切り替わった。