魂で出来た器にこそ、魂を2
そういう所だよ、そういうテメェの甘さがキモチワリィんだよ!
「ウォオオオオオオッ!」
抑えていた黒い塊が身体から徐々に漏れ出していく。
オーラを纏うように、それはすっぽりとサンを包み込む。
いくぜ野郎ォ!
助走した勢いをそのままに拳を前に突き出す。
リベールのビジョンを受け取ったシキは装備を背後にかけ
、リベールにセット。
素手で立ち向かう。
あの黒いオーラに対して、シンマネで立ち向かうのは無理だと、リベールは即座に感知出来ていた。
すなわち、シンマネの能力を付与して使う武器は無効化され、量が少ないシキのシンマネを更に削ってしまう可能性があったのだ。
「燦!」
サンの拳を手のひらで受け止める。
走り出した勢いが余って余って真後ろに飛んでいくサンは態勢を整えすぐに連撃を叩き込む。
それらは易々と捌き切られていった。
シキの武術の前には何も得ていない者の攻撃など、一切無意味。
体格は平均男性を下回る燦より一回り小さいシキだが、今に至るまで沢山の大きな敵を相手にした。
「はぁあああっ!」
サン!こいつは武術の心得がある。
己の拳で隙を生ませその時に武器を使う戦法だ。
わかってんよォ!こいつ隙が中々出てきやがらねえ。
無理矢理突破するしかねえなあ!
無駄だ、死角は与えない。
俺の前に平伏せ!
シキの武術は現実世界だけではなくダンジョンでも通用した。
その拳は気が遠くなるほどの鍛錬と殴り合いの歴史が積もり積もっていた。
「げっ!」
決定的な打撃を裏拳で、サンのわき腹に入れた。
「効いただろ!」
しかして、勝ちを確信するに及ばず。
サンにも鍛え抜かれた一つの武器があった。
「おぉらァ!!!」
全く怯む事もなく、足払いをかけてきたのだ。
これには驚いた。
まるで神経がないようじゃないか。
ゾンビみたいだと。
よろめき膝をつかせた瞬間、サンは背後を取りそこからリベールに手を伸ばし、武器を強奪した。
ゲルファルス・アムスが!
腹に決めた一撃が燦にはきいていないのか!?
手応えは確かにあったはずだ。