シキといっしょ2
「では、一緒に行こうじゃないか」
「一緒に……?」
「いいじゃあないか、あそこはアゲハにも知られていないナイトメア・ブレーキ達の溜まり場なんだ」
そう言いながら僕らは徒歩を始める。
あの城へ歩き出したから、僕は一つの誤解を解いたのを確信した。
ロワールは言わないが……ナイトメア・ブレーキ達は別に……ナイトメア・アクセルやヒトを殺したい訳じゃなくて、むしろそれは避けたい事であって……
「だからああして……」
「何か言ったかい?」
「いえ、何も」
酷い誤解をした。
ほんの少し胸が痛む。
恐怖を振りほどいて戦っていたのは、ヒトやアクセルだけじゃない。
命を奪う事への怖さから必死に抵抗していたんだ……
これまで、戦ってきた意志ある敵達を思い出していくと、確かに、と感じる場面があった。
だからああして、隠れる場所を見つけてアゲハからの命令に背いてまで、安楽の地を求めているのか……
そう考えたら一つ疑問が生まれる。
ならアクセルやヒトを殺すのはやめてしまえばいいじゃないか、元々同じ同胞とも言える存在を消し去って、しかもそれが怖かったり嫌な事なら何故そうする必要があるんだ。
という事である。
もしかしたら楽しんでやってるやつもいるかもしれないし、あくまで僕の推察というか、そうだったらいいなって言う妄想に過ぎないんだけどね。
「なんで僕を連れていくんだ、気取り屋」
最後の単語は彼の鮮やかさに嫉妬して、つい出たものである。
「別についてこなくてもいいよ、キミらヒトに行く宛があるのならね」
「ないけどさ……でも敵だらけの建物に入るほど僕は僕の命を安く見積もってはいない」
はっきりそう言ってやると、ロワールは足を止め、振り向きざまに。
「なんだよ〜そういう心配をしてたんだね。大丈夫大丈夫、あそこだけは安全なんだよ」
親しげに肩を組んできた。
やはり彼もミハヤのように肌は鉛のように冷たい。
「安全?」
「まあ、行ってみれば分かるさ」
相変わらず爽やかで、鮮やかで、それでいて変に艶めかしい奴だった。
そういう所にもう一人の僕はイラついているようだ。
黙ってても心が騒つくから分かるんだ。