独占欲と力4
「これは……」
アゲハは少し意外そうな顔をした。
これだけの即死級のシンマネをぶつけたのに、それを掻き消すように彼は防いだ。
真っ向から防いだからこそ驚いた。
「掻き消すシンマネでも使ってるのか?アーゼスのように」
アーゼスの生み出す夜半の氷刃はシンマネを掻き消す特性がある。
ゆえに絶対防御や鋭い攻撃が出来る。
シンマネによる攻撃は通用しないのだから。
しかし違う。
アーゼスの夜半の氷刃さえ無効化した、燦の中にある黒い塊はシンマネを掻き消すのではない。
あれは。
「シンマネの真髄がどんどん僕に伝わる、使える!」
吸収し、己の物とする特性を持っていた。
通常のアクセルが体内で管理しきれるシンマネの量を100とすると、鎮魂曲の盃はその10倍の量を消費する。
何物も確実に塵にする攻撃だった。
何事もなく防ぐのは、流石に冗談ではなかった。
「これから僕はこの溢れるシンマネを使って、そして……お前を打ち倒してやる!お前自身の力でお前が倒れるんだ!」
落ち着け、吸収は出来た。
シンマネを使うことの出来ない僕が、敵から仕入れたシンマネで戦うのは初めてだけど、コントロールできるぞ。
敵のシンマネなら、掻き消される前に使える!
そして、基本的な戦いをナイトメアの軍勢で試した結果、僕にはミハヤのような、剣は向いていない。
もっと小柄なものだ、かなり小さいけど、取り回しのしやすさにかける!
「うおおおおおおおお!!!」
燦は左右に揺れながら、フェイントをかけつつアゲハの元へ走り出た。
「早い!」
その時彼はあるものを口に咥えた。
かなり小柄なナイフだった。
その柄の部位を咥えている。
拳を突き出す、アゲハはそれを手で捌く。
燦は身体を武器に肉弾戦を果敢に仕掛け出したのだ。
何度もアゲハを追い立てる攻撃以上に、燦からは覚悟が感じられた。
死に対する覚悟ではなく、何としても敵を倒さんとする覚悟だった。
「今までの気迫じゃない……」
逆に隙を見逃さず反撃してみる。
頭を狙えば背を屈めて、 腹を狙えば手で絡められ、足を狙えば。
「でやあッ!!」
飛び上がって回し蹴りを食らったが、手で受け止めた。
その衝撃で、アゲハは後方へ飛ばされる。
アゲハに態勢を整わせないまま駆け付けて追撃。
アゲハは思った。
今までに手合わせしたヒトやナイトメアは弱い威力の攻撃の隙間に強い威力の攻撃を時たま混ぜて戦う事しかしてこなかった。
それが戦いというものだと。
だけど燦は強い威力の攻撃しかしてこない。
アゲハは文字通り全てを賭けて襲いかかって来ていると感じた。
強い殺意への恐怖を振り切って戦う強い男だ。
「なら、これはどうだ」
アゲハは溢れ出るシンマネの本流を解き放つ。
金切り音に近い高い音波が散り、エネルギーの流れがアゲハから燦を突き放す。
「すごいシンマネだ、近づけない!」
立っているのがやっとの圧力から思わず目を瞑った。
一体何が起きているんだ。
ミハヤは無事なのか。
ゆっくりと目を開いてみると、そこには。
森が広がっていた。
かつての集落が存在し、ミハヤの暮らしていた馴染みのある場所だった。




