独占欲と力3
ふと、頭に声が過った。
ダンジョンで起きた過去の話。
『私は燦を、守る価値があるヒトだって分かった』
前のダンジョンでの敵に向かって、言ってた言葉。
ああ、聞こえなかった訳じゃなく、忘れていたのか……
『約束は守る、その約束は燦を守る事だから』
最初に出会った時に僕に言った言葉。
守る価値なんか僕にあるのか?
『不安を取り除いてくれた価値あるヒトに出会えて、嬉しい』
ミハヤの不安ってなんだったんだろう。
知らないまま消え去ってしまったんだね。
肌が冷たいんだ、あの子。
それもずっと触ってなんかいられないくらいに。
でも、きっと彼女は必ずあの敵に対して、恐怖と力の差を克服する事を僕は理解した。
その時に僕だけがアイツにビビって動けないでいるのは、許せない事なんだ。
君は知らないかもしれないけど世界にはバカみたいに人間が居て、たまたま僕がその対象になっただけだ。
僕は特別なんかじゃない。
が。
君は僕にとって特別なんだ。
この右も左も分からない戦いの世界で、一緒に道を歩いてくれるから。
守る価値があるヒト?
違うよ、君こそが本当に生きてダンジョンを遂げる、価値あるナイトメアなんだ。
だから僕が、彼女を守るナイトメア(ハクバノキシ)になる。
「こんな所で僕だけが死ぬわけにはいかない!」
アゲハの圧倒的な戦いの経歴と積み重ねた力に対する恐怖に必死に抗う。
「見ていてくれ、ミハヤ……!今こそ……」
「恐怖に抗うとは、ここまでは大した奴だ、だが」
アゲハがそれに気づく。
「シンマネの使い方を君が理解する前に、ミハヤの不安、即ち君という存在を取り除いておく」
すぐさまシンマネを手の平に濃縮させ、当たるだけで数多のヒトやアクセルを即死させるほどのエネルギー波を生み出す。
「鎮魂曲丿盃!」
それを彼にめがけて放出させる。
「朽ち果てろ」
全力で左右に逸れても、躱す事ができないほどに超大の光が彼に迫る。
「僕自身がナイトメアとなり、彼女を守る時だ!!」