紅雪のアーゼス
「くっ!」
今まで倒したナイトメアとは違う……
まさかこいつが……?
こいつからは何か強い意志が感じられた。
嬲ってやっても良かったが、あの女だけでも手を焼く。
無理をする事はない、一旦引いてあの方に話してみよう。
アーゼスはとても悔しそうなままに何らかの光に包まれ、どこかへいなくなる。
「引いてくれた……のか」
二人は戦闘の構えを解いて、燦は座り込んだ。
「ふぅーーーー!強い奴が来たもんだね」
「また助けられた……」
「手を出したらマズかったかな……」
心なしかあまりいい表情をしていない。
感情を表に出す事がほぼないが、なんとなく燦は勘付いた。
「どうして危険な事に巻き込まれにきたの?助けるのが私の役目だよ?」
「役目?」
その言葉に僕は心を抉られるような感じがあった。
役目、とはなんだ。
誰に指示されたのか。
そもそも指示を受けているのか。
こんなに自由な世界で戦い方をするだけなのに、役目なんて必要あるのか?
助け合えればそれでいいじゃないか。
そう思った。
いや違うな、僕は……きっと。
「僕は……あっ」
燦は不思議のダンジョンから目を覚ました。
戦いを乗り越え、新たな階層へ足を踏み入れるその時まで、もうやるべき事は終えていたからだ。
僕は彼女に、何を言いたかったのか。
それどころか何をしていたのか忘れてしまった。