28/100
シンマネ6
危なかった、あのまま素直に仰け反らなければ顔を拳が貫通していたな……
痛みに顔を歪ませ、必死に耐えた。
ミハヤの潜在的な力に恐怖したのはコートの男。
名はアーゼス。
「あの人」からの命令で俺たちは動くけど、それで俺たちが死んでしまったら「あの人」は寂しく思うだろう。
寂しがり屋だからな。
無理は出来ない。
シンマネ、使うか。
再び立ち上がり、ミハヤへ向けて足を運ばせた。
走りながら手をまっすぐに伸ばした、その手には。
剣が生成された。
「あれはロワールと同じ……!」
シンマネを固形化させて剣の形にしたのか。
いや、でも少し違う。
その剣は硬度の高い氷で出来ていた。
剣を使い攻め入る。
拳と剣では長さに差がある。
ミハヤは防戦一方になった。
今度はいくらシンマネで身体を補助してもカウンターとばかりにはいかない。
手傷を負った状態で今後燦を守りながらダンジョンを進めることは厳しい。
そう考えた。
無理は出来ないアーゼス。
無理は出来ないミハヤ。
守るべきものが二人にはあった。
戦いは長引きそうに思えた。