サン
僕はここに来るまでに戦いというものは経験してはいなかった。
ここからが僕の戦いだ、そう思っていた。
そのためのトレーニングには余念を置かなかった。
この「質量を持った光」をコントロールするに至るまで、どれだけかけたんだろう。
「まだだぜぇッ!!!」
全ての範囲から剣が突発的に現れ、向かってくる。
死角をとられないように視線を激しく揺らし続ける。
いなし続ける。
何本も掠めていく。
本命が来る。
サン。
光の剣を握って向かっていく。
もう様子見など、している暇はなかった。
情けない話だが認めよう。
こんな事もあるのだな。
天才、というものかもしれん。
握られた剣を剣で弾く。
一切の間隙も見つからないので反撃に転じることができない。
オールレンジ・セイバー
現れては付いていく剣を握って投げ飛ばされる。
やられ放題では、いられぬ。
ならば。
ロワールは剣が追い付かれるより早くサンに向かって走り出す。
鋭い太刀筋をぶつけ合う。
霧散し続ける光。
剣がロワールを囲むが、回避と反撃を無理矢理行い続ける。
光がロワールの関節に隙間なく張り付いている。
それにより痛みをごまかし、人間には不可能な動きを可能なものとしているようだった。
サンは鋭い目力で、それを捌いていく。
剥き出しの殺意がふれあい、激しい火花を散らすように。
光の剣と光の剣を交わし続ける。
ついにサンの横腹を剣を当てる。
「……ぐぅっ!?」
「取った!」
「けど、まだだぜ……」
「ハアッ!」
「うおおおおおおおおおお!!!」
サンの操る無数の光の剣はその手数と攻撃の頻度を増やす。
癖のある力と戦闘を両立してロワールを相手取る。
制御力はもうロワールの比ではなかった。
だが、力だけは。
「うっううっ……!」
受ける度にその負担は腕に伝わり、重いダメージとしてサンにのしかかる。
両腕の、感覚がねえ。
向こうも本気になってるんだな。
嬉しいなァ、オイ。