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十字架に乗せる黒き君への思い  作者: 夢幻館の門番
1章〜運命の始まり
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6.渦巻く思念

6.渦巻く思念


「ところでさっき櫛田さん、王立対魔族高等学院って――」

「そ、そうだ!姫子!私トイレに行きたかったんだ!早く行こうぜ!」

気のせいか、額に汗が滲んでいる。

強引に姫子の袖を引っ張って、廊下の奥へ奥へと向かう美琴。姫子は何がなんだか分からない様だったが、不意に真面目な顔になり、希と咲を見つめて、

「目の前の事が全部本当の事じゃないんだよ」

そう言うと姫子は大人しく美琴に引きずられたままトイレのある曲がり角へと消えた。

「…今のなんだろうね、咲さん」

「…」

無表情の咲に希は怖くなって、声を掛けた。

「咲さん…?」

「あ、いえ、なんでもないの…ちょっとぼーっとしていただけだわ…」

はっとした様に希の顔を見る。

だが、その表情は何かを未だ考えている様だった。

「咲さん…本当に大丈夫?」

「大したことないわ、時々こうやって訳もなく考えてしまうの」

「私、中学までは外にいたから王都の事、全然分からないんだけど…ここって普通の高校じゃないのかな…」

「私も小さい時から海外にいたから…陽元さんは心配?」

「うん…」

俯いて答える。

「そうよね、私ったらなんて配慮ない聞き方を…」

「そ、そんなことないよ!私咲さんに心配してもらって嬉しいよ!」

慌てて答える。余計に面倒くさいことになりそうだが、事実そう感じたのたから言い訳は出来ない。

「…ありがとう、陽元さん」

少し赤くなって咲が微笑む

結局、希と咲は姫子の発言の真意を読み取れずに、教室へ入っていった。


―――――


「…何を考えている」

声を低くして美琴が問い詰める。

「根回ししたところでいつかはバレちゃうじゃない」

素っ気なく答える姫子。別段他意がある訳では無いように見える。

「これは姫子が勝手に動いていい問題じゃない」

依然として追求の手を緩めない美琴。

「…表向けの肩書きで満足出来るうちは何もしなくていい。それが――」

「上の意向。そうでしょ?美琴は昔から見た目と違って律儀だもん」

子供っぽい態度で答える姫子。

「いいか、私は何も姫子と敵対したい訳じゃない。魔祓いに従うだけじゃないか」

姫子は肩をすくめ、

「どっちにもしても分かってるのは、あの二人は只の人間じゃないってこと」

「…どういう意味だ?」

怪訝な様子で尋ねる。

「言ったでしょ?いつか分かることだって」

美琴は深く息を吐くと、観念したように笑った。

「それも巫女のカンってやつか?」

「どうだろうね、なにしろ本物に会った事がないもん」

姫子もまた笑うと、手を伸ばす。

「戻りましょ?大丈夫、私の妄想だって言い訳するから。ね?いいでしょ?」

「…あぁ」

一瞬、躊躇した後伸ばされた自分よりも一回り小さい手と顔を交互に見つめ、それからしっかりと両手で包む。

(あぁ、姫子、やはり君には甘くなってしまうね…)


―――――


暗闇で満たされた洋館と思しき中で複数の影が蠢く。薄明かりを放つ揺らめきが、姿を浮かび上がらせてはまた闇に沈む。

「計画は順調か?」

その内の1つが声を放つ。

「はい。既に到着したとの報告が入っております」

前者とは違い、いくらかしゃがれた声の別の影が答える。

「偵察の方はどうなっている?」

女性のものだろうか、高い声が響く。

「そちらについても問題ありません。」

再びしゃがれた声が響く。

「しかし、自らの子供を送るとはな」

人間の中年男性ぐらいであろう声が言う。

「致し方あるまい。これも我らクリフォトより出でる者の崇高なる目標のためだ」

最初の声の主がゆっくりと答える。

「天命のまま、我らは還らねばならぬ。如何なる障害が立ち塞がろうとな…」



追記:一部誤字があったので修正しました。

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