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十字架に乗せる黒き君への思い  作者: 夢幻館の門番
1章〜運命の始まり
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4.欺瞞

4.欺瞞


希が咲の家を出る事が出来たのは、空が完全に深い藍に染まりきった頃だった。

「咲さん、今日は本当にありがとう!そしてごめんなさい!」

「謝らないで、あれは事故だわ。それに謝るべきは私だわ。こんな時間まで引き止めてしまって…」

「そんな事ないよ。咲さんが気遣ってくれて私嬉しいよ!」

希の言葉に咲は困った様な微笑みで、

「…陽元さんがそう言ってくれるなら、私も…」

(…可愛い…じゃなくて!)

思わず心に浮かんだ言葉を飲み込みつつ、希は切り出す。

「咲さん、私そろそろ帰るね?」

「ええ、また明日、学校で会いましょう?」

優しく微笑んで咲が手を振るのを見ながら、希は家に向かった。


「希…」

ひとりでに咲は希の名を口にしていた。

「全ては欺瞞なの。過去を見ない私の…」

空を見上げ、その頂点にある月を見つめる咲。

「…私への報復のつもり…?」

天を仰ぎ見る咲の顔は、先程までの明るい表情では無く、硬い表情になっていた。

「…きっとそうね、私は貴女達とは違うもの…」

「希…全て終わったその時にはきっと…私を…」



「殺して」




「ただいまー」

玄関を開け、挨拶をする。

「…いる訳ないよね…」

部屋の中は人気は無く、暗く静まり返っている。希にとっては日常になってしまったこの現実も、今日だけは温もりを感じたかった。

「入学式だったのに…朝は小言しか言われなかったし…帰ってきても…」

堪らず独り言に漏れ出すのは寂しさと僅かな怒り。

リビングのテーブルの上に、走り書きが残されていた。

「希、入学おめでとう。私は行けなかったけど頑張ってね。夕飯はテーブルのパンとサラダ、竈のスープを温めて。それと今日、お守りを持っていくのを忘れていましたよ。母より」

そういえば今日はお守り…メモの上に置かれていた十字架を持っていくのをすっかり忘れていた。

「お父さん…」

手に収まったそれを見ながら呟く。

これを私にくれた父はもうこの世界にはいない…

希の父は希が幼い頃にこの世を去っていた。原因不明の事故に巻き込まれたと希の母から聞いた。

「私、頑張るよ…大丈夫、ここにはあいつらも来ないから」

そう呟いた時、手の中の十字架が仄かに光を放ち始めた。

「…これは…?」

その光はやがて収束し、一筋の標になり、窓の外へ向かっていた。光が指し示す所を見ようとした時に、十字架が突然震えだした。

「今度は何…?」

雲の切れ間から満月が覗いた。いつもは綺麗に見えるそれも今は、どこか暗く見えた。

「…っ!?」

その時、希は視線を感じた。鋭く射抜くような、はっきりとしたものを感じる。

(…っ何…?何なの…これ…?)

心臓の鼓動が段々と早くなる。首筋に感じる冷たい雫の感覚。

(この感覚…咲さんの家で見た夢と同じ…)

耳に響くのは自分の激しい鼓動と、荒い息遣い。そしていつの間にか十字架が発していた耳鳴りのような、高く細い、不安を仰ぐ音だった。

(…私…何も…どうして…どうして…っ!?)

視線が一層強くなった時、十字架が手の中を離れ、宙に浮く。そして一際高く大きな音を放つと、希の視界は眩い光で包まれ、同時に意識も途絶えた。


「全く…こんな夜に偵察なんて…俺もつくづく運がねぇなぁ…」

月下の元、空に浮かぶ異形。鋭利な爪や牙。背中から生える一対の翼。居るはずのない異形。現れたのは偶然か、それとも…



久しぶりで御座います…色々考えていたらいつの間にか更新ペースが遅くなってしまいました…汗

4話にして黒幕というか物語の根幹にある存在が出てくるという…これもちゃんと考えて話を進めないからですね…(苦笑)

次回以降はちゃんと推敲しますので、はい。

相変わらずの駄文ではありますが、今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m

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