#11 二日目――確信
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終着点は墓地だった。
立ち昇る雲は灰色で大きくて、明らかにたくさんの雨粒を中に孕んでいた。
手入れする者もいない荒れた墓場。かつて、死者の安寧を祈る場所だった空間を、雑草たちが好き勝手に荒らしていた。
「ここが……次の目的地?」
「……」
幼い私は応じてくれない。
いや、もしかしたら喋ることが出来ないのかも知れない。
私はそのまま歩き続ける彼女に着いていった。
やがて、墓地の隅に私たちはやってきた。
そこに在る、綺麗に手入れされた墓。
周りに雑草は全く生えていない。
そして――添えられた真新しい花束。
モノクロの中で唯一色彩を持つ、鮮やかな黄色の向日葵。
墓碑に刻まれた〝三〇〇一年二月十八日〟の文字。
見知っている名前が、そこには有った。
全部全部、蓋をしていただけだった。
多分、最初から気づいていたのだろう。きっと、知らない振りをしていただけだ。
でも、ヒントはどんどん増えていった。確信はいつの間にか、蓋が出来ないくらいに大きくなっていた。
少女はこちらを向いた。ニッと笑って、次の瞬間にはもう消えていた。
彼女は一体なんだったのだろうか。もしかすると、私の生き霊か何かだったのかもしれない。
つれ回された私は、たった今、真実と向き合うことを決めた。
決意と同時に、モノクロの景色が雑草にまみれたグリーンの墓地に変わった。
そしてポツリ。
――雨が。
一粒の雨は瞬く間に無数の雨粒を呼び、墓場は大雨に包まれた。
私はただただ立ち尽くしていた。
母さんの墓碑を見下ろしていた。
『……ここにいたのか』
私は振り返った。
たった二日間でも、もうすっかり聞き慣れた声。
サイボーグさんが、大きな大きな傘を持って立っていた。何故か体はひどく汚れていた。どこかで引きずり回されたみたいにどろどろでぼろぼろだった。
『早く帰らねえと、風邪引いちまうぞ』
そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。
私も貴方も、言わなきゃいけないことは沢山あるはずだ。
「……用事は済んだの、〝父さん〟」
五万年ぶりに呼びかける。
響く雨音は私の中で響き、新しい音とともに回り続ける。
動かない。
動けない。
ずぶ濡れのまま。
父さんは、そのまま口を開かなかった。