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2話 伸縮する秘部Ⅱ

今は2時間目と3時間目のちょうど15分の休憩時間。

ピヨリは2時間目から、うすうす気づいていた腹の痛みから逃れるためにトイレの大便座に駆け込んでいた。


「うっ、ふー…………」


 とりあえずの危機は過ぎたようだ。

腹痛から解放されたピヨリは、晴れやかな顔をしながら個室を出た。


「…………?」


そこでピヨリは異変に気付いた。


 「おっ、危ねー危ねー、もう少しで恥をかくとこだったぜ」


 手洗い場の鏡を見て、ピヨリは社会の窓が全開だったことに気付いた。

もぞり、と何かが動いたような気がした。



――そして異変は起こる



 ピヨリがチャックを閉めようとした瞬間だった。


 刹那、ピヨリの秘部が、デロン、と伸びた。


「うおぉ! 何じゃこりゃ!」


 突然すぎる事態にかなり動揺したが、咄嗟とっさの判断で個室へと踵を返した。



「こ、これ……俺の…………だよな?」


 決して性的興奮によって、海綿体に血液が凝縮したというわけではない。ただ俺は用を催していただけだ。



「……意味わかんねぇ……」


 ぐにゃり、と伸びている自分の秘部を掴み、顔の近くまで寄せて、まじまじとみる。3mは伸びているだろうか


「これ……俺のだよな? なんで……伸びてんだよ!?」



「願先君、やはり君も能力者だったか」


「!?」



 隣の個室から、低い男の声がした。




「お前は……生物担当教師の長嶋ながしま!」




 最初から隣の個室に居たのだろう。

首だけを個室から出し、ギョロリと細い目でピヨリを俯瞰ふかんしていた。


 生物担当教師長嶋。ひょろりと長い身長。全体的に細い体のシルエット。線の細いその体躯とは裏腹に、かなりの目力で、その鋭い眼光には不良さえも射すくめられてしまう。

ちなみに女子生徒からの人気はかなり高い。




「おいおい、教師を呼び捨てにするのは良くないなぁ」



「そんなことはどうでもいい、あんた……なぜ俺の秘部が伸びたのか知っているのか?」


 長嶋は、ふふ、と笑いながらトイレの水を流した。


「君のそれはね、”伸縮する秘部”(ロングマラー)だ。ロングマラーで相手の尻か口を貫けば、相手は君のとりこになるのさ」


「ロ、ロングマラー? とりこ?」



 話の内容にまったくついていけない。いきなりこいつは何を話し出しているんだ?


「ふふ、まるで理解していないようだね。じゃあ――」


 そこで、バン!! と扉が開け放たれた。



「――試してみればいい」


 長嶋が愉悦そうに笑って言った。


 こいつ……何人か人を殺っている目だ!


「……な、何をだよ?」


「君の能力だよ。次にトイレに入ってきた生徒の尻に秘部突っ込んでみるんだ。君は初心者だから、伸びろ、伸びろ、と念じればいい」



「何を……そんなこと、ホイホイ言われて、ハイ、やります。なんて言えるわけないだろ!!」



「……ふう、困った生徒だ……」


 長嶋はやれやれと首を振っている。


「君、自分の立場を理解したほうがいい。これは一方的な勧誘さ。わが同胞へ迎えるか迎えないかのね。僕たちの勧誘を断ると言うことはすなわち死を意味する。このままじゃ、君、処理されるよ?」


「処……理……?」

 急に背筋が寒くなった。


「そう、処理だ。ただ能力を保有しているだけで、僕たちにとっては脅威になりかねないからね」


 ますます意味がわからねェ……

言う通りにしないと俺死ぬのか……?


「君は、もともと僕たちにマークされていた。生まれた時から、今の、今まで」


そこで、くるり、と長嶋は背を向けた。


「おや、ちょうど誰か来るようだね。まあ、君が従うか、従わないかは自由だけどね。僕としては良い知らせを期待しておくよ。」

そう言って、長嶋は隣の便座へと戻った。



 そうすると微かに足音が聞こえてきた。本当に誰か来る。



「ま、まま、待て……落ち着け、落ち着くんだ……」

気付いたら、秘部は元通りのサイズへと戻っていた。時間が経つと戻るのだろうか。


(お、俺はどうすれば……どうすればいいんだ)


そうする間に時間は刻一刻と迫っている。


駄目だ、このままじゃ俺は死んでしまう――


「――クソッ! やるしかないッ!」


 扉を開いて飛び出した。その先にいたのは――


「んおっ! 願先! びびったー。急に飛び出してくんなよ。てか……次体育だぞ、まだ着替えてねぇのか」


「お、おう……」

目の前にいたのは、俺と同クラスの体操着に身を包んだ大桑将兵という男だった。


 言うほど親しくはないが、名前の順が近いのでよく同じグループになる。

強そうな名前だが、実際は、160㎝前半、体重は55㎏ 握力は26㎏とかなりか弱い男である。


 大桑は小便器の前へ立ち、なんの恐れもなしに小便を始めた。


「さあ、やってみろ」


 後ろの大便器の個室から長嶋の声が聞こえた。


 やるしかない、やるしかないんだ。


 なに、殺すわけじゃない、奴は虜と言っていた。虜とはいったいどういう意味なのかは分からない、だけど――


「さっさとシロォオオオオオオオオオオオ!!」

轟、と長嶋は耳朶を破るほどの大声を上げた。


「わ、ワァアアアアアアアア!!」



 その言葉に突き動かされるように、ピヨリは、チャック開き、秘部を出す。そして照準を大桑へと向けた。


「ふぅ~、やっと出始めたぜ……って、うん? なんだ急に大声出して……?」


 ピヨリは伸びろ、伸びろと強く念じた。


 その瞬間、本当に秘部は勢いよく伸びた。今度はしっかりとした意思を持って。

 驚くほど速いスピードで秘部は伸び、そのまま小便をしている大桑のケツにズボンを破ってめり込んだ。


「ぐァああああああああああああ!!!」


 秘部が食物が通る道を逆流する、大桑はもだえ苦しんでいたが、ピヨリの秘部が口から出た時に、ピクピクと痙攣して、止まった。


 大桑は見るだけで、悲惨な状態だった。



 秘部は数秒経つと、まるで掃除機のコンセントのようにシュルシュルと収納されていった。


「ハァハァこれが、”伸縮する秘部”(ロングマラー)の力……なのか?……」


 かなり体力を消耗した。


「ははは、良いじゃないか」

 長嶋がトイレから出てきた。


「どうだ、理解したかい? その能力を」


「あ、ああ」

 なんとか頷く。まさかこれほどまでの力なのか、この”伸縮する秘部”(ロングマラー)は

もしかしたら、この力で長嶋をなんとかできるかもしれない。


「歓迎するよ。願先ピヨリ君。では、改めて自己紹介でもしようかな、私の――」


「――うるせぇ! 俺の虜になれ!! ”伸縮する秘部”(ロングマラー)!!」


「!?」


秘部はまるで矢のように飛翔する。だが先ほどの”伸縮する秘部”(ロングマラー)の消耗が原因か、大きく外してしまった。


「チッ!」


「おやおや、そうですか、……勧誘失敗……と」


 長嶋はその一言だけ言うと、体中に力を入れた。

すると、長嶋の体がブクブクと脂肪で風船のように膨れ上がる。


 ブクブクと膨れ上がり、服が破裂した。

ビリビリになった服がそこら辺に散る。


「こ、これは!?」

 ピヨリはすかさず次の攻撃への臨戦態勢に入る。

奴が能力を使用する前に、必ず当てる。



「”伸縮する秘部”(ロングマラー)!!」

 合計これで3発目の”伸縮する秘部”(ロングマラー)。それは一直線に長嶋に向かって突き進む。


「効かん!!」

 しかし、秘部は長嶋の大きな風船のような腹に当たって跳ね返される。体が膨れ上がりすぎて顔を見るのさえ難しい


「私の能力は”脂肪増加”(インクリースミート)! 体内の脂肪を無限に 増加することが出来る。打撃なんぞ絶対に効かない!」


「ハァ、ハァ……」

 クソ、”伸縮する秘部”(ロングマラー)は体力の消耗が激しい。あともって2,3発といったところだ。


「おらぁ、もう一発だぁ!」


 構わず、秘部を伸ばす。


 今度は運良く長嶋の尻に向かってゆく。


「良し! あとはケツ穴にブチ込めば!!」


 秘部はまるで生き物のように、しなりながら尻穴へと前進していく。


 秘部はドンドン直進していくが、尻に入ろうとする瞬間、ボヨン、と弾んだ。


「畜生! やつの肉が邪魔して穴に入らねぇ!」



「願先君、残念だ。せめて安らかに逝け」



 そう言って、長嶋は叫んだ。


「肉だるまクラッシュ!!」


 長嶋は技名を叫びながら、その巨体の突進でふところにまで迫ってくる。




――駄目だ。

――威圧されている。

 普通に今までの人生を生きている人間にとって、肉だるまクラッシュは野生の熊が襲ってくるようなもの。

威圧されて、足がまるで地面に縫いとめられたかのように動いてくれない。


「う、うわあああああああ」



―――その時だった。



「ご主人さまに、なにをするんだあああああああ!!!!」


 突然、誰かの声が聞こえた。誰かがピヨリの身代わりになってトイレの壁に激しく打ち付けられた。


「ご、ガハ!」



「お、お前……」



そこには先ほどまで倒れていた大桑将兵がいた。


「な、なにをやってんだ……」


「うっ、……フフ。 ご主人様を守るのが僕の役目、ですから……」

 大桑は頭から血を流して笑いながら言う。


 ピヨリはこの時悟った。大桑は虜状態の支配下にあると。つまり大桑はピヨリに絶対服従。



「そうかい、君は願先君の虜になっていたんだね。すっかり忘れていたよ。では、仲良くご主人様と一緒に眠るがいい!」



 長嶋は叫んだ。今度は今までのとは違う。全力だ。


「肉だるまクラァァァァァッシュ!!」



「そうか、俺は一人じゃない。大桑と俺で、二人! 今の俺なら十分テメェを倒せる」


そこでピヨリは叫んだ。


「大桑ァ! 俺を守れ!」


「はいっ、ご主人様! グホォ!」


 長嶋はタックルする。無慈悲に、大桑は重い一撃によって吹き飛ばされる。今。


 いまだ、この瞬間。長嶋は肉だるまクラッシュを放った瞬間、反動で体の動きが止まる。


 今しかねぇッッ!!


「そのおしゃべりな口にねじ込んでやる! 最後の一発だ。しっかりと味わいな!!」


”伸縮する秘部”(ロングマラー)の能力は体力をごっそりと持っていく。

だからこれで、この一発で決める。


「”伸縮する秘部”(ロングマラー)ァアアアアアアアアア!!!!」



 ピヨリの秘部が今までにないくらいの速度で射出された。それをいい変えるなら大型弩砲バリスタ




「あ、ガアアアアアアアァァァ」



 勢いよく口に無理やりねじ込んで行く。そしてそのまま秘部が消化管を滑るように通り、ケツ穴からその顔を見せた。



 長嶋がピクピクと震えだし、やがて止まった。



 辺りを静寂が包み込む。



 ピヨリは長嶋に背を向けて言い放った。


「虜、完了」


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