26話
ピヨリはいつものように学校に行く時、テルモと待ち合わせしている場所でしばらく奴を待っていた。
「お~~い~。ピヨリ~~。待たせてすまーん」
テルモが10分遅れでヘラヘラ笑いながらもようやく来た。
ピヨリはあの作戦を知ってからも愛に言われて今までと変わらずテルモに接している。
「テルモ、今週のブリーフ見たか?」
ブリーフとは、週刊少年シャンプで連載されている子供に大人気な漫画のことだ。
「お前まだブリーフ見てんのかよ(笑) ブリーフはトーナメント編に入ってからクソマンガになったろ。毎週毎週、先に頭にブリーフを被せた方が勝ちっていう勝負、見飽きたっつーの。そんなんじゃ子供も騙せねぇよ」
けらけらと笑い、テルモは品性の欠片もなくボロクソに批評する。
ピヨリは正直、頭に血が上った。
テルモは基本良いやつだが、こういうところで、己のカスみたいな性格を露呈させてしまう。
やはりこいつは、血祭りに上げたほうが良いようだ。
「そういや、もうすぐだピヨリ。もうすぐ、校長に再戦を望む」
「そうなのか」
たぶん、それがピヨリをカモにするという作戦なのだろう。
ピヨリはその全貌について知っていたが、知らぬふりをした。
そうしていつの間にか、学校についていた。
靴箱で、自分の上履きに履き替えているときに放送が流れた。
『3年G組願先ピヨリ君、今すぐ職員室に来てください」
物理担当教師の榎田義人がピヨリの名前を呼んだのだ。
「うわ、名指しで校内放送されたよ。なんかやっちまったかな」
「行ってこいよピヨリ。オレピーは先に教室に行ってるわ」
「ああ、分かった」
そう言ってテルモとピヨリは別れた。
ピヨリは職員室に行く途中二階にある校長室の前に立ち止まる。
「見てろよ校長、あの時の借りはしっかり返させてもらうぜ」
そう誓って、ピヨリは再び職員室の方に向かう。
「失礼しまーす。先ほど校内放送で呼ばれた願先ですけど」
扉をスライドして中に入った。
職員室に足を踏み入れると分かったのだが、恐ろしく静かだった。
それもそのはずだ。
なぜなら職員室には、人一人居なかったのだから。
「ハァ……? 意味が分かんねぇ……いや…………まさか、これは俺をおびき寄せるための罠!?」
高速で脳を回転させ、即座に答えに至った。
「クク、よく見破ったよ願先君」
天井から声が降ってくる。この低くダンディな声は――――
「――校長!?」
そして上の階でなにか巨大なものが天井を殴った音がした。
そして、横から違う男性の声がする。
「逃げようとしても無駄ですよ。この辺一帯私が”切断物体”(スラッシャー)で全て切れ筋を入れていますから。」
隣から声がしたので反射的に振り向いた。
「てめぇは、榎田!? お前もまさか平和維持ボランティア会の組員だったのか!?」
ピヨリはバックステップで榎田から十分に距離を取り、社会の窓を開けようとチャックに触れる。
「ああ、そこも危ないですよ」
榎田が発したときには、すでにピヨリはチャックに指を触れさせていた。
「いっ」
チャックを触った瞬間、指の腹がスパッと切れた。
「だから言ったんですよ。私が触れた物体ならすべて刃物のようにする能力で、君のチャックを予め触っていたんです。気づきませんでしたか?」
榎田は生徒からは空気と呼ばれるほど存在感がなく、故にそれが武器としてピヨリのチャックに触れたのだろう。
校長が天井から降りてきた。屁の魔人を二人従えて。
「君は最近調子に乗りすぎのようだ。会長がずいぶんとお怒りになっている。反逆者を潰せと言う命令が、つい最近下ったよ」
「”音速秘部”(ソニックマラー)ァァァアアア!!!」
ピヨリは校長が話している途中に、”音速秘部”を放った。
社会の窓が開かれていなかったので、無理やりメリメリメリ、バキッとファスナーが壊れる音がした。
校長目がけて秘部が音速の速さで伸びる。校長に使うのはこれが初めてだ。
進化したピヨリの秘部、食らいやがれ。
しかし、即座にけんじ(屁)が手で校長を守る。
まっすぐ伸びていた秘部が、屁にあたり進路を変えてどこかに飛んだ。
「な!? 屁を貫通できねぇだと!?」
ピヨリは驚くと、校長はフッと鼻で笑った。
「中々レベルアップしたようだね、願先君」
ありえない。”伸縮する秘部”(ロングマラー)の頃とは明らかにピヨリは強くなったはずだ。
こんな簡単に『神越』を攻略されるなんて……
「今のは”穴からの来訪者”(ヴィジター・オブ・バタム)の屁の膜さ! いくぞけんじ(屁)!」
けんじ(屁)が伸びてピヨリに殴り掛かってくる。
ピヨリは瞬時に走り出し、窓を割って二階から飛び降り、空にダイブする。
よろめきながらも、なんとか着地した。
「はぁはぁ、なんとか逃げたぜ。先にテルモに連絡だ」
ピヨリはポケットから携帯を取り出してテルモに電話をしようとする。
「そういや俺はもう反逆者も標的にされてるんだよな。じゃあ仲間なんかじゃねぇ。あいつらも敵だ。だったら反逆者も校長達と一緒に血祭にあげてやろうじゃねぇか」
ピヨリは愛にメールを送ってから職員室に向かった。




