22話 フランソワ
昼休憩。
昼飯を食べ終わった後、この休憩時間に愛とテルモを呼んで階段で談笑していた。
「なあ、それよりもさ、平和維持ボランティア会って知ってるか?」
話の途切れ目だったので、タイミングを見計らって二人に尋ねてみた。
「ん? ああ俺たちもすべては知らねぇが、知っているぞ」
「何か気になることがあるのか、ピヨリ?」
テルモは鋭い眼光でピヨリを見据えた。
「ああ、少しな」
ピヨリはテルモに見透かされたように感じたので素直にうなずいた。
「そうか、じゃあ久々にあいつのところに行くか」
「あっ、フランソワ先輩のとこですね!」
愛はそのことを理解したようで、二人はピヨリを置いて階段を下りていく。
「お、おい、どこ行くんだよ! 誰だよフランソワって!?」
二人が階段を下りていく背中を、ピヨリは慌てて追いかける。
「コンピューター室ですよ。フランソワ先輩は3年B組の人ですよ? 知らないんですか? 彼、情報家としては結構有名ですけど」
「いや、知らない」
愛が説明してくれるが、今いちピンと来なかった。
「いや、知らなくて当然だろう。あいつは学校に来てもずっとコンピューター室に籠っていて、授業に顔を出すのも極稀だしな」
そういう話をしているとコンピューター室へと着いた。
テルモはコンピュータ室の扉を開け、ズカズカと入っていく。ピヨリも愛に続いて中に入る。
中には一人の男が座っていた。
コンピューター室にはしーんとしていて、パソコンの駆動音だけが微かに聞き取れた。
「よォ、久しぶりだなフランソワ」
テルモがPCの画面を凝視している男にしゃべりかけた。
「おぅ、久しぶりだな、てっちゃん!」
フランソワと思われる強面な男がテルモの顔を見た瞬間に、パァァ、と主人に懐いている子犬の如く表情が和らいだ。
その風貌は野球部と言われても可笑しくない綺麗に剃られた坊主頭に、浅黒い肌。高校生がこんなものをかけていいのかと思われる、いかついサングラスをかけている。
ヤクザの幹部、みたいな風貌だ。
「今日は用があって来たんだフランソワ、平和維持ボランティア会って知ってるか?」
「平和維持ボランティア会? 知らないな。少し調べてみよう」
そう言い、フランソワはものすごいスピードで三台のPCをタイピングする。
30秒ぐらいした後で、フランソワは画面から目を離した。
「『平和維持ボランティア会』。一般人は『神の能力』を宿した時点で、もう一般人ではない。『神の子』だ。つまりそれは超能者のようなもの、そんな代物がこの複雑な現代社会にあると、確実に全世界でパニックが起こる。平和維持ボランティア会は、表向きはボランティア活動をして世間を欺き、裏では『神の能力』者を、社会の裏で密やかに保護、……いいや隔離、処理、しようとするチームだ。世界で起きる神隠しや、失踪事件、殺人事件にこの組織が関わっているという噂は絶えないようだな」
フランソワが1分ほどの間に調べたことをさらさら述べる。
「なあフランソワ。俺からも一つ聞いていいか……?」
「ん……? 誰だあんたは」
そこで視線を初めてピヨリに向けた。
「俺は願先ピヨリ。反逆者の新メンバーってところだ……」
「ほぉ、てっちゃんが新メンバーを加えたと聞いていたが、お前だったのか。良いだろう、今回は特別サービスだ。何でも聞いていいぞ」
フランソワはニッ、と笑った。
「フランソワは何でも調べられるんだよな? だったら、とりあえずジョージ=カォツマと、狩野祈について教えてくれ」
「OK」
そう言って、クルリと椅子を回してPC画面に向き、カタカタカタカタッと再びすさまじい速度でキーボードを叩いていく。
1,2分経ったところで、ピヨリの方を向き、語りだす。
「ジョージ=カォツマ。彼は平和維持ボランティア会の6番目の幹部だ。だが殉職し、その後釜が狩野祈という男になっている。祈の部下はヤクザのチンピラ集団みたいなものらしい」
「ああ、ありがとう。じゃあ最後に俺の親父、獅子王大助について教えてくれ」
「了解」
カタカタカッターン、とキーボードを叩き、身元を調べ上げる。
3分ほどして、
「ふぅ……駄目だ。獅子王大輔はもともと人気俳優だ、ってことぐらいしか分からん。それ以外の情報は国家機密級のガードの固さだぞ」
「そうか……」
駄目だったか。フランソワ程の奴でも親父は調べられなかったか。
「って、もうすぐ昼休憩が終わるじゃねぇか」
テルモが時計を見て、慌てだす。
「ありがとよフランソワ、また来るぜ」
「おぅ、いつでも頼ってくれて構わんぜ」
フランソワは手を振ってバイバイしたら、また画面に向き直った。
「あっ、ホントですね。それじゃあ次は放課後にでも」
「いや、ちょっと待てよ愛。オレピー等で次の授業フケろうぜ」
仮にも愛の一つ年上のテルモが、そんなこと言っていいのかよ、とピヨリは心の中で突っ込む。
「もぉ~テルモ先輩ったらダ・イ・タ・ン? でも不純異性交遊になりますから駄目ですよっ☆」
愛は男に媚びるような声を出しながら上目づかいで言う。
ピヨリは口にしないが、かなりキテいた。
テルモは頬を紅潮させ、ドギマギしているようだった。
「バカか、おまえ、つーかまずどっから不純異性交遊出てきたんだよ!」
「冗談ですよ~! それでは先輩方! また放課後にっ!」
愛は可愛いらしい敬礼(`・ω・´)ゞをしてから教室に走って行った。
「テルモ……お前後輩にからかわれてどうすんだよ」
「それはもういいんだよ。そんなことよりピヨリ、屋上でいいか?」
「結局フケるのか。まあいいけど」
ピヨリとテルモはチャイムが鳴っているのをスルーして屋上に向かった。
テルモと階段を上げって行き、扉を開けて屋上に出た瞬間、すごい風が吹いた。
「おぅ、今日は風がすごいな」
「ああ、そうだな。まあ座ろうぜ」
ピヨリとテルモは風よけできる場所にケツを下ろす。
「で、ピヨリ、お前は具体的にどこで平和維持ボランティア会っての知ったんだ?」
「いや、だから祈の携帯のお守りにそう書かれてたっていっただろ」
「そうか」
ピヨリが説明した後、テルモは少し黙り込む。
そうして、少し経った頃に口を開いた。
「一応説明しておくか。世界にはな、組織やチームがいくつもあるんだよ」
ピヨリは黙ってその話に耳を傾けることにした。
「反逆者もそうだ。こういう組織やチームが当然に存在する世界のことを”裏の世界”と呼ぶ。例えば、テロリスト集団の『てろり』や、表向きはいいことをしている様に装っていて、裏では平然とえげつないことをやってのける『平和維持ボランティア会』とかな。今説明したチーム以外にも、挙げ出すとキリがないのでここら辺でやめとく。”裏の世界”の全組織が世界征服や世界の混乱・破滅を望んでいるんだ」
「え……? つまり反逆者もそこに入るのかよ!?」
「もちろんだ。オレピーが反逆者を作ったのもオレピーが世界を征服するためだからだぜ。世界を征服するなんて男のロマンだろ?」
それがさも当然のように話すテルモは、空を見上げて微笑んでいた。
「……反逆者の皆も、その意見に賛同しているのか?」
「まあほとんどな。オレピーが言っていいのか分かんねぇけど、愛は生き別れになった姉を探すためにどうしても力が必要らしい。莉乃は新しい自分をみつけたいからだったっけな」
「新しい……自分ね」
「そういや、お前のは聞いていなかったな。教えろよ」
テルモが少し語尾を強めて言った。
「俺もだ……俺も世界征服をするのが目的だ。世界征服をする途中で、親父を殺し、狩野祈を殺し、妹を助ける」
「ハハハハハハハハハ!! いいじゃねぇかよピヨリ」
鋭い眼光をギラつかせながら笑って言う。
「おう、そうかよ」
ハハハハハとテルモはずっと笑っていた。




