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16話 音速秘部

――――反逆者リベロ地下アジト――――




ピヨリは2日ほど、大きな怪我で修業を休んでいたが、また再び今日から修業の日々である。


大怪我。それは本当に大怪我だった。全治何か月~1年何か月のほどの傷を、たった2日で治した。

普通ならたったの2日で治るはずがない、そう思うかもしれない。

なぜ、ここまで早い回復だったのかというと、ピヨリの想い人、桃尻莉乃のおかげだった。



桃尻も実は能力者で、世にも珍しい『特殊変換能力』を扱う。


能力名は”細胞活性化唇”。この能力は、自身の唇でKISSしただけで体中の傷ついた細胞を修復することができる。(同一人物に対して五日に一回)


言うまでもなく反逆者リベロで回復担当として貢献している、立派な組員だ。

戦いの負傷者はすべて桃尻に癒してもらっている。


今回の戦闘でのノリシゲ、笑美子、ピヨリの次に負傷が激しかったテルモも今ではピンピンしている。



ピヨリはこの二日間、桃尻にKISSされる己の姿を妄想して、つい口の端が緩んだ。


「オイ、ピヨリ。お前ちょっとなまけてんじゃねーか?」

不信そうに言う。


「いや、そんなことねぇよ」

テルモが指摘するが、ピヨリはニヤケている。



「オラ、タイム測るぞ」


ズボンを脱いで、パンツから秘部をデロン、と出す。



とりあえず顔のニヤケが落ち着いたところで、修業を再開する。


「オラァ!」


修業用の大きな岩石へ、的確に秘部をブチ当てる。


テルモがストップウォッチのタイムを見て、


「3秒49か。まあいいだろう、合格だ」


『合格』という意味で、自身の人差指と親指で○を作った。


「良し、ピヨリ。次は『神越の能力』の”音速秘部”(ソニックマラー)を出してみろ」


とテルモは言った。


どういうことだ?


「何言ってんだテルモ? 俺が『神越の能力』を使えるはずがないだろう……?」

当たり前の疑問を投げかける。


「ピヨリ。お前本当に三日前のことを覚えてねーのか? まあ無理もねーか」



なんだって!?



「オイ! どういう事だよ! 教えろよテルモ!」

テルモが意味深なことを言うのでピヨリは口調を強くして訊きただした。


「そうだな。正直に言うと、お前はもう『神越の能力』、”音速秘部”(ソニックマラー)を習得しているんだ」


「えっ!?」

ピヨリは心底驚いて大きな声が出た。


ピヨリが驚いているのを傍に、テルモは構わず説明していく。


「お前の『神越の能力』”音速秘部”(ソニックマラー)は音速で秘部を伸ばすことができる。お前が川口戦で、窮地に追い込まれたショックが原因で、無自覚に『神越の能力』を発動させたんだろうな。瀕死の状態から無理やり発動させたから、一部の記憶を失っているのは十分有り得ることだ」


テルモが懇切丁寧に説明してくれるが、ピヨリは話について行けなかった。



「い、意味がわからないんだが……? じゃあ、川口を倒したのは一体誰なんだ……!?」

必死に記憶の切れ端を探すが分からない。


ピヨリが頭を抱えて記憶を整理していると、エレベーターが開き、中から女性が足早にこっちに来た。


笑美子だ。

笑美子はどこか、笑いを堪えているような表情をしていた。


「どうした?……笑美子」

テルモが笑美子に尋ねる。


「あのね、ここ最近テレビで川口が死んだってニュースがやってるの知ってる?」


「オレピーは普段をテレビを見ねーから知らねーな」


「そのニュースでね……プッ」

笑美子は噴き出した。


「川口を殺した凶器が、未だに分かっていないんだって(笑)ニュースキャスターは『左穴に謎の穴、凶器は何だ?』とか言ってた。そんなのピヨリ君のアソコなのにね。アハハハハハハハハハ!!!!!!!!」


最後の方は爆笑していた。



「お、……俺が川口を殺したんですか……?」

ピヨリは少し震えた声で言った。


「ああ、そうだぞ」

テルモがさも当たり前かのように言う。


「この世界では殺しが当たり前だ。さっさと慣れろ」


「そ、そんな……!」

ピヨリは狼狽える。


今度はさっきまで笑っていた笑美子が、急に怖い顔になって言う。

「テルモの言うとおり、そうしなきゃ普通に死ぬわよ? ……この世界は漫画みたいに甘くない。主人公補正もない。らなきゃられる。あんたが思ってるほど甘いものじゃないわ」

ヘタレているピヨリにそう吐き捨てて、笑美子はエレベーターに乗って帰った。



テルモもピヨリに背中を向けて歩き出す。


「そうだぜ。オレピーも昔は、殺しが嫌だった。だがそんな甘いことは言ってられない。笑美子が言うとおりさっさと慣れろ。”音速秘部”(ソニックマラー)修業忘れんなよ。じゃあな」


そして、テルモもエレベーターに乗って上に向かった。





「畜生、なんだよあいつら。人を殺すのが当たり前だと!? ふざけんなよ!!!!!!!!」


人を殺す? 相手を虜にするのならまだ分かる。だが殺人まで行くと、それはただの犯罪じゃないか。それ以前に人を殺していて己が平然としている方が怖い。

あいつらは人間じゃない。人間の皮を被った悪鬼だ。人殺しの鬼どもだ。俺はあいつらみたいにならない。俺は正常だ。俺は人間だ。


「俺は人間だァアアアアア!!!」

叫ぶ。



息を継いで、再び叫ぶ。

「人間なんダアアアアアアアアアアアアアアアアアア」



その時、川口を殺した時の映像が頭に流れ込んできた。


「う、あ、ああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

そうだ。殺した。殺したんだ。秘部で。心臓を貫いて殺した。あっけなく死んでいく川口。

ピヨリは見た。川口が『人間』から『もの』に変わる瞬間を。

命乞いをしていた。まだ死にたくないと言っていた。愛する妻と娘がいるから死ねないと言っていた。涙を流しながら許しを乞うていた。

――だが、殺した。

ほんの一瞬、ほんの刹那、ほんの瞬く間に、川口はその生命を散らした。

誰が殺した。

ピヨリが秘部で殺したのだ。





「HA、HAHAHA、HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA FUCK!! FUCK!!」

ピヨリは気が狂った。


「ハハハハ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッハ!!!!!!!!!!!」

ピヨリは雄たけびを上げながら、腹から叫んだ。


「”音速秘部”(ソニックマラー)ァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」


自身の耳朶を打つすさまじい叫声。

人間の眼球で追いつくことができないほどの速さで、岩は貫通されていた。


岩は綺麗に真ん中だけくりぬかれていた。


「フハハ、ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」


「そうだ、親父も殺そう。お袋のためなら殺してやろう。お袋も天国で喜んでくれるはずだ。ハハハ!」



その夜、明け方まで音速秘部ソニックマラーの練習し、ピヨリは自分の秘部を熱っぽい視線で眺め続けていた。

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