9話 神の能力
目的に至る道を歩き始めてから10分は経っていた。
依然、校長からの追っては無い。
ピヨリと愛は住宅街からその奥、質素で目立たない場所まで来ていた。
もうここからは部利一高校は見えない。
この辺りには目立たない家と、不気味な木々が立ち並んでいる。
どこかで見覚えのあるような気がした
アジトって徒歩で着くところなのか……と色々疑問に思っていたが、
やがて無言に耐えられなくなったピヨリは痺れを切らし、愛に話しかけた。
「水面、この能力のことについて教えてくれないか?」
実はこれを聞くことが一番重要だったのかもしれない。
愛はピヨリの顔を一瞥して、「分かりました」と言った後、「長い話になります、いいですか?」と言ったので、ピヨリは躊躇わず頷いた。
「まず、この様々な能力を全世界の人間は、皆内に秘めています。能力者とは、その才能を引き出せるか引き出せないかの問題で、全人口の7割が、この能力の存在すら知らぬまま、この世を去っていきます」
「つまり全員、この能力を引き出す素質があるってことか。……で、その引き出す条件ってのは何なんだ? 俺は特別何もしていないが……」
「能力の発現方法は三つです。親から子への遺伝で、心身の成長と共に能力が開花するパターン、ヨガや長年の修行で開花するパターン。そして窮地に追い込まれたときに発動する、自我を守る防衛本能が爆発的に進化する時、です。ちなみに私は窮地に追い込まれたときが、能力を発現しました」
「そうなのか、じゃあ俺は遺伝ってことだ」
ということは、親父があの意味深な話をしたってこともあるから、親父も能力者だったってことか。それを受け継いで俺も能力者に……
「この能力の名称は『神の能力』。人の身にて神の力を授かり、それを引き出した選ばれし者たち、と言ったところです。自身の体内に少なからずある、気やオーラ、チャクラなるものを神の能力に変換して発現します。 そして、発現する能力の種類は千差万別ですが、大きく分けて五つに分類できます」
「発現者の50%が『体質変換能力』。 これは自分の性質を変えたりメタモルフォーゼすることです。私や願先先輩の能力もこの能力に該当します」
「二つ目が、『生物変換能力』。決められた生物、動物、に決められた能力を付加することができ、その生き物を自分の意のままに扱います。これが全体の20%ぐらい」
「三つ目が、『自然変換能力』。この世にある自然物、自然現象を操ったり、自ら生み出すことができます。これも全体の20%ぐらい」
「四つ目が、『物質変換能力』。物体や無機物に能力を宿したり、自分自身を変えることができます、……そうですね、これは……うーん…………限りなく10%に近い9%…………ですかね……?」
最後に愛は照れ笑いしながら言った。
「どういうことだ?」
不思議に思って聞いてみた。
「ハイ、最後のは『特殊変換能力』。これは一億人に一人、つまり0.000001%しか発現しません。……この能力に関してはまだまだ未知数で、実は私もあまり良く分かっていません。……ただ一つ言えることは、稀少だからと言って、必ずしも強いと言うわけではありません」
以上です。と付け加え、愛は説明を終えて一息ついた。
そこで愛は足を止めた。
「アジトに到着しました」
と愛は言い、いい所で話が中断してしまった。
「お、おう。……って、…………アジトって大層なこと言うから期待したけど、ここただの家じゃねぇかっ!」
目前にあるのは、どう見てもただの家にしか見えなかった。
あまり手入れされていない庭と、この家の表札が見える。
「……岡松……? どっかで聞いたことあるような……」
この苗字……まさか――?
「そうです、ここは願先先輩のご級友。岡松テルモ先輩の御宅です」
ピヨリはまさかあいつが……と体育の時間にゴリラの真似をしたテルモの顔を思い浮かべた。
驚愕に満ちていたピヨリをよそに愛はインターホンを押した。
家に音が鳴り、時間が待つ。
10秒後に、男とも女とも取れる声がした。
「行きましょう」
茫然と立ち尽くしていたピヨリは、ハッと我に返る。
愛はもう、扉前まで来て、ドアを開けようとしていたところだった。
ピヨリは小走りで駆けていき、愛は無言で扉を開け、一緒に家の中に入る。
「……おじゃましまーす」
ピヨリは弱々しげな声で挨拶しながら、愛の背中についていく。
愛はそのまま奥まで真っ直ぐ進んでいき、リビングに入った。
リビングには先客がいた。
普通の家庭より少し大きめのリビング。ソファには大学生風の男女のカップルが座っていた。
そしてキッチンには紅茶を片手に、ティーを楽しんでいる男がいた。
――テルモだった




