夢
鑑の中に映る自分。そこにはアリスの姿が映っていた。いつものひょろっとした体つきで、顔も平凡的な神屋勇太の姿はどこにもなかった。
その日はもう何も考えることはできなかった。
神屋勇太は、鏡森高校に通う高校一年生。部活は卓球部でそこまで強くないが、自分なりにがんばっていた。友達もいるほうで、一応幸せな青春を謳歌していた。
そうだったというべきか。
世界が変わってしまった。そのことに勇太は薄々気づき始めていた。
家に帰ると、アリスの顔をした母が迎え入れ、さらにアリスの顔をした妹、母と食事をし、しばらくするとアリスの顔をした父が家に帰ってくる。
何がなんだかさっぱりわからない。
ただ、唯一の救いは、変わったのは容姿だけだということか。性格や、言語はいままでのまま。
いつから変わったか。それは一つしか考えられない。
あの夢だ。
俺が殺されたあの夢から。
いや、もしかしたら、あれより前、俺がアリスではなかった世界もすべて夢だったのかもしれない…。
「ねえ、ゆーた、なんか最近変じゃない?」
それから、約一週間俺は普通に生活をした。この世界を受け入れることにしたのだ。だが、心に空いた大きな穴は埋まらなかった。
そんな時だ、アリスが俺の異変に気がついたのは。
「うん、ちょっとな」
俺はそうマリーに呟く。
それから、また空を見る。
「困っていることがあるなら、私達に相談してよ。友達でしょ?」
その横には、私の四人の友達。だが、その顔は皆同じだ。
「実は…」
そして俺は話始めた。
それがすべての始まりと知らずに…。