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44人のアリス
44人のアリス。
その事実に数秒動けずにいた。
どういうことなんだ?
「どういうことって、ゆーた、どうしたの?」
不思議そうにアリスはそう答える。そのアリスが本当に自分の友達かどうかも不安になってくる。
「なんで、この教室には、おまえしかいないんだよ!」
俺は張り詰めた声で、アリスにそう迫る。すると、アリスは怯えた声で返す。
「どうしたの?ゆーた?なんか、おかしい…。人間がみんな同じ顔だなんて、いつものことでしょ?」
声にでない驚きが体を襲う。『人間がみんな同じ顔』だって?
俺はアリスの手を引き、急いでお手洗いに向かう。
トイレの前の角を曲がり、またしても驚愕する。
そこには女子トイレしかなかったのだ。いや、それはいいのだが、つまり男子トイレというものがなかった。
「ねえ、アリス。男子トイレは?」
「男子ってなに?」
しかたなく入った女子トイレの鏡にはアリスが2人映っているだけだった。