6話 奴隷商人
異世界3日目
朝ソフィアの体を拭きながら謝った。
「ソフィア、その、すまん」
「いえっ、そのっ、すごかったです。」
頬を染めてそんなことを言ってくれた。襲いそうになるのを我慢する。
それでもその表情の中に疲れが見える。昨日は気絶するまでしたからなあ。
村の人間も盗賊の一件で俺のことを認めてくれたのかソフィアがついていくことに反対はしなかった。
一部の男どもはまた絶望していたが。
俺のことが怖くないんだな。俺は、殺してもあまり罪悪感を感じなかった自分が怖かったのに。
確かに俺は、必要なことに躊躇はしない性格だったが殺しを平然とするとはなあ。
今は、王都への街道を進みながらこの世界について隣を歩くソフィアに聞いていた。ソフィアもほとんどあの村を出ることがなかったので、あまり村の外のことはあまり知らないらしい。
話を聞くと大陸の中央は、人間の国が多く外側のほうは、人間の国が少なく亜人の国が多いらしい。
今いる国の話になるとソフィアの顔が少し曇った。話を聞いてみると、この国の名前はグーロム王国またの名を『奴隷王国』つまり国が奴隷を推奨しているのだ。
王もかなりの愚か者らしく奴隷を得るために、戦争を起こすような王で、他国の民どころか自国の民にも嫌われているらしい。
だが他の国の支配者階級は奴隷を手に入れられるので黙認している。表立って反対しているのは、クイント皇国だけであるらしい。
クイント皇国の王は傑物らしく国力も大きい(協力関係を築くならクイント皇国か)。魔物の大侵攻は、俺だけでは無理らしいから国単位の協力が必要不可欠だからな。
クイント皇国を中心に何とかならないだろうか。
「この世界は、本当にだめそうだな。」
「はい、今大侵攻があれば簡単に滅ぶでしょうね。」
今日は暗くなり適当なところで野宿になった精霊達のおかげで野宿も快適だ。警戒もしてくれるし。
そうして、次の日
異世界4日目
「なあソフィアこいつらって」
「はい、奴隷商人と子飼の傭兵といったところでしょう」
俺たちは、ガラの悪い傭兵崩れに囲まれていた。商隊が前から来たと思ったら、傭兵崩れが出てきて、いきなりこれだ。
「そんで商品は、あの馬車の中で俺たちもそこに入れと」
「そうでしょうね(気の毒な方たちですね、まあ自業自得ですが)」
ソフィアは、かわいそうな人を見るような表情をうかべた。俺が手加減しないのがわかっているからだろう馬車から豚が出てきた。
「おまえらも今から私の奴隷だ。ぐふっぐふっ」
気持ち悪いやつだな。喋るなイライラする。
「気持ち悪い豚だな」
口が滑った。
「なんだと貴様!!おいお前たち男は殺してかまわん」
沸点の低いやつだ。
丸腰だと侮ったのだろう傭兵が剣を抜こうとしているがのんびりしたものだった、と思ったらその傭兵が吹っ飛んだ。
ただの風の精霊を使った突風だ殺傷能力はない。これで時間も稼いだ。
「なっ、精霊術師だと」
その吹っ飛んだ男が立ったところで
「『風刃』」
腕を横に薙いだ。
とっさにしゃがんだ二人以外の奴隷商人と傭兵の首が風の刃に切り飛ばされた。
お、避けたよ、見えないはずなのに。よけた内の一人が切りかかってきた。
「まて!」
もうひとりが止めようとするが、俺は半身になって剣を避けて、風を纏った左手で剣を右手で顔を掴んだ
「なに!」
剣を握ったのに驚いたのだろうはい時間切れ。
「『流雷』」
バチィッ
顔を掴んだ右手から電流が流れ男は気絶した。もう一人の男が悔しそうにしていたので。
「気にするな、殺していない」
「えっ」
「俺の質問に答えれば逃がしてやる」
少し困惑していたが。
「わかった」
敵意がないことを示すためだろう男はその場に剣を置いた。
「何でも聞いてくれ」
「なぜ奴隷商人の護衛をしていたんだ?」
「えっ、どういうことですか?」
ソフィアが驚いていた。
「この二人は、ほかと違う感じがした。」
実際格好からして傭兵もどきとは違った。装備にしっかりと手入れもしているようだし、何より質が違う。
「ああ、俺たちは冒険者だ」
「・・・冒険者がこんなことを」
ソフィアが蔑んだ目で見ていた。冒険者が慌てて
「いや、俺たちは商隊の護衛を受けたんだ。それが奴隷の運搬にすりかえられてて前金を使ってしまっていて下りることができなかったんだ」
「そうだったんですか」
ソフィアの表情が和らいだ俺は苦笑して次の質問にうつる。
「なぜ冒険者を雇っていたんだ?」
「運んでいたのが、高級奴隷と戦闘奴隷で結構な額で用心のためだったらしい」
「奴隷を解放するには、どうすればいい?」
「マスターキーを使うか、主が開放するしかない、キーは購入者の所にあるしだろうし主は君が殺しちゃったから」
冒険者は残念そうに
「中の二人は助けられないと思う」
ソフィアが悲しそうにしていた。だが今はは話せない、これはあまり公にはしたくないのだ。
「そうかありがとう。俺はジンこっちはソフィア、俺の女だ。」
ソフィアが頬を染め、ジークは羨ましそうにしていた。
「ソフィアです。先ほどは、失礼しました。」
「俺はジーク、冒険者だ。」
「ジークは中の二人について知っているのか?」
「いや、顔もしないな。」
それなら問題ないだろう。嘘をつく必要もないし。
「中の二人とやらは俺に任せてくれ。ジークは仲間を王都に運んだほうがいい」
「そうだな」
ジークは、仲間を荷物のように馬にくくると
なんか扱いひどいな、ほかにもないかやらかしているのか?
「本当にありがとう仲間を殺さないでくれて、王都に行くんだろ?」
「ああ」
「じゃあまた会えるかもしれないな」
「かもな」
そしてジークは去っていった。
あれは、前振りだろうか。