エピローグ 獣人の国へ
異世界390日目
二度目の侵攻まで後1170日
クイント皇国の皇都にあるジンの屋敷の玄関
「パパぁ~~~」
「ぐす、・・・・お兄ちゃ~ん」
小雪とフェリスが、ジンの袖を掴んで泣きついていた。
「なるべく早く終わらせるから。頼むから泣かないでくれ」
二人を困った表情で宥めているジンの姿は、父親か年の離れた兄のようで周りの女達は、その姿を見て和んでいる。
この場にいるのは後発組の、
カメリア姫、トウカ姫、ソフィア、ミリア、フェリス、カイル、ジークにジニィー率いる『メイド隊』三人を加えた10人のチームと、
屋敷居残り組の
小雪、クレア、シャール、ルーテシア、キュリア、ウリアの6人が見送りに来てくれている。
といってもルーテシアは隅っこにいる。
それ以外については
今から数日前
ジンは先発組を見送っていた。先発組みは、アルシナ、ファーラ、アリシャ皇女、クリス王女、聖騎士シャルロット、イリヤ、レティーシア、にディア率いる『メイド隊』三人の合計10人だ。
「皆気をつけるんだよ。」
「大丈夫、少しは鍛えた」
無表情で拳を握って見せるアリシャ。ある意味アリシャが一番心配なのだが、よく皇都を出ることを許されたな。
「英雄様、私はこの旅で強くなってみせますわ。その時はお側に」
「シャルロット卿、それはわたしとて同じだ。」
シャルロットの艶っぽい声にアルシナの凛々しい声が重なる。二人がジンの腕に左右から絡む
「シャルロット!」
「お姉様!」
その二人に親しいクリス王女とファーラが二人を引き離す。
クリスは、
「シャルロット、私を差し置いて何をしている」
ファーラは、
「お姉様離れてください。穢れてしまいます。」
と内容は正反対だった。
「気をつけて行くんだよ。」
「「「ハーイ」」」
「ファーラも気をつけるんだよ。」
「な、なんで私まで?」
「可愛いからだな」
「なっ」
ファーラの顔が赤くなる。貴族の割には賛辞に耐性が無いようだ。軍人気質なのだろうか?
「うっ・・・・言われなくても、・・気をつけるわよ」
照れながらも返事をするところが可愛らしい。
「そうか、それじゃあ皆行ってらっしゃい。」
「「「行ってきます。」」」
「行って・・・きま、す」
ファーラも小さく返事をしてくれたのがちょっと嬉しい。
こうして先発が、出発したのが3日前だ。行き先は多種多様の獣人が集まる国、ルクラルート郡国だ。
ジンの行き先でもある。
そして今日が、ジンとテツの出発の日だ。
今日はキリ、ユリ、ティリエル、リリスのチームも一緒に出発する。このチームは、キリとユリの里帰りと小人族を連合に参加してもらうための大使の二つの意味合いがある。小人族の国にはストルもいるからあまり心配はしていない。
小人族の国が遠いため移動速度重視のチーム構成だ。
この6人が見送られる側になる。
そして見送りに来た小雪とフェリスが泣きだしてしまったのだ。
なかなか泣き止まないので
「最後の手段だ」
ジンは、泣き続ける小雪の口にキスをした。小雪が驚いて泣き止むがすぐには解放せず息が続く限りキスを続ける。唇を解放すると
「パパと・・・キスしちゃった」
顔を真っ赤にして小雪が口に手を当てる。
ジンは、次にフェリスの唇に吸い付いた。今度は唇の間に舌を入れて口内を舐め回す大人のキスだ。
「あむ・・おにい・・・」
長い大人のキスが終わった時のフェリスの顔は蕩けきっていて、口の端からよだれが垂れている。
「少しだけ俺に時間をくれ」
「「うん」」
さっきまでとは打って変わって素直に頷く二人。
「ありがと、愛してるよ」
ジンは何事も無かったかのように他の女に話しかけていく。
「クレア、シャール、離れの建築のこと頼んだよ。」
女達も何事も無かったように返事をする。
「任せてください」
「まあほどほどに頑張るわ」
二人には離れの建築を頼んでいた。ジークとカイルの家になる予定だ。今の環境では肩身が狭いだろうし、女も連れ込めない。
これから、もしも!男がこの屋敷に来ることになったら離れに住むことになる。二人に聞いたら、是非にということで建築が決まった。
ジンが80万ギル出して残りはジークとカイルが負担した。
225万-80万=145万ギル
「行ってらっしゃいお兄さん。私も後で行くからねよろしくね。」
カメリアが見送りの言葉を掛けてくれる。それにしてもお兄さんが定着してしまったな。
「ご主人様お気をつけて」
「ジン様はテツさんと二人だけで行くのですから慎重に行動してくださいね。」
「ご主人様、怪我しないでくださいね。」
ミリア、ソフィア、イリヤが名残惜しそうに声をかけてくる。後発組には、元奴隷獣人を郡国へ護送する任務があるため出発が遅い、再開するまで日があるからだろう。
「小雪も頑張る」
小雪が居残り組なのは、小雪がこの世界に来たばかりで、身体能力が見た目道りの幼児並みだったからだ。そこで屋敷に残るケティー率いる『メイド隊』と、一緒に特訓することになったのだ。頑張るとは、その特訓のことだろう。
「そうだな、頑張ったらご褒美をあげよう」
「やった~」
フェリスが寂しそうに見るので頭を撫でながら
「フェリスの料理が食べられないのは残念だな。」
「お兄ちゃん。私も料理の腕上げておくから楽しみにしててね。」
「ああ、楽しみにしてるよ。そろそろ行くことにする。テツ不自由させる」
「構いません、主」
テツには、ルクラルート郡国では、まだ目立ちなくないから、人目があるところでは刀の形態を維持するように頼んでいる。そのため会話するのにも気を使うことになってしまったのだ。
「じゃあ行ってくる」
「「「「行ってらっしゃいませ」」」」
ジンは小人族担当のチームと共に、屋敷を出た。
皇都を出た辺りで
「四人とも先に行くね」
ジンが別れを告げた。
「もうですか?」
「意地でも付いていくって言ったら」
「すまん絶対についてこれないんだ」
「えっ」
一同びっくりする。ここにいるのは空を飛べるティリエルとチーム内最速のリリスがいるのに絶対についてこれないと言うのだ。
「聖痕を使うんですね」
理解したユリが確認のための質問をする。
「その通り」
「「ご主人様!」」
突然小人娘の二人が腕を掴んできた。
「ど、どうした?」
「私達にもキスしてください。小雪ちゃんには、やってたじゃないですか」
「そうです。私達だけまだキスしてもらっていません!」
確かに二人には、そうゆうことはしていないことに気付く。また、二人を子供扱いしていたようだな。
「わかった。つまり、二人は大人のキスをご所望なんだな」
ジンはそう言うとキリを抱き上げて唇を重ねる、もちろんそこでは終わらずフェリスと同様に口内を弄り回した。
次にユリも同じようにキスをする。待ち構えていたのだろうユリは、積極的に舌を絡めてきた。
ユリとのキスが終わると惚けているキリの唇をまたしても奪った。
「ご主人さ・・・あむ、んっ・・・」
その後もジンは二人の唇を交互に奪い続けた。30分が経過した頃
「「・・あっ、・・・あ、あ・・・」」
二人はピクッピクッと痙攣するまで口内をジンに弄られて、地べたに座り込んでいる。
「お兄様」
「ジン」
ティリエルとリリスの艶っぽい声が後ろから聞こえる。
二人にもたっぷりサービスをする。二人は行為に慣れているから座り込んだりはしなかった。
「そろそろ、行かないと」
「行ってらっしゃいませ、お兄様」
「頑張ってね、ジン」
キリとユリには、刺激が強すぎたのか、まだしゃべれないようだ。
「小人族の件頼んだぞ、雷の聖痕発動『雷神』、『瞬雷』」
リリス達の前からジンの姿が消えジンは、獣人の国へ飛んだ。
『瞬雷』は、使用者を雷化して瞬間移動と可能にする技だが、聖痕の力を全て使ってしまうため使い勝手は悪い。
だがその成果もありジンは数秒で複数の国を跨いで獣人の国の国境付近に到達した。