65話 雪の精霊
異世界382日目
二度目の侵攻まで後1178日
朝、目が覚めると目の前に眼鏡を外したクレアの顔が見えた。眼鏡を外したクレアはどことなく幼く見えて新鮮だ。まあ、そこまではいい昨日はクレアと一夜を過ごした後、クレアを抱き枕にしたのだから不思議ではない。
問題は、背中にもうひとつ体温を感じることだ。それもキリかユリぐらい小さいのだ。しかしキリやユリではない、二人ならもうひとつ体温を感じないとおかしい、可能性としてはアリシャくらいだろうか?
恐る恐る後ろを向いてみると真っ白い髪の毛が見えた。アリシャではない、アリシャは白みを帯びた金髪だ。毛布を捲ってみるとそこには、白い肌に純白の髪あどけない寝顔を晒している八歳ぐらいの幼女がいた。
「こ、小雪」
ジンのことをパパと慕う雪の精霊だ。その小雪が裸で刀を抱えて眠っている。
「刀?」
「ご主人様、朝でござい・・ま・・す。」
タイミング悪くミリアが入って来てしまった。
今の状況、半裸のジンと全裸の幼女
「ご主人様が幼子にまで手を。フェリスちゃんには手を出していないから安心してましたのに。」
「違うからな!」
「う~ん、パパどうしたの?」
小雪が起きたようだ。眠そうに目を擦っているのが可愛らしい。
「ご主人様そんなプレイを」
「ミリア、お前実は悪乗りしてるだろ」
「では、隠し子ですか?実はわたくしこれが一番あり得ると思っているのですが?」
「それが一番近い気がするが、ちょっと違う!」
「はぁ~あ、ジンさんどうしたんですか?」
欠伸をしながら全裸のクレアさんが起きた。ミリアにはジンでちょうど見えない位置だったのだ。
「まさかのクレアさんとの間の子供ですか!?」
「だから違う。それよりミリア、子供服を急いで用意してくれ。裸でいさせるわけにはいかないだろ。」
「あ、はい。確かにそうですね、かしこまりました。」
ミリアが、すぐに部屋を出た。
朝の出来事から、しばらくたって食堂で朝食を取りながら説明することになった。この場にいるのは、テツとミリアとフェリスとリリスにジンと小雪を含めた6人だ。クレアさんは「今は恥ずかしいので一人にしてください」と言うことらしい。
「つまりこの子は精霊でジン様が精霊の統合を失敗したときに、ジンさんの血を取り込んで生まれたんですね。」
「そういうこと。存在としては、テツに近いかな。」
「そういえば小雪ちゃんが持ってるのって刀ですか?」
ティリエルがテツを気にしながら小雪にたずねる。
「美味しい~、うん?そうだよ。『精霊刀・七星』て言って七種全部の精霊を込めることができるんだって。」
確かにそれは俺向きの刀だ。
「主の刀は私です。」
テツが張り合うが
「でもパパは、二刀流だよ」
「むっ」
珍しくテツが悔しそうな表情をしている。テツだってそんなことはしっているのだ。だから二刀に分かれる力を作ったりと頑張っているのだから。
「あ、後これはパパの刀の人に」
小雪の手から小さな透明な石が出てきた。
「これは?」
テツの不機嫌な声を、小雪は全然気にした様子もなく
「『精霊石』だって、土のおじちゃんが、きっときっかけになるって言ってたよ」
「きっかけ・・・・・。主後でお話したいことが」
改まってなんだろう?まあ、テツの珍しい頼みだし断る理由も無い。
「わかった。」
「ジン、土のおじちゃんって誰?」
鍛錬から戻ってきていたリリスが質問する。
「土の精霊王のことだ」
「精霊王がおじちゃん」
食堂になんとも言えない空気が流れる
「あ、忘れてた。パパ、闇のお姉ちゃんが今度行くから覚悟しろーだって」
「そうか。楽しみだな。」
そうこうしている内に、小雪が食事を終え
「ごちそうさまでした。パパ遊ぼ~。」
小雪とは一年以上も離れ離れだったのだ今日くらいは一緒に過ごすことにしよう。
「今日は、小雪の相手をするから、悪いけど他の子への説明お願いしていいか?」
「はい。親子の久しぶりの対面です。お任せください」
ミリアが快く快諾する。
「ありがと。小雪、何して遊ぼうか?」
「肩車で屋敷を探検したい」
「よし、わかった。行こっか」
小雪を抱えあげて肩車する。
「わーい、高い高い」
それだけで小雪は喜んでくれる。一通りはしゃぐとジンの頭を抱きしめて
「パパのにおい、久しぶりだよ~」
やっぱり寂しい思いをさせていたようだ。だが、ジンは数日後には亜人の国に出発する。
その事も話さなければいけないな。
しかし今は、小雪を楽しませることだけを考えることにしよう。さて、何処から行こうか?
ジンは行き先を考えながら、廊下を進む。
庭に出ると『メイド隊』が訓練をしていた。
まだ日が浅いのに随分さまになっているな。魔術をミリアが近接をレティーシアが教えている。
今は自己鍛練の時間らしい。
「ご主人様、入らしていたんですか。その子は?」
いち早く気づいた三人娘が近づいてきた
「この子は、小雪。細かいことは、ミリアに聞いてくれ。」
そういえばまだギルドカード見ていないな
「ギルドカード見せてくれないか?」
「ご主人様のご要望とあれば」
ギルドカード
名前 ジニィー 種族 人間 性別 女
ギルドランク D
能力ランク 総合C 気力C 魔力C
チーム 『メイド隊』
称号 ジンのメイド
名前 ディア 種族 人間 性別 女
ギルドランク D
能力ランク 総合C 気力C 魔力C
チーム 『メイド隊』
称号 ジンのメイド
名前 ケティー 種族 人間 性別 女
ギルドランク D
能力ランク 総合C 気力C 魔力C
チーム 『メイド隊』
称号 ジンのメイド
三人とも仲良く能力を上げているようだな、ランクが全部一緒だ。
一緒にカードを見ていた小雪が
「ねえパパこの人達ってパパのハーレム?」
「そうだよ」
小さな子の前であっさり肯定され三人娘は、嬉し恥ずかしいといった感じだ。
「でも、小雪が一番目のハーレムだもんねえ」
あの時は将来的な意味で待っていると言ったんだが、まあ確かに一番目ではあるな。
「確かにそうだな」
『メイド隊』を驚愕しているが、まあいいだろう。
「パパ、小雪もカードが欲しい」
子供でも登録できるだろうか?
まあ、俺がいればなんとかなるか。
「じゃあ、行ってみるか?」
「うん」
所変わって冒険者ギルド
「申し訳ありません。子供の登録はお断りしているんです。」
「大丈夫ですってこの子は強いですから」
「そんなこと言われましても強さの確認が取れないですし」
「確認が取れればいいんだな」
ジンは、そう言うとギルド内にいた冒険者から適当に連れてきた。話していた内容から察するとCランクぐらいらしい
「この子と戦ってくれ。」
「英雄さんよ俺達のことなめてんのか?」
「ああ、もし勝ったら百万ギルやるよ」
冒険者の目の色がかわった。子供を攻撃すればギルド内で干されるだろうが百万ギルあれば当分は遊んで暮らせる。
「いいだろう。」
「小雪手加減しろよ」
「はーい」
名前も知らない冒険者が木刀を構える。
ジンの合図で始める
「はじめ!」
「うおおーー」
冒険者が声を張り上げて走り出すが
「『氷柱』」
小雪の頭上に氷槍が現れ同時にその氷槍が放たれる。冒険者の周りに氷の槍が突き刺さり動きを封じる。
「えっ、な」
「まだやる?」
小雪は単純な意味で続けるかを聞いただけだったが、冒険者は生死の判断を迫られているかのような錯覚をした。
それも無理は無い、どれかひとつでも氷槍が当たれば死んでいたのだ。
「こ、降参だ」
「パパ勝ったよ~」
「お~偉いぞ小雪。」
ジンが頭を撫でる。ジンに撫でられて幸せそうな顔をする小雪は、ただの幼い子供だ。
しかし、小雪はその小さな身体に強大な力を秘めているあることをこの場で証明した。
「あの屋敷は異常だな」
「子供であれかよ」
「目を合わせるな。殺られるぞ」
「男には容赦ねえからな」
とまあ色々言われているが気にしない
「小雪の登録いいかな?」
受付嬢は何度も頷いた。
ギルドカード
名前 小雪 種族 精霊 性別 女
ギルドランク F
能力ランク 総合D 気力D 魔力C
チーム 『世界を結ぶ者達』
称号 ジンの娘 雪の精霊
「へへ〜」
カードを見ながらにやける小雪を肩車して屋敷に戻る。
そういえば屋敷の案内をまだしていないことを思い出す。
『メイド隊』の訓練も終わった頃だろう。ということは、とジンは考えを巡らせる。
「小雪屋敷に戻ったら探検再開だ」
「うん」
屋敷に戻って向かったところは、屋敷に三つある風呂の内の三十人以上が余裕で入れる大浴場だ。他の二つは男湯と5人くらいが入れる浴場(基本カラとマリネが使う)がある。ちなみにジンは、三つ全てのお風呂を使う。
「ご、ご主人様!」
もちろん大浴場には、訓練明けの『メイド隊』十五人が汗を流している。
そこに、タオル一枚のジンと素っ裸の小雪が乱入したのだ。
「皆お疲れ様。今日は日頃の苦労を労おうと思ってな。皆を洗ってやろうと思ってな」
「パパ、小雪が一番だよ」
「ああ、わかってるよ」
「ご主人様、次は私にお願いします。」
ケティーがすかさず名乗りをあげる。そのケティーに張り合ってジニィーとディアが
「わ、わたしも」
「お、お願いします」
三人娘がジンにお願いすると、ほかの女達も
「いいのでしょうか?」
「ご主人様に身体を洗っていただけるなんてめったにないわよ」
「確かにそうね。」
「「「わたしもお願いします。」」」
最終的に全員の身体を洗うことが決まった。
まずは、小雪からだな
「ほら小雪、ここに座って」
ジンの前の椅子に小雪を座らせ、小雪の真っ白な髪を丁寧に洗う。
「どうだ?」
「きもち~」
「そうか」
「うん」
精霊界にいた頃にもこうやって小雪の髪を洗ってあげていた。だから小雪がどこをどう洗ってほしいのか良くわかっている。
小雪は、ジンの手技に満足そうに頬を緩める。
その後、体も丁寧に洗って
「先に風呂に入ってて」
「はーい」
小雪は、普通に洗った。次からは、様子が違った。
小雪が座っていたところに今度はケティーが座る。
すぐにジンはケティーの身体を洗い始めた。
素手で
「ご、ご主人様?」
「ダメか?」
「い、いいえ、お、お願いします。」
「それじゃあ、すみずみまで洗うからな」
「えっ、はい」
宣言どおりジンは、ケティーの身体をすみずみ洗った、ケティーの身体でジンが触れていない場所は、ほとんど無いと言っていいだろう。
その後も、ジニィーやディアや他のメイド隊の子たちをすみずみまで洗った。『メイド隊』のメイド達の身体は適度に引き締まっていて、それでいてやわらかかった。
胸の感触は、ケティーがプニっとしていて、ディアはふよんってしていて、ジニィーはムニっとしていた。
「あぁ、ご主人様にすみずみまで触られてしまいました。」
「ご主人様に征服されてしまいました~」
「所有物になれたみたいで幸せですう」
「私達は元々ご主人様のモノだけどね」
「ご主人様の身体洗いたい・・・身体で」
「ちょっと下品よ」
「やりたくないの?」
「・・・やりたいけど」
若干関係ないのも混じっているが、それなりに好評だったようだ。
ジンも皆の身体を楽しめて役得だった。
その後、メイドに身体を(身体で)洗ってもらってから風呂をあがった。
その夜
小雪がジンの隣で寝ている。その顔は涙で少し濡れている。
旅に出ることを話した時に泣かれてしまった。それでも小雪は最後には、小さく頷いてくれた。
「パパ、大好き」
寝言でそんなことを言ってくれることが堪らなく嬉しい。
「主、よろしいでしょうか?」
テツだ。そういえば後で話があると言っていたな。
「どうぞ」
「失礼します。」
「どうした?」
「お願いしたいことが」
「珍しいな、どうしたんだ?」
「主は、私に・・・・満足していますか?」
テツが唐突に、ジンに問いただす。
「それは、もちろん。お前以上の相棒はいない」
「ありがとうございます。その言葉は嬉しいです、でも私は満足していません。主は、人工聖痕を使った時、私を気遣っていました。私は、主に全力で、私を振るって貰いたいんです。」
普段無口なテツが一気にまくし立てる。それだけテツには譲れない一線なんだろうな。
「テツ、話してくれてありがとう。これからもそうやって話してくれ。テツが昔、俺に悩みを打ち明けるように言ってくれたように俺もテツの悩みを聞きたい。」
テツを抱き寄せる。
「主」
「一緒に探そうテツを強くする物を」
「はい、主」
二人は、唇を合わせた。