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聖痕使い  作者: 中間
第一章:人間の国
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61話 英雄の今後の課題

ジンが、王達を連れて奥の部屋に消えた後のパーティー会場


「フェリスちゃん、大丈夫?」


「えっ」


ミリアが心配そうにフェリスに話しかける。


「こういう場は、苦手でしょう。」


「はい、ちょっと。でも、大丈夫です。」


フェリスは、グーロム王国の王族だったことがばれないかが気になって、上流階級の人間に苦手意識を持っている。

以前会議の場で庇ってくれたジンが、この場にはいないのが尚更フェリスを不安にする。


「そうですか、一応誰かつけましょうか」


「そんなの悪いですよ。私はお兄ちゃんが戻ってくるまで、隅っこにいますから。」


「わかりました、気を付けるんですよ」


「はい」


話題の英雄と九大国の王が席をはずし静寂に包まれていた会場も時間が経つにつれ、雑談を始める者達が多くなっていた。


そんな中、フェリスが会場の端っこでジンが戻ってくるのを待っていると


「おい、そこのメイドちょっと来い」


フェリスを城のメイドと勘違いしたのか、貴族の男がフェリスを呼びつける。


「すいません、私は城のメイドではないんです。」


「使用人風情が意見するな、いいからちょっと来い」


「私は、あなたの使用人ではありません。」


「ちっ、貴様、どこのメイドだ。」


「おにい、・・・ジン様のメイドです。」


「ああ、あの成り上がりか」


貴族の男が嫌なものでも見たかのような表情を浮かべる。


「・・・」


フェリスはこの時点で男の評価は最底辺まで落ちていた。


「何とか言ったらどうだ」


「別に何もありません。失礼します。」


一秒でもこの男の近くに居たくないフェリスは、その場を後にする。


「おい、ちょっと待て」


フェリスは、貴族の声を無視して仲間のところに向かう


「あのガキ、私を無視するとは無礼な。」



仲間の所に戻ってきたフェリスが不機嫌そうなのを見てイリヤが話しかける。


「どうしたのフェリスちゃん。」


「・・・お兄ちゃんを侮辱されました。」


「・・・なんて言われたの?」


「お兄ちゃんのこと成り上がりって、お兄ちゃんが頑張ったからの伯爵になっただけなのに」


「おい、さっきのメイド」


先程の貴族がこちらに歩いてくる。わざわざ追いかけてきたようだ。それも多数の護衛らしき人間を連れてきている。その護衛は鎧こそ着ていないが長剣を帯剣をしているパーティーには相応しくない格好だ。

嫌なものを感じてイリヤがフェリスの前に立ちはだかる。


「何のようですか?」


「ほお、エルフかいい女だな。」


イリヤは、その言葉には取り合わず。


「私達の主を侮辱したようですね」


「ふん、事実だろう。おまけにこんなに女を連れ込んで見せびらかして英雄殿は何か勘違いしているんじゃないか。それに聞いているぞ、屋敷で働いているのはほとんどが元奴隷だそうじゃないか、まったく神経を疑うよ。」


パーティーに武器を持ち込んでいる恥知らずの癖に、と思いながらもイリヤは口には出さない。テツは例外だ。


「ここに、私達がいるのは、私達も戦いに参加していたからです。何もしていないあなたにとやかく言われる筋合いはありません。それに屋敷のメイドは皆いい人ばかりです。主は元奴隷だとかにこだわるお方ではありません。」


「奴隷など家畜と同じだろう。大方お前達も元奴隷なんじゃないのか?」


確かにイリヤは、一度奴隷の身になった。奴隷らしいことをする前にジンに助けられたが、イリヤにとってそれは苦い思い出だ。貴族の言葉がそれを思い出させ、イリヤの顔が険しくなる。


「なんだ図星か、ならそっちのメイドは戦いの戦利品といったところか、まったく英雄が聞いて呆れる」


自分達は、ジンに救われた、その救われたことを侮辱されてイリヤの我慢は限界だった。


「・・・何様ですか貴方は」


「私は、コーデル国、ビラー侯爵家の長男、ビルキッドだ。お前が望むなら奴隷として飼ってやらんこともないぞ」


コーデル国は、南のほうの小国だ。ジンなら1人で滅ぼせる規模の国だ。


「誰が、貴方のようなゴミ虫のようなやつに」


ビルキッドが、顔を真っ赤にして怒鳴りだす。


「貴様!奴隷の分際で私を侮辱したな。お前達、痛めつけてやれ。」


護衛が腰の剣を抜く。


それに気付いた、ジークとカイルが護衛とイリヤ達の間に入る。


「内のお嬢様方に何か御用でしょうか?」

「ジーク聞く必要ないだろ。こいつら、屑だぜ」


ジーク達の方が能力ランクは上だろうが無手と剣だ状況はかなり不利だ。ビルキッドの護衛とジークとカイルが今にもぶつかり合いそうな時


「ジーク、カイルやめろ」


「「はっ」」


ジークとカイルが言葉に従って下がる、ジンが戻ってきたようだ。


「内の者に何か用か?」


「部下の躾はしっかりしたらどうなんだ。」


「何を勘違いしているのかしらんが、俺は部下はこの会場に連れてきていないぞ」


フェリスたちが驚いた表情を浮かべる。ジンは4人を見て


「全員、俺の家族だ。」


今度は、4人の顔が嬉しそうにほころぶ。


「あんたが俺を成り上がりと呼ぶのは構わない、事実だからな。だがな、俺の家族に手を出したら・・・殺す・・・いいな。わかったら、俺の前から消えろ」


本気の殺気をぶつける


「うっ」


「ビルキッド様、ここは」


護衛の一人が耳打ちして。


「わ、わかった」


ジンの殺気に当てられたビルキッドはすごすごとその場を去った。



「イリヤ、フェリス大丈夫だった?」


「お兄ちゃん」


フェリスがジンに抱きつく。


「手は出されていません。ですがあいつら」


「会話は、聞いていたよ。あれが人間の国の奴隷に対する考え方なんだよな。」


実際結構大きな声で話していたにも関わらずビルキッドの奴隷に対する差別的な考えを非難するものは少数だった。イリヤのことを蔑む目で見るものすらいる。改めてこの世界の奴隷への考え方の酷さを痛感した。


「ご主人様、信じていますよ。」


「ああ、任せろ」


ジンは、イリヤの前で奴隷制度を無くすことを宣言していた。イリヤはそれをまだ信じてくれているようだ。

本当の意味で無くすのには時間がかかるだろう。だが、今のジンは長寿だ。時間はある、それに今は発言力もある。


「ジン様、お時間よろしいですか?」


皇族付きのメイド、レイシアだ。


「ジン殿と話したいと言う方をこちらで整理しておきました。今からよろしいでしょうか?」


「ああ、わかった。ミリアを連れていってもいいか?」


「どうぞ。」


「それじゃあ、ちょっと行ってくるね。ミリア一緒に来てくれ」


フェリスとイリヤにキスした後レイシアについて行く。


王達と入った部屋とは別の部屋に通された。部屋には、扇状に作られた机と椅子が用意されていて一対五の形になっている。もちろんジンは、一の側に座った。


「ご主人様、入ってくるのは4人から五人です。そして中央に座った人をその組の代表だと思ってくださって構いません」


しばらくすると


「ファーランド王国のキュリア様ご一行です。」


「キュリア様は、公爵家の一人娘です。家のほうは魔人を受け入れている貴族達の代表です。」


ミリアが簡単な説明してくれる。このためについて来て貰ったのだ。


「失礼します。」


着飾った五人の淑女が入室してきた。


「始めまして、英雄様。」


今では、クイント皇国以外でもジンは英雄と呼ばれることが多くなっている。


「どうも始めまして、どうぞお座りください」


ドレスアップした貴族の娘は、とても絵になる。仲間達のドレス姿も綺麗だったが、キュリア達のドレス姿はとても自然体で着ていて似合っている。


軽くそれぞれの自己紹介をすませる。そしてやはり、キュリアが話を始める。


「お会いしたかったです、英雄様。武勇談をお聞かせ下さいませんか?」


「ええ、いいですよ」


ほどほどに、戦いの話をしていくらかの時間がたった頃、キュリアが質問を投げかけてきた。


「次の戦いは、どうなるのでしょうか?」


「・・・三年後の戦いはもっと激しくなるだろうね。今の戦力では、勝てないだろうな」


今の戦力とは人間の国全てだ、それでも勝てないとジンは言った。つまり、人間以外の力が必要だということだ。


「・・・英雄様は、異世界から来られたと聞きました。それでは、魔人についてはどうお考えですか?」


おそらく、これが本題だろう。魔人への対応は直接ファーランド王国に影響することなのだから。


「俺は、何かを言えるほど魔人については知らない。」


キュリアが少し残念そうな表情になる。今の世間の魔人への風当たりは強い、異世界から来たという英雄ならそれもなく魔人のことを理解してくれるかもしれないと思っての質問だったのだろう。


「安心してくれ。俺は魔人すべてを、悪だと言うつもりはない。少なくとも俺の屋敷にいる鬼族のカラっていう女の子は、とても良い子だよ。」


「魔人を屋敷に住まわせてるのですか!?」


驚きの声をだす、キュリアほかの貴族の娘も驚いている。


「ああ、何かと不自由させているのは心苦しいんだが、返そうにも故郷が遠くてな。」


「そうですか。では、英雄様は、魔人は滅ぼす、ということは無いと思ってもよろしいのでしょうか?」


「それは、安心してくれ。それに俺はこれから先の戦いに魔人の存在も必要になると思っている」


キュリア達の顔に驚きと喜びが表れる。もしそれが実現すれば、人間と魔人の共同戦線ということになる。ファーランドにとってこれほど喜ばしいことはないだろう。

興奮した様子のキュリアが


「そ、それでしたら、近々ファーランドに来られませんか?」


「それは、まだ無理なんだ」


「ど、どうしてですか?」


「魔人と他の種族の溝は深い、三年後には間に合わないと俺は思ってる。だから俺は先に亜人と話をしようと思っているだ。」


「そう・・・ですか、残念ですが確かにそれが正しいですね。でも今日は、ありがとうございました。とても実りのある時間になりました。」


少し落ち込んだ声を出したが、最後のほうで持ち直した。


「それは、よかった。」


「それではそろそろ失礼します。後が控えていそうですし」


キュリアは、そう言って席を立つ。


「それでは、またお会いしましょうね。英雄様」



次に入ってきたのは、男だったクラフト商国の商人だ。

彼とは、ビジネスの話になっていった。


商品は、情報だ。


「それじゃあ、亜人との関係は悪化しているのか?」


「ええそうです。グーロム王国や奴隷商人が奴隷を得るため起こした数々の事件により、亜人にもかなりの被害がでています。亜人は、ただの人間より需要が高いですから。」


「おたくはどうなんだ?奴隷は扱っているのか?」


「私のところでは一切扱っておりません。そうでなければ、ジン様の前に姿を出せるわけが無いではありませんか」


「まあ、そうだろうな」


その後も、いくつか情報を買う。


230万-5万=225万ギル


買った情報からわかったのは、一国単位でなら協力的な種族もいるが、人間に対してどの種族も敵対とはいかないまでも、警戒はされているようだ。



奴隷の問題に魔人の問題、さらに亜人との問題も出てきた。

これは、思っていた以上に忙しくなりそうだ。


まずは、今度ある会議で議題に出すとするか


その後もジンはたくさんの貴族と面会することになった。面会は夜遅くまで続き何とか今日中に終わったが、レイシアが整理してくれていなかったら、もっと酷いことになっていただろう。


レイシアほしいな。



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