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聖痕使い  作者: 中間
第一章:人間の国
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60話 戦勝パーティーと報奨


異世界370日目


戦勝パーティーが開かれる日になった。ジンは、女達に先に城に行くように言われてお城の控え室で待っていた。ジンはいつもの黒衣の姿だ。


しばらく皆を待っていると


「ご主人様、お待たせしました。」


最初に入ってきたのは、ミリアだった。ただその姿は、いつも通りのメイド服姿だった。てっきりドレスを着てくるのかと思っていた。


「これが、私の正装です。それにこの格好ならジン様の後ろについて行けますし」


メイドの鏡だな。ミリアは元々皇族付きのメイドだったから、こだわりの一つや二つはあるのだろう。


その後は、続々と女達が入室する。


ソフィアは、髪の毛と同じ色の水色のドレス。仲良しになったカルディアが見繕ってくれたらしい。

イリヤは、エルフの衣装を意識したものらしくで袖がない大胆な緑色のドレスだ。

リリスは、黄色いドレスを着ている。ドレスのヒラヒラが気になって落ち着かない様子だ。

レティーシアは、赤いドレス着ている。こちらは、皇女だけあって着慣れているようだ。

ティリエルは、黒一色のシンプルなドレスが、銀髪に良く似合う。

キリとユリは、おそろいの白いドレスを着ている。

フェリスは、メイド服のままだった。どうやら公の場で姫とばれそうなことをしたくないらしい。

テツは、パーティーにもドレスにも、興味がないらしくジンの腰に刺さっている。


これらのドレスは、クルトと交渉してあつらえたらしくどれも質が良いらしい。


「皆綺麗だよ」


「一括りなのはいただけませんが、まあこの状況では仕方ありませんね。」


「ありがとうございます。」


褒められてそれぞれ嬉しそうに顔を綻ばせる。


ちなみにジークとカイルの格好はタキシードだ。まあそれはどうでもいいか。


そこに、アリシャが訪れる。レティーシアと同じ赤いドレスだが、少し落ち着いた意匠になっている。


「ジン、そろそろ出番」


報奨の授与のことだろう


「わかった、アリシャも綺麗だ」


「ありがと」


一見無表情だが口の端が少し緩んでいる。


皆を引き連れて、会場に向かう。



ジンが、会場に入った途端に、騒がしくなる。そして貴族達はジンに近づくものと遠巻きにするもの、あと様子見の者に分かれた。

遠巻きにする者たちは


「あれが、『黒翼の英雄』か」

「本当に強いのか?」

「女をあんなに連れてどういうつもりだ」


彼らは、ジンのことを無視はできないが、平民と仲良くなんかできないといった連中だ。


そして、ジンに近づいてきたのは、ジンの活躍を聞きジンと繋がりを持ちたい貴族達だ。


「英雄様、始めましてわたくしはリニヨン教国、伯爵家の娘のメリルと言います。」

「私は、ヤマト国のフウカと言います。以後お見知りおきを」


そして圧倒的に女性が多い。どうやらジンの女好きを聞いて貴族が令嬢をあてがってきたようだ。


「な、なんですか、これは?」


仲間の誰かの疑問に、アリシャが


「ジンは、前の戦いの最功労者。九大国がジンを支持しているのも大きい。今のジンは超重要人物」


「あ、あなた達」


「待ってください」


ジンの前に出ようとしたリリスを、腕を掴んでレティーシアが止める。リリスがレティーシアの方を向く


「なに?」


「この場は、ジン殿にとっても大事な場、邪魔してはいけません。」


レティーシアは皇族として、こういう場には慣れている。もちろんアリシャもだ


「ここは、社交場、ジンの独占は厳禁。」


「社交場・・ですか」


正直、彼女達は誰かと交流するつもりなどない、というのが本音だ。

まあ、ジンに許可は貰っているのでしつこい奴には実力で排除するので問題はないのだが


それより、ジンの周辺がどんどんすごいことになっていく。人の壁で身動きも取れそうにないし、誰が何を喋っているのかもわからない。


パンッ


手を打ち合わせる音が会場全体に響き渡り、会場が静寂に包まれる。どうやらジンが精霊術を使って音を増幅させたようだ。


「え~と、一気に話されてもわからないので、後程4人から5人ぐらいで来てください。そうしたら応対しますので」


そう言ってジンは、その場を移動する。


「これより、防衛戦の功労者の報奨の授与を行いたいと思います。」


アッシュ皇子がジンの作った空白の時間を使って、報奨の授与に入る。


「『黒翼の英雄』ジン殿前へ」


ジンが前に進んでいく。会場の奥には、九大国の王達が並んでいる。王達の前まで進むがジンはあえて膝はつかなかった。王達もそれを咎めず報奨の授与が始る。


「英雄ジン殿の戦功、ノワールサイ約8千頭の撃破、魔鳥ヤガラス約7千の撃破、ワーム3体の討伐に協力など、他多数の戦功を立てた。」


この発表は全ての貴族の度肝を抜くことになった。一般の兵士には岩壁で戦いが見えていなかったので正確な情報が出回っていなかったのだ。貴族達は、この場で初めてジンの正確な戦功を聞いて、噂以上であることを知ったのだ。


「これにより、ジン殿に金獅子勲章を授与する。」


今度のざわめきは小さかった。金獅子勲章は、戦功に対する勲章の中ではかなりの上位だがジンの戦功からみれば当たり前のことのように見えたのだ。


「そして、さらに我々は、彼に九大国で通用する爵位を与える。この場でジン殿を伯爵に任ずる。」


今回のざわめきは大きかった。それだけ伯爵位の授与は、かなりの異例なのだ。この世界では、今までも平民や騎士が爵位を得ることはあったがそれは、せいぜい男爵か子爵であり、伯爵の任命は初めてのことだった。


「そして、金貨100枚の授与をもって終わりとする。」


95万+100万-15万(メイドの装備とその他諸々)=180万


ジンが一礼してその場を後にする。


「次、テンプル騎士国、三騎士の・・・」


その後も、報奨の授与は行われていたが、皆どこか上の空だった。自分を取り戻した者達は四人または五人のグループを作ってジンの近くに陣取っていく。


ジンの仲間も数人呼ばれ報奨を渡される。


180万+50万=230万ギル


「これにて、報奨授与を終わりとします。」


アッシュが締めくくったのと同時に多くの人間がジンの元に走る。


が、いつの間にかジンは九大国の王達の前に移動していた。


「クルト皇、それに皆さんちょっとよろしいですか?」


「あ、ああ」


クルト皇は、冷や汗を流しているように見えたが、すぐに奥の部屋に移動してしまった。



「あんた達、本人に相談もなく何を勝手に決めているのかな~」


ジンの顔には、笑顔が張り付いているが、目が笑っていない。


「いや、必要だったんだよ。本当だよ」


「俺に話さなかったことが必要だったのか?」


「いや、それは、面白そうだったから」


「ほうほう・・・・・俺がそれで納得するとでも」


「い、いいじゃないか、私だってアリシャとの婚約には、びっくりしたんだよ」


ジンの周りの温度が下がったような気がして、クルトが慌てて言い訳する。


「ああ、そういえば。クルトには事後承諾だったらしいな」


「そうなんだよ。ってそれはいいんだよ。実はね」


「話を逸らしたな」


「実はね、ジンくんに頼みたいことがあるんだよ。」


「・・・はあ・・・なんだ?」


ジンは、ため息をきながらも、聞く姿勢を取る。


「九大国の身分の高い女性を娶ってほしい」


「・・・・・・はあ?」


「今回のことで君の存在は、もはや伝説になっている。君をどこかの国が保有している、という勘違いを無くすための処置なんだ。あくまで共有ということにしたいんだ。」


「俺は物じゃないぞ。だが、まあ言いたいこともわかる。」


「すぐに結婚しろとは言わない。だから、まず君の屋敷に住まわせたいんだが、いいかい?」


「そのための爵位か。」


結婚するにしても婚約するにしても貴族のほうが何かと便利だろうからな。


「駄目じゃないが、いくつか条件がある。まず来るのは一国から三人まで、侍女等も含めてだ。あと国家間の問題や身分の差を持ち込まないこと今はこれくらいだな。」


「わかった。伝えよう」


「誰が来るんだ?」


「それは、まだはっきりとは決まっていない。後の楽しみに取っておいてくれ」


「わかったよ。それじゃあ、俺はパーティーに戻るぞ仲間が心配だ。」


ジンが席を立つと


「そうだね。我々もそろそろ戻らなければ、主催の我々がいつまでも席を外す訳にもいかないからね。」


そういって各国の王達も席を立て、パーティー会場に戻ることにする。




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