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聖痕使い  作者: 中間
第一章:人間の国
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50話 第1回 世界防衛戦:助っ人

「何をしているのだ、カルモンド軍に何があった!」


第二の堀を2時間で無力化されてしまった北方軍。戦線の防衛を担当したカルモンド軍の動きがあまりにも遅すぎたのだ。


「それがどうやら、軍中のグスター王が何かと軍を勝手に動かそうとしているようでして、指揮系統に混乱が生まれているようです。」


「なっ、なん、だと・・・やつは、正気か。」


キリガネは、呆然とした表情を浮かべる。


「それが、どうやら自軍に戻ったことで、気が強くなったのか自分を守るように将兵に強要しているようです。」


「・・・・・ヘンリー王、あいつ斬ったらダメか?」


「聞かないでください。一瞬許可しそうになりましたから。」


「あのバカ、・・・まだ二十時間もあるんだぞ。ずっとあいつのお守りをするのか俺達は」


「この戦いが終わったら、さっさと王位を退いてもらいたいものです。ですが今は」


「わかっているさ、すべての部隊を防御柵まで下がらせろ。迎撃準備だ、相手はBランク以下の魔物だ、なんかなる。今はな」




足止めの部隊以外が防御柵まで後退するが、またしてもカルモンドの軍が、遅れている。

そのせいでカルモンド軍が突出してしまっている。あれでは、集中攻撃を受ける。


「何をしているんだ、グスターは」


「どうするキリガネ殿?」


「・・・しかたない全軍戦線を一度上げる、カルモンド軍を引っ張り戻すぞ。グスター王は、もっと後ろに下げろ正直邪魔だ。」


「閣下緊急事態です。」


「今度はなんだ?」


もううんざりだといった、風情のキリガネ。


「黒い半球付近にノワールサイを確認しました、その数約百体。」


ノワールサイは以前リリスを苦しめたAランクの魔物だ。ノワールサイの突進の対処は回避が基本だ。しかし人間が密集するこの戦場で回避は、難しい。それに本来は群れないノワールサイが百体だ。


狙われるのはもちろん突出したカルモンド軍だ


「ヤバイぞ、いくら重装歩兵でも、あの数のノワールサイは止められないぞ」


敵は、待ってはくれるはずもなく、ノワールサイの群れ?はカルモンド軍に向けて進撃を始めた。


その様子は、さながら角のはえた黒い壁が向かってくるようで、カルモンドの兵士は恐怖に包まれた。


「む、無理だろこんなの」

「逃げ場なんかないぞ」

「なんでノワールサイが群れてんだよ、おかしいだろ」


兵士が諦め絶望し始めた頃


ノワールサイの群れが吹き飛んだ。ジンの友人(友竜?)である銀龍アルベルトのブレスによって。


アルベルトは、もう一度ブレスを放ち、堀を無力化させていたストーン・ゴーレムも吹き飛ばす。


アルベルトは、第二の堀を再生した後、一度キリガネとヘンリーの前に降り立ち人形ひとがたを取る。


「君たちが、人の王か?」


「ああ、わたしはヤマト国の国王キリガネ」


「わたしは、ファーランド王国の国王ヘンリーといいます。」


「銀龍アルベルトだ。ジンくんの要請でこの戦いに助力する。」


「あなたがジンの言っていた助っ人か、これは心強いな。」


「父上先程のは・・・こちらのかたは?」


そこに、トウカが天幕に訪れた。


「さっきの銀龍殿だよ。」


「えっ・・・ご、ご助力感謝します。・・・これでジンさんへの風当たりも弱くなるといいのですが」


「うん?そういえばジンくんはどこにいるのかね?戦場にはいないようだが。」


「それが実は」


事の経緯を話す。


「そうか」


アルベルトはそれ以外の言葉を口にしなかった。

そこに、キリガネが


「アルベルト殿聞きづらいのだが・・・どこまでやれる?」


「全力のブレスはあと三回だな」


三回だけか、いや三回もあると考えるべきなのだろうな。銀龍のブレスは、地形を変える程の威力だ。贅沢は言えない。


「改めてお願いします。力をお貸しください。」


軽々しく頭を下げられない王二人の代わりにトウカが頭を下げる。


「もとよりそのつもりだ。娘も参加しているからな。」


「娘?」


「ああ、ジンくんと行動を共にしている。」


ジンさんのハーレムには龍族までいるんですか、とトウカが心の中で思っていると


「トウカ出遅れるなよ」


「ななな何をいっているんですか?」


トウカの顔がみるみる赤くなっていく。


これは珍しい。ジンのことをそれなりに意識しているようだな、とキリガネは心の中で思う。


「いやお前の婿の」


「黙ってください。父上はさっさと指揮に戻ってください」


キリガネは、面白いものを見れたとでも言うようにニヤニヤしながら指揮に戻る。


「はいはい、わかってるよ。各騎士団は魔物の駆逐を魔術師隊は、ストーン・ゴーレムを潰せ。今度は死守しろよ」


北方軍は一時間後、開戦から五時間ごろに戦線を押し戻すことに成功する。


北方軍が戦線を押し戻した頃、東方軍の前には赤い巨大な亀が現れた。


「皆よけろーーー」


東方軍の戦場では、無数の火球が空から降りかかってきていた。前衛部隊は、その火球をまともに受けることになる。


赤い亀は、ランクAの火砲亀かほうき、背中にたくさんの砲門を持ちそこから無数の火の雨を降らせる魔物だ。ノワールサイ以上に硬くその火力で村を焼き尽くす危険な魔物だ。本来なら近接に持ち込んで一気に弱点である目や口を攻撃するのだが堀と他の魔物がそれを許さない、一方的に火球を降らされる状況になっていた。


「くそ、赤亀のやつ好き勝手やりやがって」

「またくるぞ、伏せろ」


また無数の火球が飛んできた。


「『水上壁すいじょうへき』」「『水天門すいてんもん』」


突然二つの水の壁がでて火球を打ち消した。


「出てくる場所が悪かったですね」

「湖と川の国ウルティアの代表の力見せてあげましょう。」


それは、『水災の魔女』の称号を持つソフィアとウルティア国の代表カルディアによるものだった。

その後も火砲亀の攻撃を二人は防ぎ続けた。二人が防いでいる間にティリエルが火砲亀に空を飛んで近づく。ティリエルは無数の火球をすべて回避して背中の仲間を火砲亀の前へと運んだ。


火砲亀の前に降り立ったのは、ジンの仲間のリリスだ。


「ここからは、私の番だよ。」


リリスはジンの仲間の中で随一の速さを生かして魔物も火球も避けて火砲亀の前までたどり着くそして両手で持ったエストックで目を貫く


「『スパーク・ショット』」


エストックを刺したまま頭の中を雷撃で焼いて止めを刺す。

リリスは、火砲亀が黒い粒子になって消滅するのを見届けてその場を脱出する。この時も魔物はリリスを捉えることができなかった。リリスはそのまま堀の付近でティリエルに拾ってもらい退避することに成功した。


ソフィア、リリス、ティリエルの力は格段に上がっていた。

ソフィアは、軍隊の半分を守るほどの水の壁を何度も作り出した。以前のソフィアは威力に関してはジンに頼っていたのを魔術を組み合わせることで自分で威力を大幅に上げた。

リリスは、以前歯が立たなかったAランクの魔物を瞬殺して見せた。

ティリエルも、人を乗せての回避行動、体力、機動力に磨きがかかっている。


今の彼女らのギルドカードは


名前 ソフィア 種族 人間 性別 女

 ギルドランク C

 能力ランク 総合B 気力C 魔力A

 チーム 『世界を結ぶ者達』

 称号 水の巫女 精霊術師 水災の魔女 ジンの女


名前 リリス 種族 人間 性別 女

 ギルドランク A

 能力ランク  総合A 気力S 魔力B

 チーム 『世界を結ぶ者達』

 称号 ジンの護衛 熟練者 


名前 ティリエル 種族 龍族 性別 女

 ギルドランク C

 能力ランク 総合A  気力A 魔力A

 チーム 『世界を結ぶ者達』

 称号  ジンの義妹 銀龍 


とすっかり上級者の力を身につけている。彼女らのおかげで東方軍の被害は最小限に抑えられた。


しかし開戦から6時間がたった頃、東方軍と西方軍も、第一の堀を無力化されることになる。もともと東方軍は、効率的な遅延でしかなかった。そこに火砲亀かほうきの邪魔が決定打になった。西方軍は竜騎兵隊ドラグーン・チームに疲れが見えてきたので、自ら第一の堀を放棄した。


火砲亀の攻撃を受けた部隊以外には、目立った被害は出ていないが、これで東西南北のすべての第一の堀は無力化されたことになる。


これからは、堀を越えられる魔物だけとはいえ断続的に戦闘が続くことになる。これからがジンとクルト皇帝が憂慮していた長時間の緊張状態の戦闘に入ることになった。



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