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聖痕使い  作者: 中間
第一章:人間の国
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49話 第1回 世界防衛戦:開戦

ジンは風を使って仲間達に皇都に戻ることを簡単に説明した後、今の自分に出せる最高速度で空を飛んでいた。


「絶対に助ける。そして犯人は拷問のあとに殺す」


会議の場で見せていた冷静な態度とは違い、その顔には明らかな怒りを浮かべている。

自分の身内に手を出されて怒り心頭だったのだ。


戦場の方はあまり気にしていなかった。あそこには66万もの軍がいるのだ、自分ひとりが抜けてもそれほど大局には関係がないとジンは思っていた。


その戦場では、魔物の大侵攻が始ろうとしていた。


黒い半球が一斉に泡立ち始めたのだ。大きな黒い風船のようなものがいくつもできている。

遠い空を飛んでいるジンが持っている懐中時計のような物の数字がゼロになった瞬間に


パンパン、パパパン、パン


すべての風船が弾けた。その瞬間、東西南北の軍からありとあらゆる遠距離攻撃が放たれた。


東方軍では、クルト皇帝とカルディアが指揮をしている。


「全軍攻撃やめ、初戦を担当する部隊以外は防御柵付近まで後退」


最初の攻撃のために前進していた軍を下げる。

これは、他の軍も同じだった。


土煙が晴れてきたころ


魔物の消滅を意味する黒い粒子のなかに大きな人影が見えた。それは大量のストーン・ゴーレムだった。大量のストーンゴーレムは、堀へと近づき自ら身を投げ出し自らの体で堀を埋め始めたのだ。


「皇帝陛下あれは厄介です。中央のゴーレムに集中して倒しましょう。バラバラに攻撃しては堀を無力化されます。」


側に控えている、ゲオルグ将軍がクルト皇帝に提案する。


「わかった。第一魔術部隊から第十魔術部隊は中央のストーン・ゴーレムを集中攻撃。」


前線の魔術師の部隊に伝令が届くと


「了解しました。第一魔術部隊右前方のストーン・ゴーレムを攻撃します。『フレイム・シュート』準備・・・・・放て」


「「「「『フレイム・シュート』」」」」


いくつもの火炎弾がストーン・ゴーレムに直撃して粉砕する。第一魔術部隊は、ゴーレムが黒い粒子になるのを確認して次の目標に移る。クイント軍ほど動ける軍隊は、他の国ではヴァーテリオン帝国に少しあるだけだ。クイント皇国軍は平均能力ランクと錬度が高いことで有名なのだ。軍という集団ではもっとも敵にしたくないタイプの軍隊だ。

適切な指揮により、東方軍は堀の維持に成功している。



西方軍のヴァーテリオン帝国では、


竜騎兵部隊ドラグーン・チームに、ストーン・ゴーレムを攻撃させろ。」


「御意」


ラインツ王は、堀を維持すること優先して虎の子の竜騎兵ドラグーンを投入した。


竜騎兵は、空を進みストーン・ゴーレムを次々と粉砕した。手に持った巨大なランスで貫いたり、相手の攻撃が届かないところから魔術を放ったり、騎乗する竜のブレスを浴びせたりと大陸の最強の部隊の名に恥じない働きをした。

西方軍も竜騎兵部隊のおかげで堀の維持に成功した。



しかし南方軍と北方軍は、有効な手を打てずに二時間後一つ目の堀を無力化されてしまった。


北方軍の三国の王が集まる天幕では


「なんなんだあいつらは!」


キリガネが苛立った声をだす。


「これは、思った以上にきつい戦いになりそうですね。」


ヘンリーの声も硬い。


彼らが言っているのは、魔物がとった最初の行動のことだ。やつらは、まず最初にストーン・ゴーレムで堀を無効化してきたのだ。つまり、こちらの戦術に合わせて魔物を出していることになる。

各国の予想では、所詮は魔物という考えがあったが会戦わずかでその認識を覆されたことになる。


「報告します。跳躍力のある魔物が、第二の堀を飛び越えて接近中です。」


「こうもやすやすと、・・・重装歩兵で迎撃。後方の部隊は、防御柵の後ろまで後退させろ。」


「何故我が国の兵なのだ、ご自慢の武士を出せばいいだろう」


重装歩兵は、カルモンド王国自慢の部隊だそれを使うと聞いてグスター王が喚いている。キリガネはうんざりしながら。


「あなたの国の重装歩兵は足が遅い、しかし守りが堅いこれは当然の采配だ。グスター王はあなたはご自分の軍にお戻るといい。」


「なんだと、危険ではないか」


「大丈夫だ、今の魔物はCランク以下の小物ばかりだ。」


「・・・わかった。」


グスターが戻った後、


「何故あんなのが王をしている。」


「キリガネ殿、それはおそらくエクス王子の存在でしょう。カルモンド王国では、エクス王子を次の王にと決まっている。王位継承を円満にするために、グスター王を放置しているようです。」


「息子に守られる王位か、そこまでいくと哀れだな」


「そうですね。しかし、キリガネ殿今は戦闘中です。戦場に意識を向けましょう。」


「そうだな。」


パパン


ストーン・ゴーレムだ。


「またか、魔術師隊に、一体ずつ確実に倒すように伝えろ。」


第二の堀が無力化されるのも時間の問題だろう。



南方軍では、少々状況が異なった。


「はっ、橋だと」


ジャックが担当している南側の堀に、大蛇の橋ができていて、その橋を使って多数の魔物が堀を越えてきた。


橋は、大蛇が3体が絡み合ってできている。それが3つある。


「三騎士を出せ。大蛇を潰すように伝えろ」


三騎士とは、テンプル騎士国内で最高の騎士三人に与えられる称号で、それぞれ特別な武具を与えられていた。


聖剣カリバーンを与えられた聖騎士パラディン

竜剣ドラグニルを与えられた竜騎士ドラゴン・ナイト

魔剣レヴァンティンを与えられた炎騎士フレア・ナイト


三人の騎士は、それぞれ別の大蛇の橋に馬を走らせた。


聖騎士パラディンに与えられた聖剣カリバーンには破魔の力があり、魔物を一撃で斬り殺す力をもっている。聖剣は、魔物に対して圧倒的に有利な武器なのだ。

聖騎士は、近づく魔物をすべて一振りで片付けて難なく橋にたどり着く。たどり着くと聖剣に大量の魔力を流す、すると聖剣の刃が巨大化した。これが聖剣の二つめの能力だ。聖騎士は聖剣を振り上げ、橋の上にいる逃げ場のない魔物ごと大蛇を一振りで真っ二つに斬った。


これで、一つ目の橋が落ちた。


竜騎士ドラゴン・ナイトに与えられた竜剣ドラグニルは、持ち主の気力のランクを二つ上げる力がある。

竜騎士は人とは思えない動きで敵を葬っていた。たとえば、自分の倍はある熊型の魔物を片手で投げたり、ゴーレムのパンチを素手で受け止めたり、十数メートルの跳躍を見せたりした。

同じく大蛇の橋にたどり着いた竜騎士は、大蛇の頭を蹴りあげるすると大蛇の頭が浮かび上がった。そして落ちてきた頭を切り落とした。


これで二つ目の橋も落ちた。


炎騎士フレア・ナイトに与えられた魔剣レヴァンティンは、炎の魔剣だ。魔力を流すことで炎を生み出す剣だ。炎の精霊を集める力も持っている。

炎騎士は、進行方向に炎を飛ばして魔物を焼き払い道を作る。その炎は、ストーン・ゴーレムを溶かし燃狼ねんろうすらも焼いていた。

炎騎士も大蛇の橋の場所にたどり着いた。炎騎士は、魔剣を大蛇に突き刺し内側から燃やし尽くした。絡まっていた他の大蛇もろとも灰となった。


これで最後の三つ目の橋も落ちた。



「さすがは、テンプル騎士国の三騎士ですな」


リニヨン教国のカリウス教皇が三騎士を賞賛する。


「どうも。三騎士を下がらせろ、戦いはまだまだ続くのだからな。第1騎士団から第8騎士団を前面に出せ。教皇、神官騎士団を出してください。」


「わかった。君のところの騎士団の穴を埋めればいいのかね?」


「話が早くて助かります。」


攻撃が得意なテンプル騎士団が押し返し、防衛が得意な神官騎士団が守ることで南方軍は、戦線を押し返すことに成功した。


しかし、北方軍は、さらに二時間後、会戦から四時間たった頃に第二の堀も無力化されてしまった。



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