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聖痕使い  作者: 中間
第一章:人間の国
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48話 第1回 世界防衛戦:戦前

異世界350日目


大侵攻の日まで10日となった日、ジンは『無得と魔物の大地』に立っていた。

そこには、すでにかなりの魔物が発生していた。ジンたち、先行部隊はきたるべき時のために魔物の駆逐を行っていた。殺すと黒い粒子になって消滅するので後始末は必要ないのは楽だ。来ているのはジンの独立部隊の内の5000人だ。


「本隊が来るまで後三日だったか?」


「はい、三日後になります。」


ジンの問いにミリアが答える。


「今日中に片付きそうだな、どうしよっか?」


「ゆっくり待ちましょう。そして楽しいことをしましょう。」


「まあそうするか」


何事もなく終わればいいんだがな。



異世界353日目


昼前には主力が到着し始めた。


「ジンお疲れ」


アッシュがジンに近づいてくる。


「二日前からのんびりしていたがな」


「それでも警戒はしていたんだろ。あとは、僕たちが引き継ぐよ。」


「ああ、任せる。」


その後は、忙しかった。兵隊が次々と到着してそれを配置につかせたり、人員、装備の確認する。さらに堀を作ったり防御柵を作ったりと大忙しだった。ジン達にはあまり関係がなかったが。


異世界360日目


魔物の大侵攻から二時間ほど前にはすべての軍が配置についた。黒い半球の東西南北を扇型に展開した軍勢が囲み、黒い半球との間には、深い堀が二重に掘られている。その次には防御柵が立てられている。

できるだけの準備はした、力も付けた、あらゆる力を集めた。あとは結果を出すだけだ。


取った戦法は、堀の外から魔術部隊が魔術で殲滅して他はそれを援護する、そして軍を三万ずつにわけ3時間前後で入れ替える、というものだ。3時間の戦闘の後に12時間の休憩できることになるつまり半日もあるのだ。遊撃部隊は、南西と北東に配置して、不利になった戦場に投入される予定だ。


戦場が広すぎ、すべてを見通せる者がいないため総指揮官はおらず東西南北ごとに指揮官を置いている。

東方軍はクイント皇国のクルト皇帝が

西方軍はヴァーテリオン帝国のラインツ王が

南方軍はテンプル騎士国のジャック騎士王が

北方軍はヤマト国のキリガネ王が

戦争に慣れている王が、指揮官になった。


「そういえば連絡は、どうやるんだ?」


全軍を見渡しながらアッシュに尋ねる、すると呆れた表情のアッシュが


「・・・ジンのところにも配給してるんだけど」


「何をだ?」


「これだよ」


といって出してきたのは、数字の書かれた腕輪だった。書かれている数字は3桁でこれには332と書かれている。


「これはね腕輪ごとに番号があって、登録している番号の腕輪と通話ができるんだよ。」


まるでケータイだな。


「便利なものがあるんだな。」


「あらかじめ登録したもの同士しか通信できないけどね」


「高いのか?」


「そりゃあもう、世界に千個しかないんだからね、一個3百万ギルはするよ。だから大事に使ってね」


「わかったよ。」



最後の会議が開かれた。


「いまさら話すことなどあるのか?」


キリガネが疑問を口にする。


「これといってないな。ただ、これだけは伝えておこうと思ってな、・・・前回も話したが侵攻はこれが最後じゃない、だからできるだけ兵を死なせないように戦ってくれ。これは相手を潰して終わりの戦いではないんだからな」


「難しいことを言うなジン殿は」


他の王が苦笑する。戦う以上被害は出るのだ。

その時ジンの腕輪が淡く光りだした。それもそうだとジンも苦笑する。


「なんだ、通信?」


ジンは不思議そうに周りを見る、本来通信できる人間は皆ここに集まっている。ジンは不可解ながらも無視もできず通話に出る。


「誰だ?」


「【英雄ジンだな。】」


会議の途中なのだが、腕輪はそんなことお構いなしに続け、会議をぶち壊す発言をした。



「【お前の屋敷の人間を数人預かっている。人質の命が惜しければお前は、戦闘には参加するな】」


「な、なにを言っている。俺を戦線から外すことに何の意味がある?」


「【お前に活躍されては困る者がいるのだよ】」


「わかっているのか、世界が滅ぶんだぞ」


「【私の知ったことではない、イエスかノーかだけを答えろ】」


「・・・わかった。戦闘には、参加しないこれでいいか?」


「【それで結構。もし参加すれば女は犯した後で殺す。せいぜい静かにしておくんだな】」


それで通話は切れた。


「ジンさんどうするのですか?」


トウカが聞いてくる。

ジンはこれに


「ちょっと待って。クルト、皇都に確認を取ってくれないか?」


「わかった」


しばらくして


「ジン君残念だが君の屋敷が何者かに襲撃されたらしい。タッド師団長が、懸命に捜索している。だから」


「俺は一度皇都に戻る」


「ジン君それはいけない。これは君が始めたことだろう」


「貴様、またしても役割を放棄するつもりか!」


「ジン殿、考え直せ数人の命と世界そのものどちらを取るか、など明白だろう」


王たちが口々にジンを止めるが、


「確かにこの戦いは俺が始めたものだが元々この戦いはこの世界のものだ。そしてこの世界が俺の大事なものと引き換えにしか守れないのなら。そんな世界を俺は守るつもりはない。」


このジンの世界を見捨てる宣言にクイント皇国の人間は戸惑った。ジンが見捨てるといったこの世界には万単位でジンが救った人々がいることを知っているからだ。しかし、他の王はそうもいかない。

今まで肯定的だった大国の王たちがジンに非難の声を投げかける


ヘンリー王が


「ジン殿、ふざけるなよ無責任にもほどがあるだろう」


キリガネが、


「ジン俺はお前が気に入っていたんだぜ。だがなそれはだめだろう」


カルディアでさえ、ジンの言葉を理解できないと言うように


「ジン殿、我々を見捨てるのですか?」


他の王たちも不満を口にする。

ジンは彼らを


「だまれ」


罵倒した。


「あんたたちが、俺をどう思っているかは知らないがな。俺は聖人じゃないんだ。そして俺は本来この世界とは無関係の人間だ。俺がこの世界に来て世界を救うのはただ救いたかったからだ。そして今人質に取られているのは、この世界で俺の世界を作ってくれている人たちだ。俺はこの世界では異物だ、だから俺は、・・・俺の世界を、居場所を守る」


王たちもこれには黙った。自分たちがジンに力を貸しているのではない。自分たちが力を借りていることに気づいたのだ。しかし、それでも自分たちを見捨てると言われて平静ではいられない。


「なら、我々は、どうすれば」


「勘違いするなよ、俺は帰ってくる。」


「「「・・・・・はっ?」」」


「俺は今日の夜には、帰ってくる。それに助っ人も呼んである。あんたたちは、それまで持ちこたえてくれればいい」


「なにをどうやって?」


聖女ウリアが、何を聞けばいいのかもわからず尋ねる。


「こうやってだ、風の聖痕スティグマを発動『嵐帝らんてい』」


ジンを風が包む。精霊術師以外にも見えるほどの精霊が集まり風が緑がかって見える。


「もう一度言う俺は、かならず帰ってくる。それまで持ちこたえてくれ」


ジンは言い終わると空へと消えた。



ジンが去った会議の場では


「我々はジン殿に頼りすぎていたのだろうか?」


「しかし、準備はほとんど我々で」


「それも我々に仕事をくれた言えるし、あちらはあくまで個人だ」


「とりあえず、持ち場に着こう。これは我々の世界を守る戦いなのだからな。」


各国の王たちは、自分たちの持ち場に戻っていった。


トウカ姫、クリス王女、聖女ウリアは、心配そうに空を見ていた。



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