47話 ティリエルの誕生日
異世界288日目
今日はティリエルの誕生日だ。
「ティリエル、入っていいか?」
「どうぞ」
ジンはティリエルの部屋に来ていた。
「お兄様、お待ちしていました。」
部屋には、しっかりめかし込んだティリエルが待っていた。今日はティリエルとデートの約束をしているのだ。
部屋に入るとティリエルが近づいてきて、抱きついてくる
「今日はお兄様を独り占めしていいんですよね。」
「ああ、そうだぞ」
「えへへ~」
早くもティリエルの頬が緩んでいる。
「行こうか、俺たちにだけできるデートに」
背中にあるボード改め『黒飛板』に目を向ける。
屋敷の庭から空に飛び立つ
「ティリエル競争するか?」
「はい、負けませんよ」
ティリエルと競争したり、のんびり漂ったり、空中戦について話したりと時間を過ごす。競争の結果は、速度は引き分け、機動力はジンが勝ち、持久力はティリエルが勝った。
青空をティリエルと満喫してから皇都に戻る。
「楽しかったです。次はどうしますか?」
「行きたいところがあるんだ、付き合ってくれないか?」
「どこにですか?」
「装飾品店」
「これはこれはジンさん。ようこそお越しくださいました。ご注文の品はできていますよ。」
店主がジンを出迎える。
ここは、以前テツの首飾りを買ったところだ。その後も屋敷のメイド達にプレゼントを買ったりとすっかり常連になった。誕生日を聞いてから、プレゼントを特注で作ってもらっていたのだ。
「見せてくれ」
店主が持ってきたのは、銀で作られた腕輪が二つあった。その腕輪には、複雑な文様が描かれており一箇所だけ窪みがある。ジンは、そこに竜宝珠を取り付ける。
「お、お兄様、竜宝珠を、使ってもよいのですか?」
慌てるティリエルに
「こちらの品は、魔具を取り扱う方にも協力してもらって作った物でして。竜宝珠をつけることで完成すものでして。身につけた者の魔力、気力の底上げ。腕輪同士の通話。常時展開の障壁などの機能が付いております。」
「名前は?」
「『白銀の龍輪』と言います。」
「これを私に?」
「ああ、俺とお揃いだ。」
自分の腕につける、そして銀の腕輪を見せながらティリエルの頭をなでる。
「こういうときは、キスとかの方が良いです。」
嬉しそうに頬を緩めながらそんなことを言うティリエル。
「それは家に帰ってからな。」
『白銀の龍輪』をティリエルの腕につけてあげる。右腕には、『絆の腕輪』。左腕には、『白銀の龍輪』が輝いていた。
「ありがとうございます。お兄様、一生大事にします。」
日が落ちてきたので屋敷に戻ってティリエルと二人で夕食を取ることにする。
夕食が終わり夜が近づくにつれティリエルが挙動不審になっていた。
どうやら、夜のことを考えて緊張しているようだ。
「ティリエル」
「ひゃい」
重症だな。変な声で返事をしてしまい恥ずかしそうにしているティリエルに
「怖い?」
「えっ」
「これからやることが」
「怖くは、ないです。ただ、私はやっぱり他の方より子どもっぽいのでお兄様をがっかりさせてしまうのではないかと、不安で。それに私は、龍だから成長が遅いから。」
ティリエルは、龍の寿命の長さを気にしていたようだ。
「大丈夫だよ。俺はティリエルのこと大好きだから」
「お兄様、私も大好きです。愛しています。」
「ありがとう。それにね、皆にはまだしっかりと話していないんだけど、俺は人間でありながら、長命なんだ。」
「それって、もしかして」
「ああ、俺と同じ時間を生きられるのは、今の仲間の中では、テツとティリエルだけなんだ。」
この世界のエルフの寿命は400年ほどだからイリヤでも難しい。力をつければ少しは違うだろうが、今はまだ無理だ。
「どうして長命に?」
「この世界で能力ランクが上がれば寿命が延びるのは知ってる?」
「はい、知っています。龍でも力がある者だけが古龍へとなりますから」
「俺はすでに能力ランクがSだし。さらに精霊界で生活したことで体が変化して精霊にすこし近い存在になっているらしい。この二つが重なって長命になったんだ。今のままでも700年は生きられそうなんだ。だから小さいとかあんまり気にしないでくれ。俺にとってティリエルは救いなんだ。」
「はい、一生お傍にいますよ。『お兄様』」
あの後、ティリエルは「お、お風呂に行ってきます」と残して部屋を出ていった。
ジンはティリエルとの会話で再確認した。このままだと、今の仲間達といつか別れることになる。
だが、この世界を守るためには、力がいる。力を手にすれば寿命が延びる。寿命が延びれば一人になる。
人との別れなんて当たり前のことなのにな、俺は強欲になったようだな
「暇なときに、長寿の方法でも探してみるか」
ジンは、この世界を見て不死は無理でも不老長寿の可能性はあるのではとこのごろ考えていたのだ。
「まあそれも、魔物の大侵攻を終わらせてからかな~」
まあ、適当なときに探してみるさ。
その夜
ティリエルが寝巻き姿で、ジンの寝室を訪れていた。
「お兄様、いますか?」
「いるよ。おいで」
「お、お邪魔します。」
「そんなに硬くならないで」
「やさしくしてくださいね」
ジンはベットに腰掛け、ティリエルを膝の上に乗せる。
「もちろん、ティリエルとは数百年の付き合いになるからね。しっかり時間をかけて開発してあげよう」
「うう~、みなさんの言ったとおりです。」
「なんて言ってたの?」
「夜のお兄様は、ちょっと意地悪だと」
「たしかに、そうかもな」
そういいながら、寝巻きを脱がす。
「お兄様、展開が早いです。その、キスから」
「わかった。」
ちょっと意地悪をした。ディープキスを十分ぐらい休み無しで続けた。終わった頃にはティリエルはトロトロになっていた。
「愛してる」
「ふぁい、お兄様」
その日は、ティリエルにとって色々な意味で忘れられない誕生日になった。