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聖痕使い  作者: 中間
第一章:人間の国
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45話 からあげ


異世界242日目


「お兄ちゃん、何か食べたいものはないですか?」


フェリスが、膝の上から尋ねてきた。


「そうだな、からあげってわかる?」


フェリスは首を左右に振って


「わかりません。どんなのですか?」


「えっと確か鶏肉に下味をつけて小麦粉を薄くまぶして油で揚げたものかな?」


「お兄ちゃん一緒に作りましょう」


「いいよ。でも急にどうしたんだ?」


「その、甘えるなら今かな~と」


お料理が甘えることになるところがフェリスらしいな。


「それじゃあ、お買い物に行こうか」


「はい」


元気のいい返事が返ってきた。



今ジンとフェリスは、以前ハンバーグを作ったときに来た肉屋に来ている。


「いらっしゃい、この前はすみやせん」


「別にいいよ、なあフェリス」


「はい。あの後いっぱいお兄ちゃんに優しくしてもらいました。」


「今日は鳥肉を買いに来たんだが、何か良いのはあるか?」


久しぶりの前の世界の料理の再現だ、良い物で作りたいと思ったのだが


「鳥肉かい、融通してやりたいんだが、本当に今は良いのがなくてなあ。すまんな」


「何かあったのか?」


「いやね、お国がどうも買い占めているらしくてなあ。ただでさえ鳥肉の類は、他の肉に比べて供給が少ないんだよ。獲物が空を飛ぶからな。」


「そうか、ちなみにここら辺で一番いい鳥型の魔物はどこにいるか知っているか?」


「それならノーバル山のフリールバードだな。」


ノーバル山には、一度行った事がある。ティリエルの父が住んでいる山だ。アルベルトにも会いたかったからちょうどいい。


「よし、フェリス、ノーバル山に行こう。」




異世界244日目


「お兄ちゃん、すごい行動力です。」


「いいじゃないか、どうせ暇だったし。」


ジン達は、ノーバル山にやって来ていた。メンバーは、ジンとフェリスとティリエルとテツのだけだ。これは、移動に空を飛ぶためティリエルに乗れる定員がフェリス一人だけだったからだ。


「お兄様、お父様に会っていくのですか?」


「帰りにな、これからの事とか色々話したいからな」


「主、そろそろフリールバードの生息地だから、刀になっとくね」


頭上から声が聞こえてきた肩車をしてやっていたのだ。


「ああ頼む」


そういうと小太刀が前に落ちてきた。それをつかみ腰に挿す。それと同時に、風による探知を拡げる。


「見つけた」


「何処ですか?」


「あっち」


指を指して方向を教える。


「やってみる?」


「やります!」


返事と共にティリエルが銀龍に姿を変え宙を舞う。

以前乗せてもらった頃に比べ姿を変える時間が短くなった。それに空を飛ぶ姿は軽やかで優雅だ。

ティリエルは、ここ数ヶ月の特訓で、自分にしかない飛行能力に磨きをかけた。

速度、体力共にかなりの上達だ。


現にティリエルは、素早くフリールバードを捕捉してすでに戦闘に入っている。

フリールバードは、風を操る怪鳥だ。大きさは今のティリエルとあまり変わらない。


ティリエルは、フリールバードのカマイタチや嘴を回避して背後を取る翼を掴む。そのまま降下してフリールバードを地面に叩き付ける。そこを、フェリスが


「魔の風よ、鋭利な刃となりて、我が敵を切断せよ『ウインド・カッター』」


風の刃で首だけ綺麗に切り落とす。フェリスは精度と威力そして多様性を目指した。

得意分野とはいえ、Bクラスの魔物に危なげなく勝利した。ジンは年少組の成長に、胸が熱くなった。


しかし、感動に浸るのはここまでだった。こっちに、フリールバードの群れが接近していた。

ジンは背中のボードを地面に下ろす。

ボードは、テツに合わせて黒を基本としたカラーリングだ。これには、『浮遊』と『障壁』の魔法がかかっている。魔力を通すことで宙に浮くことができる。さらに風の精霊術を合わせて空を飛ぶのだ。


「ティリエル、フェリス数が多いから後は俺がやる。」


「「はーい」」


この飛び方は、浮遊に精霊術を使用しないので空にいる時も精霊術が使えるのが利点だ。

そこからは、ジンの高空戦の訓練の時間になった。空を舞いながら炎を雷を放ってフリールバードを打ち落とす。戦闘が終わる頃ジンの高空戦はある程度形になっていた。

地に落ちたフリールバードはフェリスとティリエルが『採取』で鳥肉を手に入れていた。


ちなみにこのボード、ただの木の板に魔法を刻むことがほとんど無いため、特注になってしまい、五万ギルもした。


百万 ー 五万=九十五万ギル


「お兄ちゃん大漁ですね。これだけあればいろいろ試せますね。」


「そうだな。数ができたらアッシュに持っていってやるか、ギルドのこと押し付けてしまったからな」



その後、アルベルトに会ってから皇都に戻った。

このとき、アルベルトと一悶着あって少々地形が変わったがそれは余談だ。


異世界247日目


フェリスの唐揚げは絶品でした。


今は城のアッシュに、お裾分けに来ていた。


フェリスとアリシャ(城門で待ち構えていた)を連れてアッシュの部屋に向かう。


「アリシャよく来るのがわかったな」


「婚約指輪の力。居場所がわかる」


そんな隠し機能が


「どうやるんだ?」


頬を染めて


「ひ、秘密」


すげえ気になる。



アッシュの部屋に着いた。


「アッシュ差し入れだ。唐揚げっていう俺の世界の食べ物なんだが」


「ジン久しぶり、ありがたく頂くよ。」


アッシュの部屋には、書類の山ができていた。


「大変そうだな?」


「・・・いや、ジンがギルドの件、丸投げして僕の仕事増やしたんじゃないか」


呆れ顔のアッシュと面白そうに笑うジン。二人の間には確かな絆が見えた。


「そうだけどさあ、俺があいつらと打ち合わせしたらその内、殺しちゃうかもしれないぜ」


「何があったか知らないけど、それは困る」


「だろ、それじゃあ邪魔しちゃ悪いしお暇するは。差し入れここに置いていくな」


「ああ、また来てくれ」


部屋を出るとカルモンド王国の王と王子がこちらに歩いて来た。


「やあ、グスター王にエクス王子お久しぶりです。」


「会議で決まった役割を放棄したようだな。」


「いろいろあったんだよ」


忌々しそうにこちらを見ているグスター王がフェリスを見て


「うん?その娘は?」


「フェリスのことか?」


「フェリス?・・・いやなんでもない」


「そうか、じゃあな」


ようもないのでその場を後にする。



「あの娘、グーロム王国の」


「父上どうしましたか?」


「いいや少し面白いものを見つけたのだ」


グスター王の視線は、元グーロム王国王女のフェリスを見ていた。




「気づかれたな。」


「何が?」


「フェリスの正体に」


「えっ、もしかしてさっきの王様にですか」


「ああ」


フェリスが顔面蒼白で目に涙を浮かべている。


「わたし、どうしたら。お兄ちゃんに迷惑が」


「大丈夫だよ。俺が何とかするから。それに実はそんなに問題でもないしね」


「ぐす、そうなんですか?」


「ああ、だから泣かないで」


「はい、お兄ちゃんを信じます。」


「よし、それじゃあ屋敷の戻ろう。」


早めに解決してやらないとな、と思いながら帰路につく。



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