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聖痕使い  作者: 中間
第一章:人間の国
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39話 世界防衛会議:一回目

「それでは、この世界を守るための会議を『世界防衛会議』を始めたいと思います。」


親しい国同士で会話をしていた代表たちも話すことを止めジンを注視する。

一瞬の静寂の後、ラインツ王が問いかけてくる。


「君が進行役をするのかね?」


「はい、そうです。」


カルモンド王国のグスター王が


「どこの馬の骨とも知れないものに任せて良いのですかな。」


「わたしは異世界から来ました。この場でもっとも中立だと自負しています。」


「異世界?君はふざけているのか?」


グスター王は呆れ半分、怒り半分といった感じだ。


「そんなつもりはありません」


「クルト皇なぜ彼を進行役にしたのだ?」


ジンが相手にしないでいると、今度はクイント皇国の責任を追及してきた。

それに対して面白そうにクルトが


「それはもちろん、この集まりは、彼が作ったものだからですよ」


「どういう意味だ?」


「つまりこの集まりは、ジンくんの主催なんですよ。」


「なんだと、クイント皇、我々を騙したのか!?」


「そんなつもりはない。わたしは呼びかけただけだし、あなた方の旅費は、彼が稼いだお金で払うのですよ。」


「・・・帰らせてもらう」


突然グスター王が席を立ち、出入り口へ向かう


「ち、父上お待ちください」


エクス王子が止めるが、グスター王はそのまま扉に向かう。しかし出入り口には、ジークとカイルが陣取っていた。カイルは抜剣すらしている。

剣の柄に手を置くジークが、


「主の話はまだ始まっておりません。席にお戻りください。」


「き、貴様らなにをしているのか、わかっているのか」


ジークはそれを無視して繰り返す。


「お戻り下さい」


「こ、この」


グスター王が怒りを爆発させようとしたところに、ファーランド国のヘンリー王が


「そう短気を起こさず、ひとまず席に戻って話だけでも聞いたらどうですか?」


「・・・ふん」


グスター王が不満そうに席に戻る。そこでトランド商王が商人の質問をする。


「クルト皇、先程ここに集まる者の旅費の八割をそちらの英雄殿が払うと言ったが、旅費といってもこれだけの数だ、かなりの額なはずだ。どうやって工面したのかな?」


「それはだね。私はグーロム王国の富裕層の九割の財産を没収したんだが、その成果のほとんどは彼の功績なんですよ。その報酬で旅費程度どうとでもなりますよ。」


これは実際に受け取った報酬とは、また別口だ。


「ほう、素晴らしいですな。しかし、私にはできそうにないですな」


たしかに、資産をあれだけ没収できたのは、グーロム王国が害国だったからだろう。


ラインツ王が、


「そろそろ本題を話してはどうだね。」


「そうですね。そうさせてもらいましょう。」


いよいよか、と皆がジンに今まで以上の意識を向ける。ジンが真面目な顔を作って告げる。


「皆さん『無得と魔物の大地』はご存知ですね。そこに、真っ黒い半球状の空間ができていることはご存知ですか?」


「いや知らないな」


ラインツ王が答え、他の代表達も口々に知らないと答える。


「きょうから152日後の正午に、その黒い空間から大量の魔物が現れます。世界を滅ぼすほどの規模の魔物の侵攻です。」


少しの間静寂が流れる。

その中、グスター王が


「何故そんなことがわかる」


「神にこの世界に送られる際に教えられました。」


「今度は神か」


グスター王が、吐き捨てるように言う。


神と言う言葉に黙っていられない国がある。

宗教を司るリニヨン教国だ。カリウス教皇が


「軽々しく神を口にしてもらいたくないですな」


その声には明らかに怒気が含まれている。


「そう怒らないでください。私が言った神は、私の世界の神です。あなた方のこの世界の神とは、なんの関係もありません。」


こう言われては、教皇も反応に困ってしまう。


そこに、ファーランド王国のヘンリー王が


「何故君が送られたのですか?」


「この世界を救うために」


「では何故別の世界の神が送ったのですか?この世界の神ではなく」


「神の事情までは知りません」


「この世界の神は何もしないのですか?」


「ファーランド王、何が言いたい?」


教皇が先程より明確な怒気を纏って質問する。


「いえ、やはり神は使えないな、と思っただけですよ。」


今まで黙っていた、聖女ウリアが辛らつな言葉を吐く。


「黙りなさい。王でありながら魔人などと仲良くするなど、万死にあたいします。この売国奴」


ファーランド王もこれに、怒りをにじませ


「魔人を恐れることしかできないあなた方になにがわかる」


「魔人は敵です。魔人の中には食人を好む種族もいます。人の身でありながらどうして仲良くできるのか理解できません。」


「それは、一部の種族に過ぎないし、長い年月をかけて彼らは自分を制御できるようになった。食人は、もう彼らに必要なものではない何故それを認めない」


聖女ウリアとファーランド王が舌戦を始めようとした瞬間


「―――――」

「―――――」


二人から音が消失していた。


「―――――」

「―――――」


驚いているようだが、やはり声は聞こえない。驚きが少しおさまった頃にジンが声を抑えて注意する。


「ここは、あなた方のための問答の場ではありません。お静かにお願いします。」


コクコク


二人は、なんども頷く。すると二人の空間に音が戻った。ジンは全く動いていない。

呆然とした聖女が


「今のはいったい」


「音を伝えるのは、空気です。私はその空気の動きを止めただけです。」


「その止めるだけが難しいと思うのですが。」


「お気になさらず。それでは、本題ですが・・・・・あなた方には『無得と魔物の大地』に軍を派遣していただきたい。」


「ふ、ふざけるな!、何故わたしが、貴様に従わなければならん」


まあ、軍を動かせといってはいわかりましたとは、いえないだろうな。


「何も私に従え、と言っているわけではありません。王の責務を果たせ、と言っているのです。」


「クイント皇国は兵を出そう」

「ウルティア国も兵を出します」


「しょ、正気か貴様ら」


うろたえるグスター王を見かねたラインツ王が


「ジン殿何か君の言葉を証明できる物はないのかね」


「確固たるものはないですね。」


「何かはあるんだね」


「ええ、まあ」


「それで構わない。教えてくれ」


「それでは、まずギルドカードですね。」


カードを取り出し、ラインツ王にのみ見せる。


「称号を見てください。あ、能力ランクはバラさないでくださいね。」


「・・・救世主だと(それにこの能力ランクは)」


円卓がどよめく。ラインツ王と周りの代表も驚いているようだ。


「はい、神様が私を救世主としてこの世界に送った証拠になるかと」


「たしかに、しかしこれだけでは、漠然としている。」


「そうですね。状況証拠としては、最近の魔物の異常な出現が上げられます。ノワールサイや牛鬼はもともと『無得と魔物の大地』近辺に多く生息していました。それが最近低ランクの狩場に現れ冒険者に被害がでています。」


この件に関わりのある、シャールが援護する。


「私も皇都の近くで20をこえる牛鬼に襲われました。」


冷や汗たらたらのトランド王。


「娘よ、私は聞いていないのだが。」


「あはは〜気にしない気にしない。」


気まずそうに、顔をそらすシャール。護衛が少なかったのは、ケチっていたのだろう。


「やつらが住処を離れたのは、黒い半球が関係していると思われます。状況証拠としては充分でしょう。」


「しかし、それではまだ弱い」


「ええですから、あなた方には、『無得と魔物の大地』に一緒に行ってもらい黒い半球を物的証拠として見てもらいたいのです。お願いできませんか」


「・・・わかった。ヴァーテリオン帝国は同行しよう。すべての国で行くのか?」


「いいえ、主要国の、ヴァーテリオン帝国、リニヨン教国、ファーランド王国、カルモンド王国、テンプル騎士国、ヤマト国、クラフト商国、ウルティア国そしてクイント皇国の9ヶ国で行きます。皆様よろしいでしょうか?」


「クイント皇国は、問題ない」


「ウルティア国も問題ありません」


「世界の危機なのです。我らリニヨン教国は同行します。」


「クラフト商国も旅費を出してくれるなら問題ない」


「・・・っち。・・・エクス見てきなさい。カルモンド王国からはエクス王子を出す」


「ファーランド王国も同行しましょう。」


次々に了承が得られる。思っていたより順調だ。しかし今までこれといって発現のなかった残りの二国が


「テンプル騎士国は断る」

「いやだね、ヤマト国は拒否するぜ」


「・・・何故ですか?」


「そちらは、こちらを騙し出入り口を塞いでいる。あまりに不敬ではないか。」


「ここまで好き勝手されて、はいわかりました。なんて言えるかよ。」


どうやら武闘派の二国は、納得がいかないようだ。今まで黙っていたくせに、この言い様は、王として大丈夫なのか?


「必要なことでした。嫌だと申されても連れて行きます。世界の命運が懸かっています。力ずくでも連れて行きます。」


「いいだろう。力ずくでもというのなら。そうだなジン殿、我と手合わせをして我に勝てば我が国も同行しよう」


「それがいい。うちもそうするぜ。『英雄ジン』の力、見せてもらおうじゃねえか」


「・・・・はあ、わかりました。お相手しましょう」


思わぬ形で二人の王との手合わせが決まってしまった。




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