35話 小人救出
異世界45日目
「依頼通り岩窟竜を街道から退かした。討伐ではないので3万ギルもらおうか。」
今回は、俺とテツの二人だけで屋敷に出向いた。武器の携帯は認められていないが、テツは当たり前のように同伴している。
少々危ないかもしれないから他の仲間は置いてきた。
「知らんな、証拠を見せてみろ。岩窟竜のお主達が退けた証拠を」
「実際に、岩窟竜は移動している。」
「そんなもの証拠にはならんだろう。ククク、素直に討伐しておれば証拠になったであろうにな、ハハハハハ」
ムカつくのでさっさと本題に入る。
「正直報酬の件は、別にどうでもいい。」
「なんだもう諦めたのか、ククク」
笑いが止まらないようだな。その耳ざわりな笑いを止めてやろう。
「一階東側の倉庫のような部屋の小さな三つの金庫の中身」
ピクッ
「・・・何故、それを」
「企業秘密だ」
モルド伯爵の護衛二人が武器を構え、伯爵は側の呼び鈴で外の私兵を呼び寄せる。
扉から多数の私兵が入ってきて、ジンとテツを囲む。十六人か、その兵に向かって聞いてみる。
「お前達に聞く、この屋敷の奴隷については、知っているのか?」
「だったらどうするんだ、お前はここで死ぬんだから関係ねえだろ」
「そっちのチビは、俺たちで犯してや・・・る」
ドサ
テツに向かって気持ち悪い視線を向けていた男の首より上がセリフの途中で後ろに落ちた。無音の『風刃』で頭を切り落したのだ。
「大体わかった。お前は死んでおけ、テツ」
「はい」
テツが小太刀の姿になると同時に
「『炎蛇・四首』」
炎の蛇を四匹だし私兵にけしかける。
「人が刀に」
「なんだ、精霊術なのか」
動揺している兵を次々に喰らう。七人ほど喰ったところで
「『ウォーター・ウォール』」
水の壁で炎蛇を相殺される。さすがに山賊のようにはいかないか、と考えながら炎蛇に気を取られていた後ろの二人の胴を斬る。二人とも鉄でできた鎧を着ていたが、今のテツに鉄の鎧など何の障害にもならない。バターを切るよりも楽だ。
これで十人、あと六人。一先ずそのまま後ろに下がり距離を取る。
「野郎よくもやってくれたな。」
三人が同時に攻撃してきた。狭い空間で三人が同時に攻撃してこちらの動きが制限されるが、それは相手もおなじで動きが読み易い。
「テツ、二刀に」
テツを二刀に分け、回避が出来ないからすべての攻撃を弾く。
「増えただと」
「なんだこいつあたらねえ」
「全部弾きやがった」
防いだ時間で精霊を操り地面を揺らす。
「なっ」
「くっ」
体制が崩れたところで二人を切り殺す。一人になった敵を蹴り倒し喉を踏み潰す。
残り三人の内、すれ違いざまに二人切る。最後の一人も少し打ち合いの後、つばぜり合いの最中に炎蛇で焼いた。
残ったモルド伯爵に
「一緒に来てもらう」
顔面蒼白の伯爵の首を掴んで、監禁されているだろう場所に伯爵を引きずって向かう。
途中出てきた兵は、『風刃』ですべて音もなく殺した。
金庫を見つけるが鍵がかかっている。
「外せ」
「こ、ここにはない」
ベキッ
「ギャーーー」
左腕を折る。
「嘘をつくなわざわざ別の場所に置く理由がない。さっさと鍵を外せ」
「わかった、言うとおりにする。」
入り口付近にあった机から鍵を取り出して鍵を外す。
「これでいいのか?」
「ああ、ご苦労」
刀を振るい両足の腱を切る。
「ギッア・・・・・な、なぜ?」
「殺しはせん、ただ逃げられても困るのでな『流雷』」
そう言って意識を刈り取る。
金庫の中は狭く真っ暗で、身動きも取れない。小人族は、そこに押し込まれていた。それはもう監禁ではなく拷問の域だ。
三人の内一人は、すでに事切れていた。小人族は、初めて見るから年齢がわかりづらいが、見た目は普通の幼い子供だとても痛ましい。
他の子も小さいからか性的な虐待はないが所々怪我をしている。金庫に押し込められていて衰弱もしている。いそいで運ばなければ命にかかわる。
まず、首輪を外し窓から光の精霊術で信号弾を打ち上げる。すると、すぐにティリエルが、空から降りてきた。
「急いで運ぼう」
近くの村の宿に運びベットに寝かせイリヤに治癒術をかけてもらう。小人族を皆に預けて岩窟竜を呼びに行く。
「ストルさん二人は、助けることはできた。だけど一人はすでに・・・すまない」
「・・・そうか、いや君のせいではない。ワシもまたなにもできなかった。」
「他の二人もかなりやばい小人族の村って南の奥だよな?」
「そうだ」
人間と亜人は中央と南部で住み分けている。
数千年前、人間と亜人対魔人の戦争があったそうだ。戦争は人間側が勝ち魔人は北に追いやられた。勝った人間と亜人は、最初はうまくいっていたが、大昔で他種族に対して無知なこともあり、すれ違いや争いが起き長い年月をかけて人間は中央に亜人は南に住むようになっていった。亜人達は、さらに細かく分かれていった。人間の国によっては、亜人が多数いる国もあるが、それは中央より南に近い国々だ。
そして小人族の村は、そのな中でもかなり南の奥にある。おそらく国いくつかをまたぐことになるだろう。
「小人族の二人は、今帰ることに耐えられないだろう、だから一度俺の知っているところで療養させたいんだが」
「それは、ありがたいが、そこまで迷惑をかけるわけには」
「別に迷惑じゃないさ、それにストルさんは、俺に竜宝珠をくれただろ。それにあの提案も受けてくれたし、恩を返したい」
「ありがとう、それでどこで療養させるのだ?」
「元グーロム王国のお城だ、ここから一番近くて安全だ。ストルさんはどうする?」
「生き残った二人の顔を見たら一度村に戻ろう」
「わかった。落ち着いたら、俺の屋敷に移すつもりだから皇都のほうに来てくれ、皇国には話しておく」
「それでかまわない、本当にありがとうジンくん」
「それでだな、その、小人族の遺体はどうする、屋敷には置けなかったから宿の近くにもってきているが、俺のほうで葬ろうか、それとも連れて帰るか?」
「連れて帰らせてもらえるか、あれは親がいてな親元に帰してやりたい」
「わかった。」
異世界47日目
遺体をストルに渡し、小人族を城に運び、モルド伯爵の捕縛を命じる等、面倒なことがすべてが終わると。
俺の気分は沈み込んでしまった。今はベットで不貞寝している。
気付くと周りに女達が集まっていた。
ティリエルが
「どうしたのですか、お兄様?」
「ひとり助けられなかった。」
テツが
「それでも主は、二人を助けました。主だから出来たことです。」
「ふたりともボロボロだ。」
イリヤが
「ならば私が治します。」
「後遺症が残るかもしれない」
ソフィアが
「それでも命は助かりました。」
「心には傷が残る」
ミリアが
「ご主人様が癒せばいいのです。私たちも手伝います。」
「死んだ子には親がいた。」
レティーシアが
「今度こそ、助けないといけないな」
「でも他にも、まだ奴隷はたくさんいる。他国にもたくさんいる」
フェリスが
「お兄ちゃんなら、きっと奴隷をなくせるよ。お兄ちゃんにしかできないと思うんだ。」
「・・・そうだな、俺がやらないとな。そのためにもっと強く」
リリスが
「私たちも、強くなる、ジンを支えて、一緒に守るよ」
「ありがとう。これからは元王国領の大掃除だ。手伝ってくれ」
皆が
「「「はい」」」