25話 解放宣言
この場の戦いは終わったがまだまだやることがある。
俺は簡単な後始末を終わらせると二人に
「アッシュ、ゲオルグ将軍作戦の第二段階に移りたいと思う。」
「わかった。ゲオルグ将軍後はお任せします。」
「わかりました。」
「さあ行くぞ、王都へ」
異世界34日目
休まず馬を走らせて(俺は自分の足で走ったが)何とか次の日には、王都にたどり着いたその数は、騎兵八千その騎兵が王都の四つの門を2千ずつ付き東西南北の門を封鎖している。この八千は、皇国軍五千頭とラシード将軍率いる千頭、残りの二千頭は王国軍から奪った馬だ。八千もの騎兵はそうそう見れるものではない。
「ラシード貴様、娘がどうなってもいいのか!」
今城壁の上で肥満体型の男が、首輪のついた小さな女の子を引き連れてラシード将軍を脅している。
驚きはない、以前ラシード将軍と戦い今回の策を持ちかけた時に、何故現政権に逆らわないのか聞いたら、娘を人質に取られていることを聞いていた。
「ジン殿頼む娘を助けてくれ」
「もちろんだ。」
今のラシードには、俺と戦った時の雄壮さはなく娘を出され精神に余裕がなくなっている。早く娘を助けることにしよう。
「大丈夫だラシード。お前を連れて来たのは、お前がいればあいつらがお前の娘を連れて来ると思ったからなんだ」
「どういう意味だ?」
「つまり外に連れて来てくれれば絶対に助けられるってこと・・・雷の聖痕を発動『雷神』」
次の瞬間には、雷速で近づいた俺は肥満体型の男からラシードの娘を奪い取っていた。
「な、に」
呆然とする男を無視して城壁の上から飛び降りる。雷速で逃げないのは、女の子が耐えられないからだ。
「ひゃ~~~~」
女の子の悲鳴を上げている。良い悲鳴だ元気そうだな。
気付いた兵が矢を射かけて来るが、すべて雷で焼く。
地面に降りるとすぐにラシード将軍の元に行く。
「おお、フローラ良かった本当に良かった」
「お父さん、うっ」
「どうした!フローラ!」
突然フローラが苦しみだした。首輪の逃亡防止のための機能だろう。すぐに、首輪を外してやる。
「あっ」
「なっ」
きょとんとしたフローラがこちらを見ている。
頭に手を置いて
「もう大丈夫だよ。君は自由だ。」
フローラの目から涙が零れた。そうなるともう止まらず泣き出してしまう。
ラシード将軍が、娘を抱き締める。
その場を離れ
「アッシュ降伏勧告は、すんだか」
俺の声はかなり冷たくなっていた。
「その返事が、あの子だったんだよね」
「そうか。じゃあ適当に殺して来るから」
「気を付けてください」
「誰にいってんだよ。」
俺は、そのままにしていた『雷神』の力で城壁の上に戻る。そこからは、一方的な殺戮が始まった。
人間が雷速に、反応できるはずもない。めぼしい者を雷で殺していく。
奴隷と女子供以外をあらかた片付けると城門を開けて外で待っていたアッシュ達を中に入れる。
その後王都からも人を集め城の庭園に来てもらう。
庭園には、皇国兵、王国兵、国民、奴隷達にラシード達が集まっていた。
そこに、俺は一人の男を放り出す。
「ひぃ、わ、わたしを誰だと、お、思っている」
男をこの国の王を無視して。
「皆聴いてくれ。この男は、この国の王だ。此度の戦争はすべてこの男がやったことだ。そして私は、この国と奴隷制度を否定する。この男は、その象徴だ、ゆえに俺が判決を下す。そして俺は奴隷のいない世界をつくることをここに宣言する。」
周りは状況をあまり理解できていないようだ、構わず
「『炎蛇・四首』・・・消えろ、元凶」
俺は男を四肢から炎蛇に食わせる。喰われた部分は、焼かれ血はでないそのせいで失血死はせず長い苦しみを味わって死んだ。死刑のあと男の存在したはずの場所には王冠だけが残っていた。
近くに、アッシュがやってきて
「私は、アッシュ・クイント、クイント皇国の皇太子です。ここにクイント皇国皇帝クルト・クイント名の元にクイント皇国の勝利とグーロム王国内の奴隷の解放を宣言します。」
一時の静寂後に、ここに集まった全ての人間が歓声を上げた。
王都は、そのまま宴に入った。
しかし俺には、仕事が残っていた。奴隷を解放する仕事だ。首輪を外しても次から次へと奴隷が来るので休む暇がない。
この戦争で、聖痕を四つも使ったのでかなり疲れていた。それでも休む訳にはいかないのでふらふらになりながら解放していた。一度寝ぼけて頭からこけてしまった。奴隷の解放は、見かねたテツが止めるまで続いた。
「ありがとうな、テツ。実は結構限界だった。今日は、一緒に寝よう」
「はい。お供します」
俺は、城にあった一室でテツを抱っこして眠りについた。奴隷兵五万と戦闘奴隷八千のほうは、城からマスターキーが見つかりどうしても見つからなかった少数だけですんだ。あぶなかった六万近い人間を解放していたらぶっ倒れていた。
異世界35日目
マスターキーが見つからなかった五百人の解放が終わった時すでに昼を過ぎていた。全員が感謝を口にするのでかなり時間がかかってしまった。中には忠誠を誓う者までいた。
今俺の側には一緒に寝たテツしかいないので仲間達を探すことにする。その前にアッシュに挨拶するか。
「よっアッシュ大変そうだな」
アッシュの部屋には、紙の壁が出来ていた。
「やあジン、失敗したよ。秘書官を連れてくるんだった。」
「レティーシアは、手伝わないのか?」
「役に立たない」
バッサリ切った
「ジン手伝ってくれないか?」
「いやだ、それに俺じゃあ大したこと出来んだろ。それより俺の女達を知らないか?」
「ああそっちの問題があった。実は一人判断に困る人がいてね、その人の扱いに困っていてレティーシア達に頼んだんだよ」
「判断に困る人?」
「この国の王って子供はいなかった筈なんだけど。その人、「私は、この国の王女です」って言うんだよ。変だろ」
確かに敗戦国の王女を名乗る意味がわからない。普通敗戦国の王族なんて殺されるか良くて妾にしたりと政治の道具にされるのがおちだ。
「確かに変だな。俺も女達に会うついでに会ってみるよ。」
居場所を聞いてその場に向かう。