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聖痕使い  作者: 中間
第一章:人間の国
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23話 戦場へ

異世界32日目


宣戦布告から一週間後俺達は戦場にいた。


「時間がありません。急いで陣地を組んでください」


陣地設営の指示を出しているのは、アッシュ皇子だ。

総指揮は、ゲオルグ将軍が執っている。


「アッシュ、俺は手筈どうり時間稼ぎと、仕込みをやってくる。」


アッシュとは、すぐに気安い中になれた。アッシュにとって身分を気にしなくていい相手は初めてで、付き合い易いらしい。


「お願いします。なんせこの戦いは、あなたにかかっているのですから」


そうなのだ。ここにきているのは兵は三万のみ残り五万は、カルモンド王国との国境の近くに行かせてカルモンド王国軍を牽制している。俺達は三分の一以下の戦力でそれも野戦を行わなければいけないのだ。国境を越えられると国民を奴隷にされるから国境付近まで出るしかないのだ。


「テツいいかい?」

「はい、大丈夫です主」


「わかった。アッシュ、行ってくる」


「行ってらっしゃい」


俺は、敵軍が来るであろう方向に向って走り出す。



時間稼ぎ自体は簡単だった。


まずは地の精霊で落とし穴を作る。

次に水の精霊で沼もどきを作る。


これを行軍進路にいくつか作っただけだ。

それだけで行軍速度は落ちた。

あるかもわからないものを気にしながらの行軍は、格段に落ちるし沼も人数が多くて迂回するのも一苦労なのだ。


「ええい、なにをとろとろやっている。」


グーロム軍のコートル将軍は苛立っていた。これの戦争は、コートル将軍にとって勝ち戦なのだ。将軍としては、さっさと勝って報酬と奴隷を手に入れたいのだ。

実際この戦いを勝ち戦と見て予定より貴族共が多く集まっている。まあ集まったいっても奴隷商からのなりあがりの貴族ばかりで、昔からの貴族は不参加だったが。


「兵が落とし穴を気にしているようですな」


これはラシード将軍だ、レティーシア皇女を捕まえられなかったため、コートル将軍の補佐をするはめになった。


「そんなもの、指輪の力でどうとのでもしろ」


奴隷を兵隊にするときは、一度奴隷を王の下に集めそのあと命令権を与えた指輪を将軍に与える、という仕組みをとっている。そこからさらに奴隷を指揮するようために命令権の一部を指輪に移譲して士官に渡していく。実際問題、五万の奴隷を一人で指揮できるはずがないのだ。そのために、指輪を与えて指揮をさせるのだ。


「それは不可能です。穴を無視しろと命令すれば、穴に気づいても落ちていくことになります。それに後続も避けずに進むのでそのまま落ちてしまいます。」


「ちっ、所詮は奴隷か」


奴隷にしたのも奴隷を取り入れたのもグーロム王国ゆえだろうに、とラシードは思ったが、口には出さなかった。


「このままいくと着くのは、夕刻ですな。決戦は、明日にした方がよさそうですね。」


「そんなこと知るか、こちらは三倍以上なのだ。ついたら夜だろうと攻撃を開始する」


こいつは疲労のことは考えないのか、とラシードが呆れていると


ドンッ・・・ドンッ・・・


(来たか)


二度爆発音が聞こえ外が騒ぎになっている。これなら今日の決戦はさすがにないな、とラシード将軍は落ち着いていたが


「なんだ、何の音だ」


コートル将軍にとっては、それどころではないらしい。



「『炎爆』」


これの技は、殺傷能力はかなり低いが爆音と衝撃が強く、敵を混乱させることが目的のときは、大いに役立つ。一応直撃はさせないように全体に満遍なく『炎爆』を落とした。程よく混乱したら地中から潜入する。案外地中が一番発見されないのだ。


潜入したのは、戦闘奴隷一万の軍団でそこで孤立しているやつを探す。

いた、少年だ。風の精霊を使って音を消して後ろから近づき少年を物陰に引きずりこむと同時に首輪の契約を破棄する。


「えっ」


少年は驚いて首の手を伸ばす。引きずり込まれたことよりも首輪が外れたことに驚いているようだ。

次第に落ち着いてきたのだろう。感謝を、言うためか大声を出されそうになったので口を押さえ黙らせる。


「静かに」


コクコク


「時間がないんだ。頼みたいことがある」


言いながら手を離す。


「何でも言ってください」


奴隷から解放されただけでここまで信頼されるのか


「戦闘奴隷のリーダー格ってわかるか?」


「何人かはわかります。」


「居場所に、見つからないように案内してほしい。」


「わかりました。お名前を聞いてもよいでしょうか?」


「ジンだ、君は?」


「僕は、レイトといいます。」


陣地内を移動して


「あの人です。」


「ここに呼べる?」


「はい、呼んできますか?」


「頼む」


レイトが男に近づいていって何事か話てすぐにこちらに来た。


「レイトいいものってなんなんだ?」


それで釣れるのかよ、まあ見た目からしていかにもなマッチョではあるが。

レイトの時と同じようにして気づかれないように首輪をはずす


「えっ」


レイトと同じ反応だな。


俺は、これを何度も繰り返し敵陣地で味方を増やしていった。

数が増えたら作戦を説明し、さらに数が増えていくと誤魔化す係りや説明する係り、奴隷を連れてくる係り、捕まえる係りと効率を上げていった。

その後リーダー格の人達に後を任せて皇国軍に戻った。



「お帰り」

「お帰りなさいませ」


レティーシアとソフィアが迎えてくれる。

ソフィアとテツとレティーシア以外の女には、後方に下がってもらっている。イリヤを医療関係のところに行かせてリリスとティリエルは、その護衛についている。


「しかし、以外だな。君の女達あっさり後方に下がったんだな。冒険者風の女とか来たがると思ったんだけど」


「それはですね。それがジン様のためになるからですよ。ジン様は、私達が戦場にいるとどうしても気にしますから。」


「ありがとな、ソフィア」


ソフィアの頭を撫でていると


「主、わたしも」


テツが人に戻り、おねだりしてきたので

片腕で抱き上げてテツの小さな体の感触を楽しむ。


「ジン殿ここは戦場たぞ」


レティーシアが怒ったので


「わるいわるい」


俺は謝罪して、テツを降ろす


「羨ましいんですか?」

「羨ましいんですね。」


「ち、ちがうもん」


自分の叫んだ言葉を思い返したのか、真っ赤になって無言で走って逃げていった。


「今の可愛かったな」


「やりますね。皇女様」

「主に気があるのって本当みたいです」

「やっぱりそうですよね、皇帝も二人を認めるようなことを言っていましたし」

「仲間になるかな?」


俺は、二人がレティーシアについて話しているのを聞きながら陣地を見渡す、3倍の敵と戦うのにみんな諦めていなかった。希望を持っていたのだ。この状況で希望を持たせることのできるこの国は、やはり良い国なんだろうな。だからこそ絶対に勝つ。



「やれることは、やった。後は戦うだけだ。さあ完勝するぞ」


「「はい」」



最後まで読んで頂きありがとうございます。


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