19話 皇女
「あなた方を助けに来たのですよ。皇女様」
五人全員に動揺がはしる。それを見て確信した。
「よかった。あなた達が皇女様ご一行であることは間違いなさそうだな。」
「お前は何者だ?」
「俺は、冒険者のジン。グーロム王国のギルドマスターに頼まれて助けに来た。」
俺は皇女様といいながら。口調を変えなかった。ティリエルは、戸惑っていたが、俺は改めなかった。案の定、
「き、貴様こちらのお方を皇女様と知っているなら、その口調を改めろ!。」
護衛の男が怒りだす。
これからのことを考えると俺は皇国とは対等でなければいけない。従うつもりはなかった。
「断る、俺はあんたの国の民ではない。公の場ならともかく、この場にその必要性を感じない」
「なんだと!」
「落ち着いてくださいレオン卿。ジン殿あなたギルドマスターの部下なのですか?」
訝しげに見てくるメイドさん。にしても皇女は喋らないなお飾りなのか?
「いいや、違うあくまで対等な関係だ。依頼主ではあるが」
ギルドマスターは基本一国に一人しかいない。そして冒険者を束ねる存在でそれなりに力があるだが、俺はそのギルドマスターと自分を対等だと説明した。
「じゃあ、あなたは」
「ちょっと待って、時間がないんだ、まだ続くかな?」
その無礼な物言いに護衛が声もなく怒りを顕にするが
「では、最後に・・・あなたは味方ですか?」
「それはこれからする話を聞いてから、あんた達が判断してくれ。」
「貴様は、私の敵だ」
話の腰を折るなよ。
「ちょっと黙れ単細胞、話が進まん」
「単細胞?どういう意味だ?」
あ〜細胞がわからんか、そりゃそうだな。男は無視して
「時間がない、そろそろ俺の話を聞いてもらう。まずあんた達には、皇国に戻ってもらういたい。」
「それは無理です。皇女は大使として来ています。その責任を放棄することは出来ません」
「果たせない責任を守る必要はないだろ」
メイドさんが声を荒げる
「果たせないとはどういう意味ですか!?」
皇女をバカにされたと思ったのかな?
「皇女に問題があるわけじゃない、グーロム王国があんた達を大使として扱わないといっている。」
「な、何故ですか?私達はグーロム王国に招待されて」
初めて皇女が声を出した。戸惑っているようだな
「招待はおそらく罠だろう。大方、奴隷制度の緩和か皇国出身の奴隷を解放するとかなんとか言って呼びつけたんだろ」
「(そこまでわかっているのか!)」
交渉の内容を知っていた皇女付きのメイドは驚愕していた。
事実なのだ交渉の内容は皇国出身の奴隷の解放についてだった。何を要求されるかはわからないが無視できない内容だったのだ。実際グーロム王国は皇国出身の奴隷を集めていると聞いている。
「グーロム王国は戦争の準備をしている。そして、その前に皇女を捕らえるつもりだ。」
「えっ、そんな」
皇女の顔が青ざめる。他の者も動揺している。
「姫様、落ち着いてください。ジン殿それを証明できますか?」
「あんた達の状況そのものが証明だろう。この襲撃初めてじゃないんだろ、おそらくなんどか襲撃を受けたはずだ」
「なぜそんなことまで」
「生き残りと死体の数を数えたが皇女を守るにはちと少ない」
「それが何故襲撃を受けたことが証明になるのですか?」
「普通は勝てない相手を襲撃したりしない、なのにあんた達は何度も襲撃を受け護衛が少なくなってしまった。しかし、壊滅したわけではないから、戻ることもできない」
「護衛が少なく?」
「戻ることができない?」
女騎士とメイドが呟く
「そこが大事なんだ護衛がある程度いれば勝てなくても皇女を逃がすことができる。今のあんた達は敵から皇女を逃がせるかな?それに壊滅させては皇女に逃げられる。」
「しかし!それは証明にはなりません」
メイドは、理解できても納得できないらしい。さっきの戦闘を考えれば皇国に戻ることはおかしくないはずなのだが
「私は彼の言葉を信じる。先程の戦闘、彼がいなければ我々は死んでいた。信じるには十分だろう。ミリア、今は耐えてくれ。」
女騎士が援護してくれた。
「わかりました。皇国に戻りましょう。」
「なら急ごうまだ追手は四百人ぐらいいるから」
「「「えっ」」」
「だから急いでいると言っているだろ。いっそ、そいつらを証拠にするか」
「で、では早く戻らないと」
「駄目だ、相手は四百もいるんだぞ当然前の街道は封鎖されてる」
地図を取り出して一つの街道をしめす。そこは前の街道の反対側の街道だった。
「だからこっちの街道に出る」
「何故だ?その街道はもっとも皇都まで距離があるぞ。それに道はわかるのか?」
「道はわかる。理由は追手が分散してかなり数を減らせる。それに元々この道しかない」
道は、聖痕を使ったときにあらかた調べていた。
三つの内一つには敵がいる、もう一つには今の場所からは行けない。
「・・・わかった。皇女様」
女騎士が皇女に採決を促す。
「わかりました。あなたの言葉を信じましょう。直ちに皇国に戻ります。」
「了解しました。それでジン殿、君を雇いたいのだが」
「ああ、俺が裏切らないように。なにか繋がりが欲しいのか」
「すまない、何かないかな?」
「謝ることじゃないさ。そうだな皇都についたら戦争について皇王と話したいその渡りをつけてもらいたい」
「わかった。掛け合ってみよう」
「それで君達、名前はなんて言うんだ?」
「そうだったな。私はレイシアだ。さっきはありがとう。」
女騎士が名乗りほかも名乗りはじめる
「私はミリアと申します。こちらは、我らの主のレティーシア様です。」
「よろしくお願いいたします」
こちらは、応答していたメイドと皇女
「ミーシャです。」
「レオンだ」
終始喋らなかったのがミーシャで護衛がレオンらしい。
「これからのことについて話したい、戦えるのはどれくらいいるんだ?」
「・・・八人」
「八人か、戦うのは無理だな。どうするか?馬は?」
「人数分はある」
「移動しながら話そう、すまないがティリエルを馬車に乗せてくれないかここに来るのに無理をさせた」
「かまいませんよ」
「よしでは行こう」
俺が馬車を降りると
「ジン殿馬を」
「いやいい乗れないからな、走る遅れるなよ」
「はい?」
外の騎士が今に乗るのを確認してから走る
気力と精霊の力で驚く早さで駆ける
「は、早い。全員遅れるな」
レイシアは、慌て馬を走らせる。近くにきたレイシアに
「街道に出るまで走る」
「本当に何者なんですか?」
その後、道なき道を進み、時には道を強引に作り進んだ。
街道に出た時に
「新しい道ができてしまった。」
皆呆然としていた。
「すまん疲れた。馬車に乗せてくれ」
周りの人間は安堵していた。
「よかった。ちゃんと疲れるんだな」
と別の騎士が呟いた。失礼な
馬車に入った俺は、最初のメンバーを集めて話をはじめる
「これでゆっくり話が出来るな」
「正体について教えてくれないか」
「それは時間がかかるから追手を振り切ったらな」
「ここまで来るのか」
「来るだろな四百人の内二百ぐらいは騎兵だった。分散しても、その内五十人前後が来るだろう。」
「どうする、相手は騎兵なのだろ馬車のいる我々はすぐ追いつかれる」
「だからこの先の川まで行く。そして橋を壊す」
橋の手前で追手に見つかった。
「手筈どうりに」
八人の騎士が引き付けながら橋を渡る。
追手が橋を渡りはじめ、土の精霊術で脆くしたところまできた時
「『炎蛇・六首』」
炎の蛇がその場所にいた騎兵ごと橋を破壊した。石造りの立派な橋が木っ端微塵だ。
何故こうなったかというと橋の破壊方法を言った時にミーシャが
「橋と一緒に敵さんを破壊すれば。後のことを気にしなくて良くて一石二鳥ですね」
と、とても怖いことを言ってのけた。
ミーシャは見た目は小動物みたいで性格も引っ込み思案なのだが、たまに怖いことをいう、それも天然なので腹黒いのとはちがいよく分からない子だ。
俺達は、夜になり移動が困難になったころ開けたところで野営にすることにした。
準備が終わったころレイシアが
「そろそろ君の正体を教えてくれないかな?」
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